第24話
「わかった!わかった!俺も男だ!乗る!乗ってやるから」
(上目遣いは反則だろぉぉおお!!)
「ありがとうございます!先生!」
そんな俺の様子を嬉しそうに見つめていた彼だったが・・・。
「では、松蔭様」
と口調を変えた英くんの声が耳に入ります。
そして続けて発せられた言葉に俺は耳を疑いました。
「貴方の家の養子にさせて頂いてもよろしいか?」
(あれぇぇぇ??聞き間違いかな?)
そんな疑問をよそに彼は再び同じ言葉を口にした。
(聞き間違えてない!養子?え、え
なんだってぇぇえええ??)
「ちょ、ちょっとまってくだされ!!」驚きのあまり口調が戻ってしまった俺は慌てて取り繕おうとするも時すでに遅しである。
そんな俺を見てクスリと笑う英くん・・・。
だがしかしだ。
そんな反応を可愛いと思ってしまう自分もまたどうかしているんだろうと思い込んでいたさ。
そして更に英はこう話を続けるのである・・・!
「えぇ勿論構いませんよ?ただし条件もありますけどね」
(含みある言い方だけどまあいいや)
「で?条件とは?」
「一緒にお風呂入ってください」
「…………ぶほぅ!?」
俺は思わず吹き出した。
「え?そ、それはどういう……?」
(くぉぉお!今いい話してたとこじゃないの??)
そんな俺の疑問に対して彼は少し顔を赤らめつつもこう答えてくれた。
「決まっているじゃないですか……男女が同じ屋根の下で暮らしているんですからね……。」
「お前は男だろが」
(こいつ正気か?)
「そ、そうでした。私が間違っておりましたな……。」
「まあ風呂は一緒に入ってやるこれでいいだろ」
(それぐらいなら問題ないだろうさ……)
「お、お願いします。」
そんなやり取りを経て俺は風呂を一緒に入ることになるのだが。
(男で良かった)
そう思ったのは言うまでもない……。
そんな俺は知らなかったのだ、この時既に重大な出来事が起きていたことにな・・・。
さて、英から持ちかけられた話をどうするか・・・なんて考える俺だったんだがその前に気になったことがあったんで尋ねてみる事にしたんだ。
(よくよく考えたらなんでこんな話になったのかわからん)
なんでいきなり養子だなんて言い出したんだろうか?
そこから察するに英の目的は英の教育係になって欲しいって事なんかもしれんね……。
さてはて
まあ、このくらいでいいでしょう。
では、話を戻す。
結局、俺には「英と組む」なんて選択肢はなかった訳だしな。
(さて・・・どうしたものか・・・)
そう思いながら俺は一人頭を悩ませていたのだが・・・。
そんな俺に声を掛けてきたのは意外や意外 平岡だったんだわ。
彼は真面目な表情を浮かべながらこう話しかけてきたんだよ。
「松蔭殿?」
「どうした?英殿」
俺は英に呼び掛けながらも頭の中では別のことを考えていた。
(平岡か・・・今更俺に何の用があるんだろう?)
そんな疑問を浮かべていた俺の思考など露知らず、彼はどんどんと話を進めてきたのだが・・・。
その内容は俺の予想を大きく上回るものだったんだよね。それがこちらとなります・・・。
「松蔭殿?」
「どうした?英殿」
そう言って男は私の方を見やってきたのだ。
それから直ぐに私の正体に気がついたのか男はゆっくりと近づいてきたのだが、その時にはすでに完全に間合いを詰められていてね。
私と男の距離は手を伸ばせば届く距離まで縮まっていたのだ。
(こいつ……只者じゃない)
そう思った時に私の思考を支配していたのは、男に対する興味だけだったんだわ・・・。
そこで私は男の顔をよく見てみることにしたわけだけれどもね?
そう思うが早いかその重い口をとうとう開き始めたのである。
それは未だ長州藩邸で待機している者達にとっては重大なニュースと言える事態ではあるのだが。
しかしそれよりももっと重大で厳しい事態に陥ってしまった事でもあった。
長州藩邸にはある急報が届けられたのである。
それは『三家老』の内の1人ともいえる中間(ちゅうげん)伊藤助作からのものであった。
その知らせは松蔭も知る事となったのだがその内容はと言うのがこのような内容だったのだから一大事と言えるかもしれない。
その内容とと言うのは『石田散薬(いしださんやく)』を英が強奪したというものであったのだ。
そんな訳で長州藩邸は大騒ぎとなっていたわけなのだけども・・・。
『石田散薬(いしださんやく)』とは
どのような効果のある漢方薬なのかと言いますと、簡単に言えば万病に効くと言われているものでしてね。
しかしそれでも様々な症状がありますからそこら辺は割愛しておきますよ!
だけども『石田散薬(いしださんやく)』の評判はかなり高いのも事実ですから、もし現代であれば手軽に買えるくらいの物になっていれば重宝されることは間違いないでしょうね。
そんな効能があるものですから皆欲しがるのは必須でしょうな。
『石田散薬(いしださんやく)』が現在どれ程の価値があるのかは、もう少し先でご紹介しましょうかね・・・。
話を戻しますが今現在の英の立場と言えば
『金も信用もなく口先だけの松蔭を担ぐ=松蔭に付属物扱いされている役立たずのチビ』というのが長州藩邸内では認識されておりましてね。
そんな状況であり、英の口から出た言葉に対して真っ先に反応したのはやはりといえばいいのか中間の伊藤助作であり、そこから『石田散薬(いしださんやく)』強奪という重大な事件が発覚した・・・というのがここまでの流れである。
その事を聞いた松蔭は勿論激怒していたのだけれどね。
そう思っていてはいたが目の前にいる男を目の前にして言えるわけもない・・・。
(くそっ!どうするべきか・・・。)
そう考えていた俺だったが。
ここで平岡が話しかけてくるわけだ。
(さあ、どう言う感じで来るんだ?)
そんな風に考えている俺に対して松蔭殿は落ち着いた口調でこう言ってくるのである・・・。?
「さて、英殿?」
「はい」
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