前夜祭 ~近況報告~

「では俺から始める。」


そうすい様が言うとみんなが静まり返った。


「俺は最近、冬に植物が枯れてしまい、真っ白な景色しかないのが寂しいから、冬にも育つ植物を育てるために研究している。最近は『異能』ローズを使って氷の花を作る練習をしている。氷の花を作ることが出来たら人間界あちら側にも持っていこうと思っている。以上だ。」


私は色鮮やかに花が咲く景色の中で過ごしているけど翠様が過ごしている『雪宮』ゆきみやはそうでは無いのだろう。私が雪景色に憧れを抱くのと同じように、翠様も色鮮やかな景色に憧れを抱いているのだろうか。


「翠様、それだと莉蘭りら様にお花を分けていただいたらどうだ?本物の花を見た方がよりイメージしやすいと思う。」


「そうだな、伊織いおり。莉蘭様、後で庭に出た時に見せて貰ってもよろしいですか?」


「はい!もちろんです!」


冬の守り人つまり『天使花』エンゼルランプの名前は緋色 伊織ひいろ いおり様。私の『異能』のことはすみれから聞いているのだろう。


「では、次に私ですね。私は青い薔薇の研究をしています。人間界では青い薔薇は、青く色をつけた色水を白薔薇に吸わせて色をつけているそうです。私は白薔薇も好きなので元々青く咲く薔薇を生み出せばいいのではないかと思って、研究を始めました。青い薔薇が完成したら桜宮さくらみやに植えるだけでなく、人間界にも持って行きたいと思っています。以上です。」


「じゃあ次は俺かな。俺は地球温暖化?ってやつで人間界の夏の期間が長くなってるから、その分長く咲く花を研究してるとこ。向日葵とかすぐに枯れちゃうから長く咲かせるために色んな工夫してる。完成したら海月宮くらげみやに咲かせてついでに人間界に持っていこうと思ってる。以上だ。」


「ついでに、という言い方は良くないかもな。」


陽翔はるとは厳しいな。」


『赤花星』カランコエは人間界に季節をもたらすのが仕事、俺は『赤花星』を守るのが仕事ってだけだ。」


この二人は本当に信頼し合ってるんだろうな。


「では最後は俺か。俺は人間界の紅葉がだんだん遅くなって来ていて、冬に近くなってきているのいう問題点から、植物の成長を早めて紅葉も元々の秋になるように研究している。まあ、植物の成長は一年を通してだから、秋だけ早めるっていう意外と至難の業で壁にぶつかってる。でも絶対に成功させて人間界に持っていくつもりだ。」


「そうだな。ここんとこ毎日研究室にいるからちょっと心配だが。」


「大丈夫だ、こう。俺の健康舐めんな。」


結陽ゆうひ様の守り人じゃなくて『天使花』エンゼルランプ柚月 煌ゆづき こう様。結陽様が無茶をしないか心配しているらしい。


「じゃあこれで近況報告は終わったな。」


翠様の声でまた空気が変わる。


「それじゃあ、俺の庭に行こうか。毎年恒例のお互いの『異能』のパフォーマンスを始めよう!」


今までの『異能』のパフォーマンスでは、仮面をつけていたから、その分視界が遮られてあまり3人の『異能』が見えなかった。私も思い切ったパフォーマンスができなかったから、楽しみだなあ。

れん様に続いて陽翔様、結陽様、煌様、翠様、伊織様が続いて部屋を出た。それに続いて私とすみれも蓮様の屋敷のお庭へ向かった。

よし!楽しむぞ〜!!







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巡る季節の真ん中で奇跡を  〜桜色に染まる世界〜 咲良 桜叶 @nico__chan25

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