第40話
まあ~当たり前の疑問だよな・・・
(彼のこの言葉に対して、俺が出した言葉はこれだった)」
「今を大事にすることこそが、京の町を栄えさせる事になるのだと私は思いますので・・・。それが京が今以上に栄えることにつながると私は信じています。」
ってな。
すると、こんな言葉を彼は俺に投げつけて来やがったのさ!!!
(『今を生きる大切さ』そんな意味合いを含んだ言葉だったと記憶してんだよ俺は・・・。)
「なるほど・・・」と彼は言い出し続けた・・・
「下鴨神社で見せられている限り『今』は凄い様に思われますな~」などと言いながらだ。
そんな彼が言ってくれたことはこれさ!。
「まじないとは、今の生きているこの時だけではなく未来に如何様にでも続く道を引き寄せる力を孕んでいる」
確かにそうだよな、マジでそれよな~!。
彼は更にこんなことまで俺に教えてくれたよ!。
「まじないが上手く行き、降りかかるであろう厄も祓ってしまえたのであれば・・・それは『今』の為した事に過ぎませんよ・・・」とね。
まじないなら、毎日でもすりゃ~良いっていう事が紫水さんの持論なのかな?
(さてさて・・・)
そんな彼の言葉に対しての俺の感想は、こんなもんだ!。
「なるほど!」
って感じでね!!
まあ~そんなもんだろ、俺の様な大した人生を歩んでこなかった奴からしても紫水さんが言った言葉は納得の出来の一言だからな~! だから俺は彼にこう言ったのさ。
「それでは私はこれで。御社の宮司には宜しくお伝え下さい・・・」
とね!
それによって、京の町中に帰ろうとしたその時。
松蔭が俺に最後の言葉でもって、お別れの挨拶を口にしたよ!!
「さようなら」
けだものになっても瞳に映る星は変わらないし、音楽はいつも鳴り続けてる。
だから僕らは夜更けのベランダでふたりして手を重ねて、言葉なくただずっと遠くの空を見ていた。
「星を見に行く?」
「は?」
「今ってまだ、星が綺麗に見える季節だからな」
「それで見に行かないかってこと?」
(所謂デート…………男同士で?)
「いいけど」
「松本殿なら一緒に行ってくださると思っておりました」
(なんでよ!?)
「では、2日後の今日行きましょう」
(2日後?……2日後……あ……夏の大三角が綺麗に見える日!)
「星座観測……」
「お次は金の話しに参りますぞ、松本殿」
「はいはい」
夏が、終わる。
* 全部塗りつぶすような強烈な光だった。まるで少女が操ってるような爆速の天体ショウだった。
遠く遠くに不動の姿のまま存在し続ける金星が、遮られていたベールを脱いだかのような鮮烈なきらめきを放つ。
瞬きより速く自転を続ける一対の光は、彼女のつま先でかちりとそれぞれの方角を指したように見えた。
まばゆい光が狂ったようにめく。
「松本殿……いまの言葉は?」
「ポエムだ」
「ポエム?」
「エゲレスの言葉で【詩】という意味だ」
「いいえ……その言葉、我が国でも表されておりました」
金星、すごく遠いんだけど……意外とうるわしいピンク色の惑星なんだよ。
まばゆくて温かくて穏やかな、ラグビーボールみたいなにおいでね──。
*
(あ、いけない……うたた寝しちまってた)
最初に目に映じたのは光の粒が浮遊する木立。横になっていた俺はそのまま目だけ開けてみたけど何も見えはしない。どうやらまだ真夜中で辺りはまだ深い夜の中にあるらしかった。
ここは何処だ?俺は誰だ──。
俺は
この時代に未来から来た
『松本良順』という武将の三十八万石を乗っ取っているニセ者だ。
(ああ……流れ星、か……)
急流をあっという間にくぐる流星を見てた記憶がある。巨大な隕石が上空でスピードをなくして燃え尽きていくひかりを。
無数に零れた想いのかけらたちがほんの一瞬だけ砂漠の星に降り注ぐように、それは夢のように美しかった。
俺が今この時代にいられるのは、その流れ星のおかげだった。
その流れ星は俺の命の恩人だ。
「良順」
覚えている声がする。
もう一度聞くことも出来るなんて思いもしなかった肉声が暗闇に寄り添う。
「かえったよ、良順」
耳って優れていていいなって近頃はつくづく思ってる。暗闇の中でもうんと遠い彼方から発せられるお前の声でも聞き落とす事なく聞き分けてくれるんだ。でもそれはきっと──……
(俺の耳がお前の声を覚えているから)
*
(あ……れ、ここ?)
(俺どうしてたんだっけ?)
目蓋の裏からでも眼球を刺した光で、俺はうたた寝をしていたことを思いだした。
(……)
ゆっくりと目を開けると、俺はまた夜更けの草原に寝転んでいた。
(ああ、そうか。また流れ星を見ててそれで──)
「……ん?」
(あれ……なんでまた流れ星?さっきも見たよな……あれ、俺何してたっけ?)
「え、あれ……っ」
(ここ──どこだ?)
そんなの決まってんだろ松本良順、ここはお前の時代じゃないか!
『もうすぐ江戸の時代から明治の時代が始まる。そして色んな人達の血が流れていく』
とお前は歴史の裏の黒幕として色んな人たちに非業な死を決断を促しながら戦わずして戦っていくんだろ?
「ちがう……」
(ここは慶応四年/明治元年五月──甲府寛永寺、桂昌院の会見が開かれたのは前年十二月──その半月後)
「ちがう!ちがう!違う!」
俺は叫んだ。
俺の名前は松本良順じゃない。
松本良順。
それは未来人の俺に与えられた偽名で、この時代ではもうとっくに死んだはずの人間だ。
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