第31話
この彼の言葉に対してて俺は
(は?)
という感じになる。
(ちょっとまて……いま桂小五郎のやつ『ここは俺の知る江戸では無い』と言ったか?)
ということはこいつは歴史改変者?
だとしたら
一体誰の歴史に介入しようとしているんだ???
そんなことを俺が考えていると今度は清水寺次郎兵衛の言葉がこの空気をぶった切ったのである!
「ふむ、いいだろう?ただし・・・本当にやれるのならだがな!」
そんな言葉を受けた桂小五郎はニヤリッと笑う。
(ほう!どうやらあの御仁はこの俺と戦うという事か!!)
するとお初殿がクナイを構えながらもその体を前に乗り出しながら戦いの構えを取る。
(お初の方はクナイなんて持たないはず……この方も歴史改変者なのか?)
そんな考えが頭の中をよぎる・・・いや、そんな事を考えていては駄目なのだ!
そんなことを考えてる間にも目の前でお初殿のクナイが清水寺次郎兵に対し攻撃を仕掛けようとするわけだが……。
(いやいや!!それはダメに決まってるだろ!!)
いやむしろここで戦ってもらいたくないし!!
そう考えた俺は急いで止めようと体を動かしたのだがそんな俺に更なる出来事が起こることになる。
(いや……まだ続きがあったのか!!)
既にお初殿のクナイが清水寺次郎兵衛に迫っているにもかかわらず、彼は全く微動だにすることもなかった。しかしそんなことはお構いなしとばかりにお初殿はそのまま攻撃を仕掛けようとするのだが・・・。
そんな彼女の動きを止めるように動く影がある!
そう!
井上馨その人だったのだ!!!
そしてそんな二人の衝突を目の当たりにして俺だけでなく桂小五郎まで驚きに言葉を失っていたのである!!
(まさか彼女が手を下すとは。井上殿は俺が思った以上に信頼されているということか?)
そんな風に考えていると意外にもその攻撃を受けることもなく清水寺次郎兵衛は一人納得しているのだった……。
「なるほどな!やはり貴様等はあの時の奴らなんだな?・・・お主たちの目標はやはりこの男ってことか?」
そんな彼の言葉を受けた桂小五郎はことのほか喜びを隠そうともせずに大いに騒ぐのである!!
「うおぉおおお!?マジなのか!!これマジで俺の為に世界が回ってるのかよ!!はははっ!!」
またいつもの調子が戻ってきてしまったようだ……。
それにしても清水寺次郎兵衛はこの事に関して何も聞かんものなのだな。
そんな疑問を彼にぶつけたのだが・・・。
(まぁ別にどうでもいいか・・・どうせ何かあれば切るだけのこと)
そう考えてしまう俺に対して、井上馨の方はというと少しばかり緊張しながらその男に向かって言葉をかけたのだった・・・。
「一つ確認したいのですがね?貴方は『尊王攘夷派』でありながら桂小五郎の味方をするという事でよろしいのですかな?」
井上から発せられたその言葉を聞いた清水寺次郎兵衛は鼻で笑うことになる。
それを受け彼はこんな返事を返す!!
「ふむ、やはり君は勘違いしているようですね?」
「・・・どういう事だね?」
訝しむ様に彼が問い返せば彼はこんな事を言うことになる・・・。
(まぁこれはこれで悪い話ではないか)と。
つまり清水寺次郎兵衛は攘夷派でも尊王派でもないってわけだな? だがしかし『どちらも認めない』なんていう人間がわざわざこんな所に来て桂小五郎を守るはずが無いだろう?って事だ!!
(うむむ、そういうことなのか~ならばそれで何がしたいんだ??)
そんな考えが脳裏を過るが未だに相手の狙いがよく分からん。
だってあれだろ?
ここって確か将軍様のお膝元って呼ばれてる場所だよな? そんな所にどうして史実とは異なる立場の者が敵味方共に出入りするのか・・・。
そんな事を考えて疑問を彼に投げかけてみるのだが、彼は俺に向かってこう返事をするのだ!!
「彼を助けるというつもりはありませんね」と。
(ええぇぇぇええ~・・・そんなストレートに言うのかよ)
そんな感想を覚えた俺は当然再び思ったことを口にしてしまうわけで……。
「だったら何故彼を助ける?いや、それよりも助けなければならない理由があるというのか?」
まぁ案の定と言うか当たり前というべきか彼は答えたのだ。
「助ける理由など……簡単なことじゃないか!ただ面白そうだから!!」と・・・。
(そっそうか~……そこまであっさりと答えてくるか~。ってかそれ以外には理由は無いのかよっ!!)
そんな感想が自然と浮かぶのだがそんな俺にはお構いなく清水寺次郎兵衛は話を続けてくる。
「そう・・・理由など他愛のない話なのです。ただ単に彼が面白いというだけのこと!!それの何がおかしいのですか?というよりも、貴方とて私と同じ志なのでしょう?」
そんな風に問われた俺はと言うと・・・。
(それはどういう意味なんだ?まさか俺がこの世界で『尊王攘夷派』なんてやってると思うのか??そんなわけないだろ!!ってか
『この世界』ってなんだよっ!)
そんな思いを抱く中ではたと気が付くのだ!!
(あれ?そういや俺はどうして攘夷派と尊王派で意見が違うんだ??)
それに気付いた俺の眼には怒りの炎が灯されていた。
(なんでそんな大事なことを忘れていたんだ俺ってやつは)
そんな風に考えつつも隣にいる清水寺次郎兵衛の姿を見つめれば、その男は微笑むだけに留まりこちらへ問いかけてきたではないか!
『私の同志なのか?』と。
そんな問いに対して俺の心は決まった・・・。
『いいえ違います』と。
それはそうだ、俺の今の役職は内務卿であり日本国の総理大臣なんだからな。
よってここははっきりと言うしかあるまいて!!
(少しばかり高圧的になったのは許せ!)
「貴方とは志を共にできない・・・」
そんな一言に対し清水寺次郎兵衛の気配が明らかに変わるではないか!!
その気配に呑まれそうになりながらも必死に食い下がろうと頑張る俺なのだが……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます