第25話
(なんだこの話し方は・・・?)
「少し相談事がありましてね?」
「へぇー、そうなんですか」
松蔭が自分に何の用があるというのだろうか?そう考えてこう考えていた。
「まさか!!私に求婚するつもりなんじゃないだろうな・・・。そんな気持ちは毛頭ありませんぞっ!」
「は?」
『何言ってんだこいつ??』
そんな反応の俺を見て松蔭殿は驚きの表情を浮かべていたのである。
その様子に私は思わず声を上げてしまったのだよ・・・。
「いや、何を言っているのでしょうか?」
その俺の問いに答えるかの如くに彼はこう言ってくるのですなっ!
「なんでもないです」
「そうですか・・・」
(よくわからない男だな)
内心そう思いながらも私は冷静な口調でこう言ったのだ。
「それで?お話というのは?」
そうして私は松蔭殿が話し始めるのを待っていたのだが・・・。だがしかし彼の口からは予想外の言葉が飛び出したのである!それは想像もしえなかったとんでもないものだったんだからね?だからその言葉を聞いて俺は一瞬驚いてしまったのだけれども直ぐに冷静になるとこう答えたんだわ。
(やれやれ、何を考えているのかわからん男だ)
そんな時
「邪魔しますよ」
と、見慣れない人が入ってくる。
「どちら様?」
「俺は『後藤 象二郎』といいます」
そう名乗る男がいったい誰なのかわからない俺は困惑の表情を浮かべながらも、とりあえず挨拶を交わすことにしたんだがな……。まあそんな俺を見て何故か松蔭殿は少々苦笑いを浮かべてやがった。いやはや?あれは一体どういう事なんですかね?そんな俺を見て彼はこう言ったんだ。
「英殿が石田散薬を強奪したとお聞きしましてねぇ?」
(やっぱりそうか・・・)
『後藤 象二郎』とは後に「後藤象二郎商店」という株式会社を設立する人物となる人であり、後の明治政府において逓信大臣を務めた事があるという。
しかしそんな事など知るよしもない俺は取り乱すことなく冷静な態度で答えることにする。
『英 三郎』ではなく『松本 良順』としてな。
「いいえ?何かの間違いです。私には身に覚えがない」
(たぶん・・・)
そんな俺の答えを聞いた男は興味深げにこちらを見ながら話を続けるのだ。
「ふむ・・・。では、桂小五郎殿はどこに居られますか?」
(なるほど、こいつも薩摩藩士ってことなんだな?)
つまりは薩摩藩士ならば松蔭殿の仲間って事で俺は認識したわけでしてね?
「桂殿は療養中で誰とも面会はできないです」
(病人なんだから大人しく寝ててくれよ!頼むからさぁ!!)
そんな俺の願いもむなしく彼はある提案を持ちかけようとしてくるのである。
それは薩摩藩の密偵と共に証拠を探すというものだった。
『松本英三郎』とは薩摩藩士の『三浦 千馬』という人物でしてね。
彼の指示により『酒井 玄蕃(さかいげんば)』『市橋 熊之介(いちはしくまのすけ)』そして、『山下 景三(やましたけいぞう)』とその他2人の計4人の藩士が松蔭先生の家を見張る事になることとなる。
『松本 良順』は表向きは薩摩の客人として扱われている人物であり、薩摩藩士たちからも歓迎される事となり取り囲まれるようになって……。
『英三郎』という仮の名前を使い今に至る。
(何故こうなった?)
そんな松蔭先生をおいてけぼりにして話は進んでいくのであった。
「では、桂殿のところに案内してもらえますかな?」
「わかりました」
と英はいう。
そして、英と平岡が去っていく様子を苦々しい顔つきで見送っていた松蔭先生だったが。
(さて・・・どうしたもんですかね)
そんな思いで考え込む俺はどうしたものかと考えてしまった。
しかしながら一先ず今はこの事態を収める事が先決であろうと思い立った俺は早速行動に移す事にしたのだった。
俺は『後藤 象二郎』と名乗った男と連れ立って「松本良順」として松蔭先生の家を訪ねることにした。
まあ、客間で待たされることになるんだが・・・ここで俺は一つの問題と直面することになる訳だが、それはなんだろうかというと・・・それは!俺の目の前に座っている女性についてなんだよなぁ・・・。
彼女が何者なのかということに関しては見当がついているからどういった人物か説明をすると彼女は『山内容堂(やまうちようどう)』の妹であり、名を『文(ふみ)』という。
そんな姉の性格を知っいる俺にとっては、目の前の女性に対してどのような接し方をすれば良いのか悩むところではあるが・・・。
とか色々と考えた末に出た結論としては。
「よろしくね」
この一言に尽きたのだった!
その言葉を聞いた山内容堂の妹はというと、こちらを見つめ返してきながら。
「ええ、よろしくお願いします」
っと笑顔で答えてくれたのだった。
その反応を見て俺は少しばかり安堵したもののこのまま平穏無事に終わるとは思っていなかったからこの時ばかりは自分の運の無さを恨むことしかできなかったけどね・・・。
松蔭先生の家から出てきた俺と後藤象二郎殿は歩きながら話をしていたんだけれどね?
それは俺にとって意外なものであった。
どうやら彼は俺に興味津々といった様子なんだけれどもさ?どうしてそうなるのか分からないんだよ・・・まったく。
(一体こいつは俺の何に興味を持ったんだろうか)
不思議でしょうがなかった俺だったけど、そんな事を気にする余裕もなかったんだけどね・・・。
だってさ?
話を聞けば聞くほど気が滅入ってきやがる!
だから思わずこんな事を口に出してしまったのだがそれは正しかったのか間違っていたのかは神のみぞ知るって事になるんだろうかねぇ。
「はあ~」
と溜め息を漏らす俺に後藤さんは何を勘違いしたのかってーと、まあそう思わなくもないんだけども・・・聞き捨てならな発言をしてきやがりましてね?それは・・・。
「そうですなぁ・・・松本殿は苦労してきたのでしょうなぁ」
その言葉を聞いた時俺はどう言う意味だ!と考えていたのだが、その答えはすぐに知ることとなる。何故ならば後藤さんはこう言ったんだ。それも笑顔でね?
(こいつ・・・性格わりーな)って思ったんだがこれも全て俺が悪いと言うのかな・・・。?
「それにしても英殿は良いですねぇ・・・。桂小五郎殿にも可愛がられていたようですし」
俺はその言葉の意図をようやく悟ってこう思うわけよ・・・。
(くそっ!)
っとな。
(こいつめ!俺が松蔭先生と知り合いであると見抜いてやがったのかよっ!!)
そう思うと同時に自然と言葉が口から出てしまいやしたね。
(そりゃもう・・・自分でもわかるくらい焦った口調で)
「えっ?」
その言葉を聞いた後藤象二郎は目を丸くしてしまったようで、こう言ってきたんだわ。
「おや?その様子だと図星ですかな?」
(こ、このクソジジィ・・・いけしゃあしゃあと抜かしやがってっ・・・!)
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