第38話
(適当に誤魔化すとしますかね)
そんな思いの元に俺がとった行動は、こんな物だった。
「期待に副えれるよう努力するとしよう」
馬鹿が口にした決まりきったような言葉を聞いた吉子姫の反応がこれだよ!!
「ふふふ~よかったですわ!父から聞いているとは思いますが・・・京の都には田楽一という出し物で有名な道場がありまして、そこで薩摩島津や土佐一条それに織田などの大将たちをもてなしているという噂なのですが・・・。」
さらに彼女は語る。
「それを面白く思われなかった方々や自分たちが手に入れられなかったものを心よりお求めになられた方々がいたのです!」
「他にも数多くおりましたが、あなたさまの治められる土地に於いても同様に米や黄金などが群がっていたのでしょう?それを面白く思われなかったお方たちが・・・ね!」
彼女の話によると、『大政奉還』以降薩摩島津や土佐一条それに織田や伊達などの大名たちからもたらたであろう『莫大な富』を手に入れるために画策した者達がいたってことらしい。
それは『史実』、『今の歴史』でも変わらず行われていることのようだ!
『京の田楽一』の歴史を語るとしようか。
『京の田楽一』とは江戸時代に田楽 豆腐・桜餅(梅)などを主として将軍様などお金持ちに対しお気に召す料理を提供したとして金160両で茶屋を建てた才覚者 宮本卯之助(望月)という男の名から由来する料理屋で、天下の三名泉として庶民たちのあこがれとなっている有馬の温泉が湧き出ている所にあるんだ!!
(『金』は『かね 』ではなく
『かねづな 』と読んでくれ。
そして彼の名を取ったのだよ!この茶屋の名前はね)
将軍の豊臣秀吉をはじめ数々の大名がこの温泉を堪能したいがために常に兵士たちを護衛させて来てたらしいのだ。
そこに店を構えた『卯之助』さんとその友人たち。
そんな彼らの客たちの利用手段はと言えば、この『都』に住んでいる人間ではなかった様だ!!
(別荘を京に置いてたりもした『天皇家』に仕えてる人々たちだったとかでさ、だからこの時代には既に『都』にも多くの別荘が有ったと言う事だ!)
そして京の町に別荘を持つ事が一種のステータスとなっていたようだ。
そんな中で『黄金』を用いて生み出した食材を使い調理された物は言うまでもなく『天下三名泉』にふさわしき珍味とされる・・・明治になると有名になっちまったもんだ! 客の残したものは飲食したりなどしないことが義務付けられていて、残りの調理品や昆布・豆腐などを『天皇家』御用達の商人(豆腐屋)を通じて大名家に売るなどして、莫大な利益を上げていたらしい。
この商売方法は『田楽一の名物料理は京の食生活にも大きな影響を与えた』と評価されてもいるそうだ。
まあ『史実』、『歴史』での田楽屋 金多楼
(『きんたろう』と読まれていたりね!)はこんな感じだよ!。
(この茶屋は『黄金屋』とも呼ばれているようだから、興味のあるやつは行ってみるといいだろう)
吉子さんから話を聞いた後、俺はこんな考えを巡らせていた。
(田楽屋で金儲けも出来たかもしれん・・・)などと・・・。
そんな俺の思いを知る由もない彼女からのお願いがこれだよ。
彼女はこんな事を口にして来たんだ!
「松本様にお聞きしたいことがございますので少しだけお時間をいただけないでしょうか?」
(なんだか言いにくそうな口調で吉子さんが俺に聞いてくる)
なんだなんだ?急にどうした? そんな問いかけが俺の頭に浮かんだので聞いてみたんだよ。
するとさ
「お母さんの事でございます」
と、彼女が言うわけだ。
「下鴨神社の近くに店を構えておられるのですよね?」
こう問いかけてきた訳だけどね、それに対して俺はこう答えている。
「それがどうされた?」
「母からは人の恨みを買いやすい方なのですか?」
とまあ彼女から聞いて来た言葉がこれだよ。
「彼はお金にシビアな人間だ!とは言え吉子さんが、同じようだとは私は思わないよ」
(『人の恨みを買いやすい人間』だと~?そんなはず有るはず無いじゃ無いか!彼は、人一倍責任感の強い奴だからな)
(それに・・・俺は知っているからな!)
彼は
『人一倍真面目で義理人情に熱い男』だということをね・・・。
『今』は知らない奴も居るだろうが、俺からすれば『当たり前』だからな・・・もっと有名で尊敬されるべき存在にも係わらずだ!!
彼の影響を受けた人物の方が全国にはたくさん存在すると言うのにな~)
(ホントに困ったもんなんだよ! 松本人志って男はさ~)
そんな時だったぜ! 彼女からこんな事を尋ねられたのはな!
「加賀紫水は今日も京の都へと?」
だとさ。
だから俺も平然とこう答えたんだ。
「来ていると私は思うよ・・・まあ~京の町中で何かを仕出かすつもりまでは、無いようなのだが・・・」
などと話しを続けてみた。
そんな俺の答えに彼女も納得した様子で一つ頷き教えてくれたよ。
「紫水を田楽一に誘う気はございませんよね?」
とね!!
(俺が思わず顔がにやけちまった事は言うまでも無いことだろう・・・。)
そんな俺の様子を彼女は見逃さなかったようだな! 彼女からこんな声が俺にかけられてしまう。
『加賀紫水』の歴史を語ろう。
『加賀紫水』とは、俳人であり随筆家であり江戸町奉行の一人でもある!。
幕府の命令により田楽一の上客となること。
天下三名泉の一つに数えられる温泉に来る全ての大名に対し上座を設けそこを『紫水(しすい)の間』と呼ばす風習を作ったことが始まりだといわれている。
その紫水の間を管理していた男というのが『加賀紫水』だという事だよ。
そんな男が忠興(三十五歳)の死後からはじまる彼の波乱万丈の物語が始まった訳だよな!!
(晩年の彼は朝廷からも貴族からも忌避されるようになってしまう。)
物語は忠興の息子である細川忠隆へと語り継がれて行くんだな。
そんな彼らの生活ぶりを見た多門の下で働く市中に住まう人達の言葉集に以下のようなものがあるそうだ。
『市中において 紫風の事をば 加賀の守様 と呼びけらし』
だそうだぜ!! その紫水の由来を語った物語にはこうもあるようだよ!
『田楽一を営めば 人の恨みを買いけり』とさ! そんな彼が、京にやって来た。
彼の名は『加賀紫水(かが-しすい)!』と! そんな男から、こんな事を尋ねられてみろや!!
『下鴨神社近くに構えてある店に是非とも一度足を運ばれたとお聞きしましたが・・・如何でしたか?』
なんて事を聞かれたら俺としてはどう応えてやるのが一番良いんだろうな?と、思わずにいられなかったぜ!!
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