葉桜

 今人間界あちら側は秋。私の出番はまだまだだ。『夢叶地』ドリームシーズンがあるのは文月しちがつ。これも、まだまだ。

「あーー。私今モチベがない。もう嫌だー!」


「そんな事言わずに、早く終わらせましょう。あなた、もともとの実力はあるんだから。」


 さっきから凛空りそら先生とこんな会話しかしてない。そのくらい、モチベがないことは凛空先生もわかっているのかも知れない。でも17歳になる前に『異能』ローズを覚えなければいけない。つまりあと1年しかないのだ。凛空先生が焦る気持ちもわからなくはない。


「でもなーー。やる気が出ないよー!!」


「そんなこと言ってる暇があるなら、頭と手を動かしなさい!」


「はーい、、、」

そうこうしているうちに時は流れ、文月がやってきた。


「あと3日で『夢叶地』だ〜!!!楽しみ〜!」


莉蘭りら!まだドレスの準備もできてないのにはしゃがないで!今回はかの有名なyunaさんのオーダーメイドドレスなんだからね!」


「yunaさんが私のために作ってくれる世界で一つだけのドレスとか最高じゃん!すみれ手配してくれてありがと!!」


「莉蘭が喜んでくれてよかった!」


すみれはなんだかんだ言いながら私のために色々してくれるんだよね。ほんと感謝しかない。

「いいですか。この7ヶ月間『夢叶地』の為だけにマナー講座も増やしたんですよ。おかげで今年は『人間界』の春はだいぶ遅くなってしまったんです。きちんとしたマナーで社交をしてくださいね。」


「凛空先生、もう明日のことなのにそんなにカリカリ言わないでよー!大丈夫!私本番に強いから!」


「いつものフルートのコンクールとは違うんですよ?それに昨年まではお見合いを始める年齢ではありませんでしたが、今年からお見合いを始めてもよい年齢です。つまり『赤星花』カランコエの中で誰が莉蘭様の結婚相手になるか分からないんですよ?もっと自分について自覚してください。」


「結婚相手って大袈裟な。せめて彼氏でしょ!」


「もうー!ほんとにお願いしますね?すみれ様も莉蘭様のことよろしくお願いします。」


「凛空先生、莉蘭様のことは私におまかせください。」


「2人とも私の事子供扱いしないでー!」


すみれはこんな感じで明日は大丈夫なのか不安で不安で仕方なくなった。


「明日の段取り確認しとこー。」


「ありがと!すみれはほんとに頼りになる〜!」


「莉蘭が何もしないだけよ。」


「そんなこと言わないでよー!悲しくなるから。」


「ごめんごめん。」


はぁ。ほんと不安。


「こんなんで明日大丈夫かな??」


「すみれ様はほんとに頼りになりますね。それに比べて莉蘭様は。」


「凛空先生そんな事言わないでー!」


「じゃあもっときちんとした振る舞いを心がけてください。」


「はーい。」


すみれはますます不安になった。

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