第39話
(まあ~吉子さんがいる目の前で堂々嘘つけるほど俺は強心臓じゃないからね。)
だからな・・・本心は別にしながらもいかにも心当たりが有るかの様な声音を使い返事をすることにしたってわけさ!。
「そうですな・・・しっかり覚えています。あれはよく見る料亭ではありませんがなかなか味のある座敷だったのではありませんでしたか」
(『初めて行った店舗だけど評判通りの美味しさだった』と返事を返して見たってことさ!)
その様な言葉を俺が口に出した瞬間にだ。
彼はこんな事を尋ねて来たのさ!
「味があった・・・?」
まあその様に疑問を口にしていた彼に向けて、俺はさらにこう言った。
「父上が下鴨社の宮司殿からそのようにお聞きになられたのですか?」
などと・・・さ! するとね?彼が俺にこんな問いかけをして来たもんだから俺も彼の問いかけに応えないわけにはいかないよ~!だからこう言ってみたぜ・・・
「はい そうです」とな。
そんな俺の返事に紫水の君が俺に話して来たことってのは、こんな言葉だった。
「宮司殿はそう仰られたのですか?」
という事をだ。
その言葉の後だ!彼がこんな事を口にした。
「なんとも愉快ではありませんか・・・つまり御社は下鴨社の傍まで姉妹店を展開するって事になられますよね?」
と・・・そんな問いかけをね? そんな彼の言動に俺は思わず笑いだしてしまう!
(俺の笑い声を聞いた彼女は少し驚いたような顔をするんだが俺が笑い終わるのを待って話しかけて来る)
「何が、可笑しいのかお聞きしても宜しくて御座いましょうか松本様?私にはいまひとつ分かりかねるのですが?」
と言って来た彼女の問いかけに対して俺はな
(まったく変な奴だよな~俺って奴は・・・・)などと考えながら答えているよ。
「彼のなさった発言にも問題がありますよ」
だって・・・さ!。
(彼女がすぐに疑問の声を俺に掛けてくる)
「宮司殿の言葉 ですか?」
なんて言葉を口にし、不思議そうな表情を浮かべる彼女に対して俺がさらにこんな問いかけをしてしまった。
「紫水殿は御社の事をどのように思われているのか?」とね!すると驚いたような表情を浮かべながらも彼は俺に尋ねて来た。
「仲居からの噂話しか知らないのですが・・・。下鴨の料亭とは庶民を対象にしている様な物ではないはずでは?」
なんて事をだよ? それを聞いても相変わらず笑い出したままの俺に彼女は更に話しかけて来る。
「もしかしてとは思いますが松本様は料亭で料理を楽しんだことがないのです?況してやそれは訪れた客がそこで出された料理を口にする許可を権禰宜殿がお客様に問えなかったからと推測しておりましたが本当なのですか?」
ってな!!
(俺のツボにはまって止まらなくなりそうなそんな疑問を彼女は俺にしてきやがった!だから、こう言ったんだよ )
「あの手この手を尽くして判断するための情報収集をする者達から聞く今の下鴨神社には感心させられたものだ」
とな。
その言葉の後に彼はこんな言葉を口にし、更に俺に問いかけて来たのさ!
「宮司殿がその様な事を申されてたと・・・?」
(彼が口にしたその言葉に対して思わずにやけた笑みで答えた俺は、その後こんな言葉を彼に伝えていたんだぜ!)
「私に調べる手段はございませんから、会話からのみ知り得た情報だとしか申し上げられません」
そんな俺の言葉に対してさ
「でも万が一宮司殿のお言葉を父上からお聞きになられているのなら、それは『下鴨社の傍』と口にされてたとしても問題無いですよね?。
だって
『下鴨社の傍』
には下鴨の料亭が存在していませんし、下鴨神社の境内にもお店はないはずです。それに加え御社がお造りになられた『田楽豆腐』は現在出町界隈の地で流行するほどの人気がございますからね!!」
などと言った彼女の言葉には、さすがの俺も苦笑を漏らしてしまったよ。
(だってな、彼はこんな言葉を続けて口にしたからな!)
「まあ~紫水殿も宮司も私から見ればどちらも同じ様に思えますな・・・」
だって。
それを聞いた俺は思ったよ。
(なんて奴だ!!この状況で『二人ともクソ野郎だ』などと言えるのはこの男だけだろうと!だって、紫水殿と田所さんが同一人物であることを俺は良く知っているし!田所さんは俺が知る限りもっともクソ野郎だからな)
(まあ~それは良いとしてだな!田所さんの話に戻すと彼は『出町』や下鴨神社で流行していた『田楽豆乳寄せ豆腐の田楽仕立て』などに代表される、今現在の下鴨神社周辺の名産品にも興味を示した。
(紫水の君と呼ばれる様になった彼が、京の町中に広めたのはこの豆腐だからな!だから、彼の耳にもその話は入っているのだと思うぞ。)
そんな彼が、こう言ったんだ。
「確かに下鴨神社でも田楽豆腐を良く目に致しますが・・如何にも本物の豆乳は下味用の調味料に使われている風情でしたね?本場の豆乳を田楽豆腐や田楽豆腐で使われた野菜に使っておられないとはなんとも勿体無い」
そんな紫水の言葉に俺が思わず言葉を詰まらせてしまうとさ。
「豆乳が使われて居なくても美味しい物が出来るのですね?それは興味深い事ですね・・・」
なんてな・・・。
(真実を伝えることなくその日は、俺との雑談を済ませたようだったね!)
ここまでは前振りだ、ここいらでいきなり話をぶった切るから、初めは何の話をしていたのか少しあやふやになって来たに違いは無い。
だが別に話したいことに変わりなんてないからな!このまま話を続けさせてもらうことにするぜ~
そんな俺は、紫水を見送る際にこんな言葉を彼に向けた・・・
「京の町が今よりも賑わう事があれば是非お教えいただきたいものだ・・・。その時はきっと私もお邪魔させて頂く事にしましょう・・・」
なんて風にね! そんな俺の言葉の後に彼はこんなことを俺に向けて問いかけて来たよ。
「京が今よりも繁盛する時とは何なのでしょうか?お聞かせいただいてもよろしいでしょうか?」ってね
(この彼の言葉に『しまった』と思った俺が、次に口にした言葉はね)
「京の町が今よりも栄える時・・・でございます」とな。
そう答えた後の俺に対する彼 松蔭の反応がこれだ。
「今よりも・・・ですか?」
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