第四章 クーちゃんはどうしたいか考える

4-1 川のせせらぎとクーちゃんの耳かき

チリンチリン……。さらららら……。ぴぴぴぴ……。


風鈴、川のせせらぎ、鈴虫……

夜もキレイな音がいっぱい聞こえるね……。


なーんて、川沿いの縁側なんて

ロケーションよすぎるでしょ?


こんな別荘を持ってるクーちゃんと仲良しだったことに感謝してね。


ま、クーちゃんの親戚のだけど。


それじゃ持ってることにならない?

気にしない気にしない。


普段はいろんなこと考えて、

いろんなことに気を遣って、

いろんなことしないといけないけど、

今はそういうのなーんも考えなくていいの。


クーちゃんといっしょにダラダラ過ごそうね。


チリリン……。せせせせ……。ぴっぴっぴ……。


眠くなっちゃいそう?

じゃ~あ~、こ・こ。


ぽんぽん……クーちゃんの膝枕においで。


クーちゃんの声、息遣い、

耳かき、いい音の欲張りセットだよ。


大丈夫、クーちゃんときみが

『そういう関係』だって、

親戚のひとたちも知ってるから。


恥ずかしがらないの。


それに、めったにできないこと、

クーちゃんにさせてほしいなぁ。


うん、ごろーんして答えてくれたね。

すなおになれてえらいえらい、なでなで……。


耳かきセットがそばにある?

最初からこうするつもりだったのかって?


もちろん、このロケーションで、したかったんだよ……。

ロマンチックだよね……?


それじゃまずいつも通りに、

ふつーの綿棒で……。

ちょいちょい……外側から、

こしょこしょ……していくね。


しゅりしゅり……つんつん……こすこす……。


いつもの綿棒だけど、

いつもと違う音があって新鮮かも。

きみだけじゃなくてクーちゃんもそう感じるよ。


うりうり……ってされる音と、

さらさら……って川のせせらぎと、

チリリン……って虫の声と、

クーちゃんのかわいい囁き、

どれが一番好きかな?


くるくる……。

も~、ここは『クーちゃんの声』

ってすぐに答えるところだよ~。


しゅりしゅり……。

え~、当たり前すぎて思いつかなかった?

調子のいいこと言っちゃって。


そんな子には、外側のお掃除もそこそこに、

お耳の中ぐりぐりしちゃうぞ~。

ずぷぷ~。


ほ~ら、気持ちいいでしょ~。

きみは、クーちゃんの耳かきに、

勝てないんだから、

ちゃ~んとクーちゃんをおだてないと。


……つんつん。

クーちゃんも、きみがいないと

耳かきするひといなくて、困るけどね。


……いじいじ。

耳かきはクーちゃんの生きがいなんだよ。


耳かきで気持ちよくなる、

きみの顔が見たいの

……こすこす……さわさわ……うりうり。


もちろん寝顔も好きだよ。

眠たくなったら、

ねんねしてもいいからね。


きみのお耳はクーちゃんが、

キレイキレイしておくからね。


きみが寝ちゃったあとは、

涼しくて気持ちのいい音と、

きみの寝息を聞いて楽しむからね。


しゅきしゅき……しゅり……。

まるでアニメ映画の風景みたいだよね。

思った以上にステキ。


梵天に持ち替えて……

外側から~仕上げの~、

ぽんぽんぽん……。


くすぐったい?

モゾモゾされるとクーちゃんもくすぐったいよ。


中もふわふわ~。

くすぐられて緊張とか、

疲れがほぐれちゃうねぇ~。


ふ~~~~~~うっ。

はい、右耳さんおしまいっ。

もっとしてほしかった?


それはだ~め。

やりすぎるとお耳いたいいたいなっちゃうよ。


別荘のあとは病院なんてイヤだよね?

イヤホンのしすぎも含めて気をつけなよ?


でも眠れないときは、

クーちゃんに頼ってね。


気持ちいい耳かきしてあげたり、

リラックスできる音を用意してあげたり、

いいこいいこしてあげたり――


ふ~~~~ってしてあげる。


こういうの、左耳もしてほしいよね?

それじゃあ~、ごろーんだよ。はいごろーん。


んっ……きみの髪がじょりじょりってして、

クーちゃんのふとももくすぐったかっただけ。


何度もきみに膝枕してあげてるのに、

未だに慣れないなぁ……。


慣れなくていいのかも?

だって、きみを感じるんだもん。


あ……ちょっとえっちな言い方だったかも……。

さすがのクーちゃんも恥ずかしい、えへへ。


さ、さてと、耳かき再開するよ。


左耳さんも外側から、

気持ちよくしてあげるからね。

……くりくり……すりすり。


ご、ごまかしたんじゃないよ。


そんなこと言ってると、

クーちゃんの手元が狂っちゃって

お耳いたたってしちゃうかも……。


……かりかり。

うん、分かればよろしい……いいこいいこ。


きみ、撫でられるのも好きだもんね。

いいんだよ……なでなで、

弱いところ見せても。


さっきも言ったけど、

ここにはきみとクーちゃんしかいないんだもん。


ひとがいっぱいいるところは、

考えないといけないこともいっぱいで、

大変だもんね……。


クーちゃんも人付き合いが大変って思ったりするよ。


だからこんなふうにできるところが必要だなって、

わかぞーながらも思うんだ。


ふふ……こっくりこっくり、

おねむになっちゃったね。


お耳の中もキレイキレイする音で、

ねんねさせてあげちゃう……ずずっ。


ぞりぞり……かりかり……じょりじょり……。

気がついた?


いつもの綿棒じゃなくて、

木でできた耳かきだよ?

道の駅で売ってたんだ。


クーちゃんの耳かきセットの新人さんだよ。

気に入ってくれたらこれからも使っていくね。


うとうと……こくりこくり……。

きみに耳かきするようになって、

気がついたら耳かきのこと考えるようになったんだ。


どうしたら上手にできるかな、

どうしたらきみを気持ちよくできるかな。


専門家さんみたいに

難しいこと分かったらいいんだけど、

クーちゃんはこれが精一杯。


キレイキレイするだけじゃなくて、

気持ちよくないと、

きみの好きな耳かきにならないんだもん。


っと、梵天さんの出番だよ。


すやすや……しちゃって、

気持ちいいってことしか分かってなさそうだね。

お耳ぽんぽん……

お顔も気持ちもとろとろにしちゃうよ~。


きみの寝顔、かわいいね。

そんなに心地良いねんねしてると、

言い返せないでしょ~。


こちょこちょ……っと、

梵天さんの仕上げのあとは――

ふ~~~~っ。


はい、耳かきおしまい……。

クーちゃんも楽しかったよ。


このまま、きみといっしょに、

ロマンチックな音を聞いて、

ゆったりするね。

さらさら……チリリン……すやすや……。


きみはどんな夢を見てるのかな?

クーちゃんはいるかな?

夢の中でも膝枕されて、耳かきされてるのかな?

それともクーちゃんにいえないようなことになっちゃってる?


あ~でも、夢って絶対見てるわけじゃないから、

クーちゃんと同じ音を楽しんでるのかも?

それもうれしいな。


クーちゃんはね、

川のせせらぎを聞きながら、

きみに膝枕して、

お耳キレイキレイできたことが

夢みたいなものだよ。


クーちゃんの夢を叶えてくれて、

ありがとう。


……好き、だよ。

また明日も、いっしょにいろんな音を聞こうね……。

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