第36話

「さて~いったい何処にいるのかな?」

そう呟きながら歩いているとある男が声をかけてきたので!!

(およよ?吉子姫か!)

なんて思ってしまい直ぐに声をかけてしまったよ。

そんな俺の言葉に彼女は一瞬驚いたような顔になるのだ。

そんな俺に対して彼女自らが話しかけてさえ来たのである!!

そんな彼女の口から出たのはこんな言葉であったんだ!

『私の事を覚えておいてください』とね。

それから少し遅れて吉子姫は俺に名前を問い掛けてきたので俺はこう答えることにする。

『松本だと言いたいところだが・・・あんたを助けることに決めてしまったので・・・本名は、中村!中村三郎(なかむらさぶろう)としておこうかな?』

そんな感じで言葉を発した所、なぜか彼女は満足げな表情を見せてきた後

俺に近づいてきてからこんな言葉を掛けてくるんだ!!

(おいおいどうしたっていうんだよ?一体何を考えてるんでい?! )

そんな事を考えつつも、俺に対しては最終的に予想外の行動をとることになるのだった!! そんな突然の行動に俺も驚きを隠しながらも話をしようとしたその時!?彼女は頭を下げてこう言ったのさ!!

『ありがとうございます。松本殿!今直ぐには御恩をお返しすることができませんが・・・吉報を携えて必ず私のお父様と一緒に貴方様の元へ戻りますのでその時は・・・。』などとね。

そう言ってきたと同時に笑顔を見せて去って行ったんだよ。

そんな彼女の後ろ姿を眺めながら思ったことはただひとつ・・・。

『なんでそんな話になる?ひょっとして変装をしている俺に感づいている?否!そんなはずは無い・・・考えすぎか? だがもし、そうだとするならばなぜこんな話をする?』

そんな思いを抱きながら吉子姫の後姿を見ていた俺は、ふとある事に気付くのだった。

(ん!待てよ。なんで彼女はこんな夜にこんな人通りが少ない場所にいるんだ!?)

そう疑問が浮かんでくるのは当然のことだろう。

だってそうだろう?

彼女は自分の父親の命を狙われているかもしれないって情報を得て俺のところに来た

「助けてください」

って事で間違いないはずだ!

それなら吉子姫を護る役目を持った忍びに、道中を守ってもらえたならば、こんな無駄な時間は使わないし、往来する人間が多くいる時間帯に行動するはずなんじゃないのか?

それなのに彼女はこの様な夜更けに行動をしていた!

しかもこんな人通りの無い場所にね!

(何故だ?!)

俺はそう思ったね。

そんなことを考えていたら俺の横を何かが通り過ぎたのでそちらに目をやる。

すると・・・。

そこには吉子姫がいたんだ!!

「えっ!?」

俺は驚く。

一体何が起きたと言うんだと・・・。

(どう言う事だ?!一体吉子姫は何処へ向かおうと言うのだろうか?)

そんな疑問の答えは直ぐにでる事となる。

俺が注視していた方向へ、見知らぬ男らしき集団が列を作って進んで行ったのである。

ただそれだけだ!

俺は首をかしげる事しか出来なかったのだ。

(間違いなく怪しげな連中であったが、あの男の集団を追えばいいというわけかな?)

とな。

そんな事を考えつつも、俺はその男たちの後に続いて歩き始めたのさ!!

案の定

「吉子姫~何処へ行っちゃったんだい!!」

との声が彼女の方より聞こえて来たのさ。

だから俺はこう言ってやることにしたんだ!

『このまま前進しているんだよ』

そう彼女に聞こえるような声でね! 俺は何食わぬ顔で彼らの横を通り過ぎて行くのだが彼女は目を白黒させながら動揺してたけどな!

(良いからそのままで俺の後を追ってきてくれ)

まあ何が彼女をここまで焦らす事になったのかって・・・? 

それは俺が京見物する為に長期にわたって滞在する予定のお宿の娘である事を伝えておいたことがそうさせているんだけどな!

(松本三郎としての情報は知られていると認識しても間違いないだろう)

そんな俺がお宿から抜け出して行動してるって知ったら、

「お部屋にいらっしゃると思っていたのに、なぜこんなところにいるのかしら?」

(まあこんな反応にはなるわな!)

なんて思いつつ彼らを見続けていたのだが彼らは俺の存在に気づくこともなく進んで行ってしまうので!!

『このままついて来いよ』と心の中で呟きつつ追跡を開始した。

だが・・・

「えっ!?あれ~っ!見失っちゃうじゃない!!」

なんて言葉が後ろから聞こえた俺は慌ててその場を引き返したわけだが、すでに時遅しだったのさ!! 彼女の隣にいた人物のことも気にはなったが・・・あの男の後を追いかけたのになぜ見失ってしまうんだろうと気にはなったさ。

そんな思いを懐きながら俺は宿に戻ると彼女に問いただしたわけさ。

(当然心の中でね!!)

すると彼女はこんな言葉を返して来て俺を混乱させるのだった。

『松本殿!私の父はもうこの世にはおりませんよ』

なんてな。

そんな俺の困惑を余所目に、更に言葉を続ける彼女の口から発せられた言葉はまさに俺の心をズタズタにするに十分な物だったんだ!!

『私が一人になる為にこんな行動を取ったのか?』なんて思っている内にだよ、そんな事を説明し始めてくれたわけさ。

その言葉を彼女から聞いた時愕然とし、身体が震え始める・・・。そんな俺に彼女は先程の清水寺屋敷の様子を語って聞かせてくれると同時に俺はこう口にするのだ。

『俺は行かなきゃダメだな!』ってね。

そんな俺に対して、彼女は声を掛けてくるんだよ!!

「よろしくお願い致します。松本良順さま!今回の事件・・・闇が深すぎます!人の手が複雑に絡んでいます故・・・早期の解決は困難極まりないことと言えましょう。幸いにも『史実』の記憶を持っている方が手助けをしてくださることになっておりますが、その方でも解決の糸口を摑めないほどの大きな陰謀が渦巻いているのです」

俺は吉子姫のその言葉を聞いた時・・・こんな思いを抱く。

(『史実』ってなんだよ?しかも人の手が絡みすぎて、何が何だかわからなくなってるんじゃないのか~)

まあそれはそうと・・・。

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