第7話

長州藩と言うよりも彼には大きな影響力を与えていた人物が居たのだ。

『東洋の魔女』と言われたサッカー女子日本代表は有名であるが、その女子サッカー代表チームを影で支えていた女性コーチが居たという。

(残念ながらこの方は結構前に亡くなっている)

そんな方の影響を受けて彼女は松陰の影響を受けていくのである。

(とは言え彼女は女性の為、親身になってくれる相手を探していたのだが……)

「頼む貴方しかいないのだ……」

そんな彼女との間に新たな歴史は作り出されて行くのだった。

(彼女達の書くサッカー漫画に「ほよよ」として登場している彼女は実は既に亡くなっていますがこの物語ではまだ存命と言う事で紹介させていただく)

こうして日米和親条約交渉が始まる中、薩摩藩の西郷隆盛を中心にした過激な攘夷運動にも変化が生まれる事に成るのだが……

その最中に彼は生涯を終えてしまうのである。(禁門の変の最中、長州藩との戦い等で傷を負った西郷は戦線離脱せざる負えなくなり江戸へ帰郷後に他界したとされているのだが……)

そしてそれは井伊にも大きな影響を与えていくのである。

「松陰よ……」

井伊は、史実とは違う道を歩んでしまった一人なのかもしれないとそう呟くのであった。

(この井伊が吉田松陰と縁があったと言う事も今日知られる事になった事実な訳だから歴史は面白いと言うか何と言うか)

しかし、そんな事で時間を取られる訳にはいかないのだろう。

既に徳川政権に寄りかかっての世の中ではなく成って行く事を認識されている明治時代へと時代が進んでいるのだから。

これから更にその『変』は大きくなり複雑化していく。

「しかし、井伊はもう終わりかも知れんな……」

「そうですね。史実として残っている限りは駄目でしょう」

そんな会話を続ける二人に

「今日も新しい時代が始まって行きますよ」

と彼女は語りかけるのだった。

(話を先に進めましょう)

一方、時代の流れに取り残されそうになりながらも彼らは行動を続けて行くのである。

『八つ手(はちぶて)の旗』それがこの歌の中で彼女が最後に発した言葉で有る。

(松陰の死後、彼女が見つけたその旗の元持ち主が幕末期の英雄で有名な『高杉晋作』であるのだがそれは別の話と言う事で……)

前回も記したが井伊直弼は大老として幕政を牛耳っていく事に成るのだが、安政の大獄において彼は暗殺されて行くのである。そしてそれを阻止しようとする悲劇とも喜劇ともいえるようなドラマチックな流れとなる。

文久元年(1861年)1月23日『王政復古の表』の大号令により将軍に即位した徳川慶喜は江戸幕府第15代将軍として歴史的な一歩を踏み出すのである。

(『王政復古の表』とは幕末期の重要事件の一つで王政改革を謳ったこの宣言は、政権が天皇に帰し、公武合体や開国といった政治方針が掲げられた)

「良くぞ成し遂げた。それでこそ男子」

そんな声を上げる井伊は明治天皇として即位したばかりの、まだ幼い少年王に対し忠節を誓っていくのである。

(一方で反対派の水戸藩などへの対応もあり徳川家のその後……そして革命に向けての動きはこの『王政復古』で大きな転機となっていくのだがこれはまた別の話)

『王政復古』についても触れていこう。

文久元年の年末に大老に就任した井伊は、安政5年(1858年)1月に締結された兵庫開港で巻き起こった攘夷志士による『浪士隊』決起や横浜港にて発生した外国人殺傷事件などを受けて3月の勅使が来る前に水戸藩主徳川慶篤や越前藩主松平春嶽を江戸城へ呼びつけ隠居謹慎を言い渡すと同時に彼らが蓄えていた外国から集めた。

「夷狄を追い払う武器を没収されたと言う事か……薩摩が政権を握るつもりか……」

そう憤る松平春嶽であったが

「それはそれ、これはこれなのだ」

そんな徳川慶篤に井伊は諭しを続ける。(何だこのあからさまな嫌悪感の見せ合いは……と個人的には思うのだが……)

「今は耐えて時期を待つのです」

外国との密約で、外国から武器を購入する代わりに国内での戦には武器は使用しない。またそれが都合悪ければ無条件で手放すと言う内容の取り決めで維新後の江戸幕府が外交面において大きな力を及ぼすことに成るのであるのだが……

井伊にとっても最初は不本意だったのかも知れない。

(だって密約を決めた当事者は江戸無血開城の中心人物であった小栗忠順とその弟子である横井小楠なのであるから)

「薩摩藩は薩摩で事を収めてもらおうではないか。我が藩には関わらせんと言うのか?」

「いいえ、西郷吉之助にも大いに関わってもらいます」

「ほ~それはまたどう言ったお考えでしょうかな?」

そんな茶室の中のやり取り。

(因みにこの井伊と大久保利通との横井小楠のやり取り(密談)が後に『紀尾井坂の変』へと繋がっていくのである。

『小栗忠順』とは江戸時代中期の薩摩藩士・財政家であり、日糖事件(砂糖価格偽装事件で穀物先物市場開設した商社)、参勤交代制度確立(新暦対応道路整備等)などの改革を進める。

後の『紀尾井坂の変』に至る原因になった人物で有る事は史実としても有名な話であろう。

『小栗忠順』には賛同出来なかった井伊だが、この『王政復古の表』による政変では協力していく事になる。

そして全てを終えた後に徳川慶喜はその後の生涯を閉じたのだが……。

一つ誤解が無いように説明しておくと、これが最初から予定されていた物ではないと言う事を先に書かせてもらう。

(事がここまで進んだ以上は暗殺されてもやむなしと言う意見も当然出てくるのである)

そんな展開に持って行きたくて俺は書いていた訳では無いのだから。

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