第7話
私もコッソリ後を付けてみようか。
そんな事を思っていた時、隣のクラスに行っていた
「あれっ?永嗣と白楽は?」
「なんか、一緒に屋上行ったみたいだよ」
「えっ?」
一瞬、千景の顔つきが変わったような気がした。
千景は、何か知っているのかもしれない。そんな風に感じた。
だってその後、千景はすぐに二人を追いかけるように教室を出て行ったから。きっと、向かった先は屋上。
だから、千景が帰ってきたら二人が何を話していたのかこっそり教えてもらおうと思ったのに。
千景は思いの外すぐに帰って来て、自分の席に着くなり机の上に突っ伏してしまった。
すごく気にはなったけど、誰も近寄るなオーラを発していた千景には声を掛ける事なんてできなかった。
千景は間違いなく永嗣が気になっていると思う。やたらと永嗣に話しかけているし。
だとすると、屋上で一体何が?
その後、教室に戻ってきた白楽は、なんだか楽しそうな顔をしていた。
続いて戻って来た永嗣は、どこかぼんやりとした顔をしていた。
四六時中一緒の二人はその日、それ以降会話を交わしてはいなかった。
あまりに不自然だったから、堪りかねて同じように不自然に思っていた
大毅が「何かあったのか?」って聞いてくれたけど、白楽は「別に」と答えただけだった。そしてそれ以上は答えようとはしなかった。まるで、それいじょうは聞くなと突き放されているようにも感じた。少しだけ、寂しい、と思ったのを憶えている。
そして起こった、白楽の事故。
なんで白楽は隣町なんかに行こうと思ったんだろう?
もしかして、屋上での永嗣との話の中で、隣町の話になったのだろうか。
翌日。白楽の事故を知った千景は、人目も憚らず泣き崩れていた。永嗣は相変わらずぼんやりとした顔をしていた。
白楽の事故にこの二人が絡んでいるとするなら、私はこの二人のことが許せない。
だから。
今は何も知らずにいる方がいいのかもしれない。
今更何が分かったところで、私が好きだった白楽はもう、どこにも居ないのだから。
それでいいんだよね、大毅?
視線を感じて大毅の方へ笑顔を向ければ、大毅はフッと目を逸らして俯いた。
ごめんね、大毅。私、実は気づいてたよ、あなたの気持ち。でもね、私まだ、白楽から卒業できてないんだ。この先卒業できるかも、わからない。
もし、そんな私でもいいなら……
なんて、都合のいい話、あるわけ無い。
心の中に他の男の姿を、たとえそれがゴーストだとしても、住まわせている女なんて、受け入れられる男、いるわけがない。
ごめんね、大毅。
ほんと私、イヤな女。
白楽、お願い。
好きになってくれなくてもいい。
でも。
私のこと、嫌いにならないで……
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