第23話

「どうやらお互いに秘密があるようですね?共に心中するならこれ以上ない相手だと思いましたが気が変わりました」

そんな切り返しを受けて更に頭を悩ませる俺だったが・・・

(いやマジで何考えてんのかわかんねぇわぁ~・・・。なんなのこいつ怖すぎるんですけど)

などと怯えてばかりいるわけにもいかないので覚悟を決めて尋ねたんだけどな。

まあこんな感じに会話していたんではないでしょうかね?

では、『大政奉還』について話すとしましょうかね。

そもそもだけど『大政奉還』が起こった経緯を簡単に説明していくとするかね? 元々徳川幕府は天皇に直属している将軍を中心に運営していたんだけどね、政治に関する実権は朝廷が持っていたんだよ。

そんでもって将軍の権力も凄くてね、例えば国家予算の決定だったり軍事や外交に関しての指示を出したりなどはかなりの権限があったんだけれどもね・・・ 。

そうなってくると

問題になるのは朝廷と将軍である徳川幕府の間での政治システムが崩れてしまうって事なんだよ。

そこでどうしたら良いかと思って考えた結果として生まれたのが『大政奉還』って事になるんだけれども・・・要するに今までの制度に拘らずに新しい制度を作ってみよう!的な意味合いだったりする訳でしてね?要するに現代風に言い換えると『天皇の元にある政府を新しく作って運営しよう』って話なんじゃないかなって思うんですよ!

うん!

こんな感じでいいでしょう。

おや?英くんがなにやら

会話をしているようですね。

「さてと、この辺にしておいて本題に入ると致しましょうか」

俺としてはもう少し話を聞いていたかったんですけどね。まあ仕方ないですね!

(そもそも、こいつは何がしたいんだよ!!マジで理解できねぇんだけど!!)

そんな俺の心の声など一切合切無視して話を進めようとする英にはある意味尊敬の念を抱くわ・・・。

さすがは伊達男よな?

そんな下らないことを考えていた俺に突然声をかけてきた英の言葉によって思考は現実へと引き戻されることになる。

「実は折り入ってお願いしたい事がございます」

(おっと、そろそろ本題に入る感じかな?)

そう思って気を引き締めようとした瞬間だった。英の口からは予想外の言葉が飛び出したのだ。

「私と組んで頂きたい」

(へ?なんだって??)

その言葉を理解するのに時間がかかったわけだけども・・・。

その間にも彼は淡々と語り続けるわけですよ!

はい!!

もうね、開いた口が塞がらないとはこの事だと思いますね!

マジでびっくりしましたとも!

えぇ!!

「俺と組みたい?どうして?」

(いやいやおかしいでしょ!!話が飛躍しすぎじゃね!?)

そんな風に内心でツッコミを入れてみたんだけども英は平然と答えてきた。

「それはもちろんこの国を良くしたいと考えているからですよ?」

そんな疑問に対して更なる爆弾発言をぶち込んできたんだけれども・・・これ以上聞くのはやめておこうかなって思ってる次第である。

(あかん、これ長くなるやつや)

そう思った俺は単刀直入に尋ねることにしたんだ!

「英殿は俺なんぞと組みたいわけですね。」

「ええ……貴方様としか私は組みたくありません」

(うお!?いま……あいつ俺としか組みたくないって?嬉しいことを……ごほごほ)

(って!!喜び方キモいだろ俺……)

「はて、これはおかしな話ですな。これまでの言動と辻褄が合いませんぞ?」

素直に思ったことを口に出してみる事にしたんだけど・・・。

まあ当然と言えば当然な反応ですよね。普通に考えて怪しさ満点の男からの申し出なんてそう易々と受け入れたくないですからねぇ……。


でも、英くん的にはそんなこと関係ないらしいみたいですよ?

なんでも俺みたいに超優秀で影響力も絶大な人物と協力したかったんだってさ。

(いや、こいつマジかよ!?どんだけ自信過剰なんだって話だけど?でも正直凄いし羨ましいは)

そんな風に思っていましたね、ええ!!正直に認めますとも!悔しいけどね! そんな俺に英くんはさらに言葉を続けたんだけれども・・・。

「この際だから言わせて頂きますが私は松蔭先生こそがこの国にとって必要な存在だと確信しております。」

(ぞくぞくするぞ。なんか……なんでだ?)

「俺には無理だね」

(いくら評価されようともそれは偽りだ)

そう言ったんだがな?

英はこんな言葉を投げてきたんだ。

それも真面目な顔でな・・・。

(やめれぇぇぇ!!そんな目で俺を見るんじゃあああい!……でもちょっといいかも・・?いかん、なんか変な扉開いちゃうぅう!?)

そんな動揺する俺を余所に、彼は構わず続けるのだった・・・。

「私は貴方様こそ大業を成し遂げるに相応しい人物だと信じております。だから私は貴方様と共に歩みたい」

(いやいや、ちょっとやめてくれよ・・・俺なんかがそんなこと出来るはずがないんだってば・・・)

そんな俺の思いとは裏腹に彼は語ったのである・・・。

「私が誠心誠意尽くさせて頂く事を条件に英知永年銭三百貫文(現代で言えば約三千万円に相当します。)をお約束しましょう。」

(おいおいおい!?なんで俺なんかの為にそんな大金出せるんだよ!?)

「それではあまりにも安すぎますぞ!英殿!!」

(それほどまでに、私の事を買ってくれるとは・・・!)

その言葉には偽りはない。彼の目は真剣そのものだったんだからな・・・。

そんな彼は俺に言ったんだ・・・。

「いいえ、違いますよ松蔭先生。貴方は私にとって掛け替えのない存在なのです」

そんな熱い言葉に胸を打たれる俺・・・。

(ポッ……)

(やべぇええ!!こいついいやつ!)

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