第8話ハードルが高い



 探索16日目。 探索開始から2時間。




『見つけた』



「・・・何を?」



『街のような人工物』



 俺は喜びと安心で、思わずその場に座り込んだ。


 街までは、現在位置から直線で18Kmらしい。ドアからの距離は、直線で21Kmらしい。



 本当に見つかって良かった。ドアから21kmか。惑星のサイズから考えたら思いのほか近くで良かった。



 そう言えば、「姫、この惑星に季節があるか解った?」



『一応有りますが、地球のように劇的には変わりません。計算上、夏と冬の温度差は5℃くらいです』



 なんとなく質問したが何時の間に調べたんだ? それ以前に、どうやって調べたんだ? 方法を説明されても、俺には理解出来ないだろうから聞かないけど。



「公転軸と自転軸が殆どズレて無いって事か? それって赤道付近は灼熱じゃないのか?」



『いえ。たぶん、この辺りが赤道です。両極とも広範囲に亘って生物は住めないと推測されます』



「え? 生物が住める場所、狭すぎないか? よくこんな惑星で知的生命体まで進化出来たな」



『恒星の黒点周期は観測出来ていないので、今がたまたま氷河期である可能性もあります」



 なるほど。長期間、観測をしないと解らない事も多いよなぁ。っていうか、森の中を歩くだけで良く解ったな。


 この惑星の1日が、ほぼ24時間で日本時間の朝6時が日の出だと、探索2日目に教えて貰った。惑星の直径が地球よりも若干小さい事も教えて貰った。重力が地球よりも少し小さいが、気圧はほぼ同じ事が謎だと言ってたな。



 解らない事は、姫に聞けば教えて貰えるので俺はラクで良いんだけど。逆に、俺の価値がドンドン下がって行く気がする。




「今日、これからの予定は?」



『今から人工建築物へ向かいます。8km程の距離からドローンで観察します。』



「そんなに離れてて良いのか?」



『最低限の事は、この距離で解ります。近付過ぎると、明るい内に帰れなくなります。詳しい説明は移動中にするので出発しましょう』



 確かに、野営の準備をしてない。夜の森を1度も経験してない。本当に姫は頼りになる。だが、口が裂けてもそんな事は言えない。言いたく無い!




 3時間歩いて目的地に到着。観察するのに、草むらに隠れるのかな?と思ったら、木に登れと言われた。電波の関係で高い所が良いのは解かるが、40kgの荷物を背負っての木登り。


 マジで鬼畜の所業。



 それでも、観察している2時間は休める。不安定な木の上なので眠る事は出来ないが、今日は少しだけラクが出来そうだ。



 暇だ。木に登っても8km離れていると肉眼では何も見えない。仕方が無い。姫から説明された事を復習しておこう。


 まず、向かっている先にある物が人工物か確認する。偶然による自然物の可能性もある。


 人工物の場合、現在も使われているか確認する。既に放棄されていたり、種族全体が絶滅している可能性もある。


 生命体を発見したら、文化水準を確認する。


 ここまでが、今日の目的らしい。



 生命体が人型とは限らない、とも言われた。昆虫型や微生物型の可能性もあるらしい。金属型や気体型の可能性も否定できないらしい。


 俺としては、友好的なヒューマノイドであって欲しい。出来れば、エルフを希望します。




 本日の探索を終えて、自宅に帰ってきた。今はドローンで撮影した映像をテレビで見ている。かなり望遠での撮影の為、大きい画面でないと見ずらい。



 人工建造物は街を囲っている壁だった。壁の内側には、沢山の家が見える。



 壁の出入り口が見える。門番か?誰か居る。



「ん? これ人間か?」



『外見は人間とあまり変わらないと思うわ』



「俺が行っても大丈夫そうだな」



『それは早計過ぎます。もう少し考えて行動して欲しいわね』



 何が問題なのか、1時間程説教された。


 まとめると5つだ。



 ヒト-ヒト感染するウイルスへの対策が出来ていない。



 種族としての攻撃性を確認出来ていない。



 身分証も通貨も持たないで、門番が居る出入り口を通過する方法が解らない。



 法律も政治体系も解らないので、いきなり犯罪者になる可能性がある。



 そして、もう一つ。やたらとデカい馬が多いと思たら、馬がデカいのではなく人間が小さかった。人としての器の話ではなく、物理的に小さかった。殆どの人が身長120cmから140cmらしい。170cmの俺が行ったら絶対に目立つ。場合によっては異種族と判断され戦闘になる可能性もあるらしい。



 異世界って、思っていたよりもハードルが高いんだな。

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