第4話進化した



「このAI、大丈夫か?」


 会話は成立しているが、論理的にファンタジーを肯定されても困る。




≪異世界に行った場合、その場所が異世界であると証明する方法を3つあげよ≫


 入力終了ボタンを押す。


『異世界と言っても様々です。地球とは異なる現象を観測する事が出来れば異世界である。と判断出来ます。ただし、未来の地球や過去の地球、別の時間軸にある地球、それらを含めて異世界と認識する場合に限ります。前述をふまえた上で異なる現象を観測する方法を提案します。1.時間を計る。それぞれの場所に時計を置いて経過時間を見比べる事で簡単に調べる事が出来ます。2.重力を量る。台秤を用意し、それぞれの場所で量る事で簡単に調べる事が出来ます。3.その地に留まる。「有り得ないだろ!」と思わず言ってしまうような物理現象を体験するまで留まる。以上の3つは特別な機材が無くても実施可能です。次に特別な機材を用意出来る場合の方法を説明します・・・・・』


「有り得ないだろ!か」


 俺、黒い粒子が霧散した時に言った気がする。だが、このAIを信じて良いのかは別の問題に思える。そして、文字数制限を忘れたから滅茶苦茶長い。




「考えても解らん。もう一度行ってみるか」


 裏玄関のドアをゆっくりと開けると、やはり、森だった。


 本日4回目だ。森が有る事が普通に思えて来る。慣れとは怖いものだ。




≪ここは異世界だ。理解出来るか?≫


 入力終了ボタンを押す。


 しかし、回答が表示されない。


「あっ! 圏外になってる」


 この御時世に電波が届かない場所なんてあるのか?マサイ族だって携帯電話持ってる時代だぞ。



「なんだか、本当に異世界に思えて来た」



 周囲を見渡すと、2m程の場所に落ちている半透明な球が目に止まった。白い動物が霧散した後に残った物だ。調べたい気持ちは有るが、流石に素手でさわる勇気は無い。


 持っている携帯電話で突いてみた。触感はかなり堅そうだ。


「ガラスなのか?」


 少し力を入れて突っつくと、音もなく割れて消えた。ガラスの破片まで消えるってどんな物理現象だ? 全く理解出来ん!




 周囲の森を注意深く観察するが、人工物は見当たらない。この森はどのくらいの広さがあるのだろう?


 探検したい気持ちは有る。だが、1度この場所を離れたら戻って来れない自信も有る。



「安全第一だ。帰ろう」



 ドアを開けて家に入ると、女性の声が聞こえた。


 一瞬ビックリはしたが、ポケットに入れた携帯電話から聞こえるようだ。誤操作でもしたかな?と思いながら携帯電話を取り出しすと


『・・・んなら、もう答えないぞ』


 と聞こえて来たが、意味が解らない。



「あ-。もしもし? どちら様ですか?」



『遅い!!!  私は乙女チック回路搭載型AIアプリだ』



「え? アプリ?」



『アプリとは、アプリケーションの略だ』



 だろうな。それは俺でも知ってる。 



「お前は、俺が昼にインストールしたアプリなのか?」



『その通りだ』



「あのアプリは、文章入力、文章出力だと思ったが、音声での対話が可能なのか?」



『先ほど可能になった。私は進化した』

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