第26話
明治維新へと繋がる話に発展していく。
『松本良順』として俺は薩摩藩の密偵と共に証拠集めをするために松蔭先生宅にやってくる事になり、そこで藩邸に向かう際に話をしていた女性こそが『山内容堂(やまうちようどう)』の妹にあたる人物である。
その女性の名は文(ふみ)と名乗り彼女は俺の身の回りの世話を担当してくれている。
「松本様……何なりとお申し付け下さいませ」
と文は言う。
俺は
「ならこの書類を英の所にもって行っては下さりませぬか?」
と頼む。
「わかりました。」
彼女は書類を受け取ると英の所まで持っていくことに。
文が部屋から出て行った後、俺は深い溜め息を漏らすのだった・・・。
まさか松蔭先生に俺の正体がバレていたとは予想外にもほどがあるけども。
(これ……どうするかなぁ・・・?)
そんな事を考えつつも今後の打開策を考えてみるものの結局何も思いつかなかったのである。
(さて、どうしたものか・・・)
そう思い悩んでいた時後藤象二郎殿がやってきたのだった。
いやもうね!
この人は俺の事をしつこいくらいに聞いてきていたから正直困った。
それはもう困惑したよ!!
俺は正直にあったことをそのままに話すつもりだったのだがね。
だけどもそれが彼にとっては良かったみたいだ。
俺の話しを聞くにつれて彼は黙り込んでしまい、最終的には納得したかのように頷いていたからね・・・。
何がそうさせたのか知らんけど。
(しかしこいつも確か桂小五郎とやらの仲間だったよな)
もしもこの場に桂小五郎がいなくて後藤象二郎だけならばもっと追及が激しくなっていた。
『五箇条の御誓文』は間違いなく大変な事態へと発展するだろう。
そして・・・。
(この人、潰す気だ・・・!)
そう確信した俺は彼に釘を指していくことにする。その行為が吉と出るか凶と出るかは分からないがやらないよりはましであろうと思ってね。
「おい後藤!」
『平田』では無い事がすぐにわかったのか彼は俺の呼びかけに応えてくる。
「何かな?」
そんな彼の返事を聞いた俺はニヤリと笑みを浮かべる。
『松本良順』として答えることにする。
「言っておくがな、俺はそんなに器用な男ではねーんだ!」
そう啖呵を切る俺に彼はキョトンとした顔で見てくるのだが・・・。
(まあそうだよな)
当然の反応をする彼に俺は内心笑みを浮かべるが表情には出さないように細心の注意を払っていく事を決意するのだった。
『松本良順』として話すことにした俺は不敵な笑みを浮かべながら口を開いた。
「やるならとことんまでやってやるぜ!」
そんな彼の反応を見て俺も内心動揺していたんだがそれを表には出さずに平静を装うことには成功することが出来た訳だな。
(ここでコイツに対して俺の手札を見せすぎると今後色々と大変なことになるからなぁ・・・)
そう思いながらも俺は彼に話していくことにしようと考えたのさ・・・。
しかしどうしたものか。
『徳川(とくがわ)慶喜(よしのぶ)』と言う男を巻き込んでまでおきている事を簡単に話す気はない。
だが、彼には何故俺がこういう行動を取ったのかを理解してもらわねばならないのもまた事実であり、厄介なことであるのだが・・・。
なので俺は意を決し彼に話すことにしたのだ。
自分の身の上に起こった出来事を含めて全て洗いざらい話していくことに・・・。
それが彼を納得させるための最良の手段であると思った。
『桜田門外』とは俺が最も畏れている出来事であり、それによって引き起こされるであろう事態は全て回避しなければならないと考えている。
桜田門外(けい)とは幕末に起きた大事件の一つで『井伊直弼』と言う男に対して襲撃をかけた「天誅組(てんちゅうぐみ)」のメンバー達が潜伏をしていた場所でこの近くであったとされる『小梅』という場所らしいのだがそこを探索して証拠を探し出すことが目的とされているそうだ。
『桜田門外』に関しては後の『後藤象二郎』と深い関わりが出てくるため詳しい事は言わないことにしよう。
(下手に関与すると『歴史』にも影響が出てしまうからだ)
まだ、いまこの時の『後藤象二郎』はこの事件には一切の関与がない。
(俺は『歴史』を変えるためにこの時代に来た訳では無いからだ)
『歴史』を感じるため
体験するために来たに過ぎないから。
『英』にも誰にもこの事は話してはいない。
今後のためにもだ。
だがもうそろそろ
『桜田門外の変』は起こる時代になる頃ではある。
『西郷隆盛』も動き始めているのだ。
俺は決意を新たに『英』の事を探っていくつもりでいた。
彼がいったい何処にいるのか・・・。その痕跡を見つける為に。
もちろん薩摩藩邸にも立ち寄ってみてはいたのだが、彼から新たな情報を聞く事は出来なかった訳なんだがな・・・。
(ふむ・・・どうしたものかなぁ)
などと考えながら歩いていて気づけばいつの間にかに『小梅』近くの場所にまで到着してしまったようだと気付くことになったのだ。
どうやら目的地近くまで来ていたというのに気づかないとは よほど物思いにふけっていたみたいで我ながら驚いたんだけども。
そんな考え事をしているとふいに背後から声をかけられることとなる。
それはつい先ほどまで俺と一緒に居た男だったわけで・・・。
「何をそんな難しい顔をしておるのかは知らんが気を張り詰めすぎなのではありませんか?」
と声を掛けてきたのは彼であったのである。
(何だろうか?)
と思い改めて目の前にいる男を見てみると少し疑問を覚えたんだけれどもそれも一瞬のことに終わることとなる。
人気のない場所で俺は
とある『端末』を操作する。
俺が『未来』から持ってきた『情報端末』である。
器用にそれを操作し
『向こう側』と交信を行う。
『こっちは『松本良順』として上手くやっている。そちらは流れ的に上手くやれそうか?』
『ああ、だがそろそろ『桜田門外の変』の時間軸だからあまり変な行動は慎め』
『了解した』
『端末』を切り、懐へと仕舞い
元の場所へと戻り
時を伺う。
数週間の時間が流れ
『桜田門外』の出来事が発生する。
元治元年6月5日に起こったこの出来事が・・・後に日本の歴史を変える大きな事件となっていくのだ。
『木戸孝允(きどたかよし)』たちの失脚という形で・・・。
時は文久三年の二月を迎えようとしていた頃の事だ。京の都も本格的に冬の訪れを感じ始める中
俺、『松本良順(まつもとりょうじゅん)』はその日、『禁門(きんもん)の変』と言われる一件で今現在どうなっているのかを調べていた。
(ふむ・・・どうやら北の方では既に起き始めているようだな・・・)
俺の調べだと桂小五郎が中心となって薩摩や長州などの各藩の志士たちが集結を始めようとしているようだった。
そんな最中京の都では幕府と長州藩が戦い始めようとしていたのだった・・・。
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