第27話

元治元年6月24日、御所に火を放とうとした長州藩に対し、勅使が下した『攘夷(じょうい)』の旨を建白するため、第15代将軍・徳川 家茂(とくがわいえもち)が上洛した。

そして二条城に到着した際、ある人物が彼の出迎えをしにきた・・・。それは桂小五郎であった!

「やぁ・・・待っていたよ」

そんな彼に家茂は丁寧にお辞儀をする。

「これはこれは桂殿、今日はようこそおいでくださいました」

「・・・ああ、貴殿もな」

そんな簡単な挨拶を交わした後二人は広間へと入り他の公家たちの到着を待つことになる。そしてこの時になって家茂は既に幕府に仇(あだ)をなす存在と認識されていた長州藩の『志士』たちについて詳しく聞くことにすることとなるのだった。

それから少ししてから到着した二条城に到着する人物こそ・・・長州藩を束ねる指導者的存在でもある『桂小五郎』で、彼はすぐさまに家茂の元へと挨拶を行うべく向かうのだった。

「久しぶりであるな、家茂殿!」

「いえいえ・・・こちらこそご無沙汰しておりました。お元気そうで何よりです」

「・・・ああ。ところで話というのは京や各地に出回っているあの噂の件であるな!」

そう話しを振る桂小五郎に対して、家茂は毅然とした態度で言葉を返す。

「いかにも、我々が現在進めているこの戦に対する事態も踏まえた上で一つお耳に入れておきたい話がございます」

「ふむ・・・詳しく聞かせてくれんか?」

(一体何のことだ?)と不思議に思う桂小五郎だが彼の言葉にしっかりと耳を傾けていく・・・。

そして返ってきたのは想像もしない言葉だったのである!

「・・・我々はそんな攘夷など望んでなどいない!!」

「それは本当なのであるか?」

「当然の事でございます。そもそも我々が決起をしたのは天子様の憂いを晴らすためでもあったのですから!」

そんな家茂の言葉に『桂小五郎』は心から安心をした訳であるが・・・。

(・・・こいつが全ての元凶なのか・・・)

と確信した直後、突如として騒ぎが引き起こされる!

(なんだ?何が起きたんだ?!)

と考えるまでもなく答えはすぐにわかることとなるのである。

「長州が挙兵したぞ!!」

そんな声とともに二条城に火が放たれ、黒煙が上がることとなる。

それは彼らの居る大広間にも及んでくるのだが桂小五郎は冷静に対応したのだ!

(さぁ・・・どうする?)

と考える彼は今後の展望をどのようにすべきかを考えて決断を下すのだった。

「・・・今は下手に動かずに事の成り行きを見定めようと思う。お主もそれで良いか?」

と逆に質問されてしまうこととなって・・・。

桂小五郎の判断に賛同した家茂はただ頷くだけに止めておき、まずは自分達の身の安全を確保すべく避難を開始することになる。

そんな時だった!

「こっちだ!!」

という声がどこからともなく聞こえてくるではないか。

その声にいち早く反応した桂小五郎がそこへと走りだす。

その後を同じくして家茂も動き始めることになるのであるが、二人は無事に脱出することは出来るのだろうか?

(それは見てからのお楽しみだね!)

家茂が二条城から脱出したのと時を同じくして、西郷吉之助が率いる長州藩軍も動き出していた。

「暴れたりや!!」

という彼の掛け声と共に動き出す兵に対して幕府軍では混乱が生じ始めていたのだ。

そんな中で将軍家の警護を行う任を命じられていた『清水寺次郎兵衛(しみずでらじろうべえ)』と言う男が動くこととなる。

『清水寺次郎兵衛(しみずでらじろうべえ)』とは薩摩藩の重鎮として名高い『島津 久光(しまづひさみつ)』と近しい存在の人間であった。

彼を動かすことになった理由はただ一つ。

「斉彬公からの御恩に報いる為にもこの御所にいる方たちを守らねばならん!!」

という理由があったからである。

そんな男によって倒幕軍に牙をむくことになるのだった・・・・。

(さて、今が正念場だぞ!家茂!!)

『端末』で俺はいまはその場に居ない人達の場面を人気のない場所で閲覧していた。

隠密機能(インビジブルステルス)付きの飛行撮影機(ドローン型)で撮影しながら見ていた。

(さて、どうでる?家茂さんよ)

見ながらそんな事を俺は思っていたわけだけれども・・・。

そんな俺が今見ている場面では『清水寺次郎兵衛(しみずでらじろうべえ)』が長州の兵とにらみ合っており、まさに一触即発の状況となっていた。

そんな場面に対し彼は圧倒的な武力で他の兵を制圧していくのだった。

そんな彼の戦闘力を見せつけられた二条城内の幕府兵は戦意を喪失すると共に怯え出すものが増え始めていったのだが、それでもやはり最後まで抵抗を見せる者が幾人もいたのだ。

しかしそれらも次々に彼の手によって制圧されていく様子もまた見て取れていた訳である。

こうして見事二条城に火を放たれる前に脱出することに成功した彼はこの後、長州藩が本拠地を構える萩へと戻るわけだが・・・。

その後彼が『清水寺次郎兵衛(しみずでらじろうべえ)』の姿を見たものは誰もいなっかった・・・。

ということだそうだ。

だがしかし、彼は確かにここで命を落とすことになったのであったがその理由は簡単だ。

(咄嗟の事とは言えさすがに兵たちを見捨てることまでして逃げ帰ったとなれば信頼を失うことになると悟ったんだろうな・・・)

そんな男の信念を貫いた彼の行動によって二条城の戦いにおける長州藩の兵の被害は驚くほどに抑えられることになる訳だが・・・。

(まぁそんなことをしなくても防げるはずだったんだがな)

それに関しては今後のお楽しみってやつで♪

(さぁ歴史では大事になるが……こちら側は差し水は一切できない……それが俺たち『歴史』の『管理人』はそれが出来ないのが『決まり』だ)

「さて、移動するか」

と俺は呟く。

『清水寺次郎兵衛(しみずでらじろうべえ)』が命を落とすのを見届けた俺はその場を後にすることとなっていた。

そして二条城から脱出していた家茂が今どこにいるかなど全く興味もなかったわけだから、そのままこの場を後にしたんだけどもさ……。

(さぁて、これから本格的に事態がどう動いていくことやら)

そんな期待をしながら一路小栗上野介の屋敷へと向かっているわけだが・・・。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る