第35話
「そうそう!松本良順殿にお伝えしておいてもらいたいことがあるのですが・・・」
そう言うもんだから俺は直ぐにこう言葉でもって返事をしたのさ。
「なんでしょうか?伝えたいこととは?」
そんな俺の言葉に頷いてから彼はこう言って来るんだ。
「私の娘である『吉子姫』を・・・くれぐれも宜しく頼むよ!松本殿。」
と言う言葉をね!
(そんなことぐらいなら容易い事だからな!!任せときな)
なんてことを思いながら俺は首を縦に振ると彼は口を開いて再び言葉を発してくる!
「貴殿が何を目論んでいるのかはわかりませぬが・・・。良順殿であればきっと成し遂げてくれることでしょうしね!」
なんて言うもんだから俺もこう言い返したんだ。
(あんたに頼まれたからってわけじゃないさ!!俺の計画の為でもあるんだからな)
そんなやり取りを最後にして俺と清水寺太郎兵衛の会談は終わったのだ。
(にしてもなんだか色んなことが起こり過ぎて訳がわからなかったな)
そう思いながら俺は宿へと戻ることにするのさ。
そんな俺の頭の中では・・・
(彼はどうやって娘を救出するつもりなんだろうか?それはおいおいわかることだろうな
何せあいつの計画なんだしさ!
俺に危害が加わることは無いだろう。
それと清水寺次郎兵衛こと
『清水寺太郎兵衛』の目的って何なんだろうか?
娘である吉子姫を助けに来たというけどさぁ・・・。
まあ次回の会談で全てが明らかになるだろう。
『清水寺太郎兵衛』の歴史。彼が本来生きていた世界はどんな世界だったのだろうか・・・。
少なくとも現代よりもよくなった国に違いないだろう。
(未来の歴史では日本をでかくしてくれたからな・・・感謝しきれないほどさ)
そんなこんなを色々と考えながら宿まで戻ってきたんだが、その途中でまた俺は厄介な奴に絡まれてしまうことになるんだぜ!
(ああ最悪だな本当にさ)と思っていたのには訳があってだ・・・・そいつが俺の前に現れたときの表情や仕草をよくよく見たら・・・なんと清水寺次郎兵衛にそっくりだったのさ!!
(まずいな・・・。よりにもよってこんな時に出会っちまうとは・・・。どうするかな?)
すると目の前にいる存在は俺の思考を読んだのかこんなことを口にして来やがった!
「貴方は理解が早いですね~。そんなに深く考えることはありませんよ!今は何も気にせず、吉報を待つことしか出来ないのですから」
『清水寺次郎兵衛』の歴史。
俺はそんなこと今更考えるまでもなく理解することが出来る。
『それは清水寺次郎兵衛は娘である『吉子姫』を助ける為に未来からやってきた存在で有るという事だ!』
そんな俺が・・・彼に対して警戒していることを悟られないように努力しながら宿まで戻ろうとした時!!
事件は起こった!!そうそれは目の前で繰り広げられている!
「貴方は私の事を信用していないようだがねぇ・・・」
(な・何故それを知っている?)
そんな俺の思いなど無視するかのように目の前の存在は俺の考えをズバズバと言い当てるのであった!
「吉子姫殿はすでに清水寺屋敷より姿を消しているぞ?娘は今私の父である『清水寺太郎兵衛』と共に行動をしている」
なんてことをさ。
(そんな馬鹿な!!)
そんな思いで一杯であったのだが俺は目の前の存在を睨みつけながらこう言い放ってやったのさ!!
『で・・・俺にそのことを知らせてどうするつもりだ?』
すると彼は笑みを浮かべながら返答を返してくる。
「吉子姫殿を助けるために手を貸して欲しい!今の状態ではどうにもならんからね・・・。それに貴方にとってもこれは都合が良いことでもありましょう?」
そんな彼の言葉に対して俺はこう応えてしまうのさ。
(別に嫌ってわけじゃないんだけどな)とな。
そんな俺の言葉に納得したのか彼は俺に背を向けて宿に向かって歩き始める。
(また会えそうで良かったよ)
そう思いながら彼の背中を見つめる俺だったのだが、ふと思ってしまったことがあるんだ!
『いったいあいつは何が目的なのだろうか?それに吉子姫を連れ出して何をしようと考えているんだ?』
なんてことさ!!
(娘の身の安全を考えるのであれば・・・なんとしても清水寺屋敷へ連れ戻したいと思うはずなんだがな?それであれば普通に考えたら目の前にいる俺の前に姿を現すことはまず無いと思うのだが・・・)
それは何故かと考えれば考えつくことが出てくるんだが、現実的に考えても答えが見つからないわけで・・・。
(う~ん わからん!まあ気にすることはないだろうな)
そう思い直し俺は宿に帰ることにした。
(状況を理解したら吉子姫と共に歴史から姿を消すのかもな?そうなれば松本良順が事件に巻き込まれることも無いし歴史を変えてしまうなんてことも無いだろうしな)
そんな事を考えつつ俺は帰路へと着いたのだ。
そして時刻は午後八時、 さてはどうしたものかと考えていると・・・俺はあることを思い出す。
(ああそうだ!!清水寺太郎兵衛が『俺が明日には歴史から消えてる可能性も無きにしも非ずだ』みたいなことを言ってなかったっけ?まあ無いとは思うけど・・一応確認してみた方がいいだろうな)
なんて考えるようになった俺は慌てて宿屋の人間にお願いをするのだ。
そしてそれは叶えることが出来たので、安心したんだけどよぉ・・・。
俺に用意された部屋の前の廊下に怪しげな男が一人立っているんだよ!!
暗いながらもそれが『吉子姫』を守っている桂小五郎だということがわかったので、彼に対し俺はこう言ったんだ。
(そんなに警戒しなくても大丈夫だよ)とね! すると彼は俺の言葉を聞いてからこういったのだ。
「このままでよろしいのでしょうか?」と。
彼の問いには直ぐに応えられたぜ!
『もう事は成し得ている。何の問題も無いから心配するな!』
とね!
その言葉を聞いた彼は俺に会釈をするなり直ぐにこの場を去りどこかへ行ってしまったのである。
そんな彼の態度に違和感を覚えた俺はこう考えてしまったのさ・・・。
『(あっ!コイツ!ただ単に空気を読んでるんじゃなくて何か知っているに違いない)』
とね。
「なるほど・・・そっちか!!」
そう思い俺は宿を出て夜の街へと繰り出すことにしたんだ!!
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