22
「聖女殿、よくぞ参った。自国だと思って緩りと過ごすがいい」
シャノンは国王の前で跪き、黙ってその言葉に耳を傾けていた。
「お心遣い感謝致します。ですが、私は聖女としてこの国へ参りました。その務めは全うしとうございます」
「流石は聖女だな。それならば……我が国の教皇であるロジェ=リュディックだ。困った事があればこやつに聞いてくれれば良い」
国王の横には正装したロジェが背筋を伸ばして立っていた。
紹介されたロジェはゆっくりとシャノンの元へ行くと、その手をおもむろに取り、改めて自己紹介を始めた。
「ご紹介に与りました。ロジェ=リュディック・ダリガードンと申します。何とも愛らしい聖女様でございますね。滞在中、何かと顔を合わせることも多いと思いますので、何卒宜しくお願い致します」
大人の色気を纏わせた微笑みに、シャノンは頬を染め目を奪われている。その様子を遠くから見ていたエリーザベトは緩む顔を隠すように扇を広げて見守っていた。
画面上でしか見れなかったものが肉眼で見れた喜びと、自分の愛する我が子が順調にシナリオ通り進んでいる喜びが混じり合い、最高の気分だった。
更にはここは初心者向けのロジェルート。ほぼ攻略できたと言える。
(ベルベッドは必要無いかもしれないわね)
ほくそ笑みながらシャノンの手を取るロジェを見つめていた。
◈◈◈
無事に挨拶と晩餐会も終わり、シャノンは用意された部屋へと案内されてきた。
その顔は今だに夢心地の様で、頬を染めたまま惚けている。それもそのはず、シャノンのエスコートはロジェが務めたのだから。
優しく手を取り、微笑みかけられる度にシャノンの心臓は高鳴り煩い程だった。
恋人であるヴィンセントも顔はいいが、ロジェは違った良さがある。女性の扱いが上手いし、エスコートもスマート。いい意味で大人の色気に当てられる。
そんなロジェが自分のものになるなんて夢の様だとシャノンが口にした。
「ふふっ、攻略する方がそれでは駄目よ?今はまだ気がないフリを装いなさい。大丈夫よ。もうほぼ攻略出来たようなものじゃない。見たでしょ?ロジェがシャノンを見つめる目。あれは完全に貴女を気にしているわ」
「ええ、あの目に見つめられると……」
思い出したように顔を真っ赤に染め、枕に顔を埋めてもがいている。こんな姿は聖女らしくないから止めなさいと何度も注意しているが、今日ぐらいは許そう。
明日は教会へ行って孤児達と会う予定だが、エリーザベトはそこを危惧している。と言うのも、シャノンは子供があまり好きではないのだ。
(まさか性格に歪みが出るとは思わなかったわ)
ゲーム内のシャノンは大層な子供好きだった。泥をぶつけられても嫌な顔一つせず、自身も泥にまみれて遊ぶ姿が印象的だった。
当然、自分の娘であるシャノンも同様に子供が好きだと信じて疑わなかったが、ある時、子供を邪険にしている所を目撃し手しまった。
「やはり明日は行かなくては駄目ですか?」
「当たり前じゃないの。ロジェルートが解放されたのよ?ロジェを自分のものにしたいでしょ?」
「それはそうですが、
「駄目よ。我慢して頂戴。貴女が子供達と遊ぶ姿を見て、一気に距離が縮むのだから」
ロジェルートで重要となるイベントが、孤児達と遊ぶというものなのだ。このイベントを成功する事で好感度が爆上がりする。子供が嫌いなんて行っている場合では無い。
(攻略してしまえばこちらのものなのだから)
渋るシャノンをどうにか宥めつつ言いくるめた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます