Side 伊津 大毅
第8話
今年は
声を掛ければ、誰一人欠ける事無く集まってくれる。
やっぱり白楽はすごいんだなと感じる。居なくなってしまってなお、人を集める力があるんだから。
僕が声を掛けるのは、いつも一緒にいた、
でも、きっと白楽はそんなことは望んでない。
なにより、僕が望んでいない。
僕が会いたいのは美也子だけだ。美也子が白楽の事を好きだったのは知っている。だけど僕はそんな美也子が好きだった。
だから、白楽には申し訳ないけど、年に1回、白楽の命日を利用するような形で美也子を呼び出している。
最低な人間だっていうのは、分かってる。それでも美也子に会いたかった。
美也子は今でも白楽のことを想っている。いなくなってしまった白楽の事を。
もし、白楽じゃなくて僕がこの世から消えてしまっていたとしたら、美也子は毎年命日に僕を思い出してくれただろうか?
そんなことを考えてしまう僕は、今でも美也子の事を想い続けているんだ。
既に高校1年の時には、美也子が白楽の事しか見ていない事に気づいていた。だけどそれよりも早く、僕は美也子のことを好きになっていた。
美也子が白楽の側にいるから、僕も自然と白楽の側にいるようになった。そうしている内に、僕自身も白楽の事が好きになっていた。
白楽は、どんな人にも適度な距離を保って変わらずに接する。それは絶妙ともいえる心地良い距離感。
恐らく、人によってその距離感を変えているのだろう。意識して、ではなく、無意識に。
そういう意味では、白楽は天才的だと思った。
千景との距離感、美也子との距離感、僕との距離感、そして永嗣との距離感。
どれも全く違う距離感で、それぞれが心地よく感じる距離感。あぁ、永嗣のことは正直良く分からない。たまに戸惑っているようにも見えたけど、それでも嫌がっているようには見えなかったから、やっぱり心地よかったのかな。僕たちの中では断トツに、永嗣が一番白楽との距離感が近かったようだけど。
美也子は偶に永嗣に嫉妬しているようだった。
そんな姿も、僕には可愛らしく見えた。
美也子が本当に白楽の事が好きなんだなと思えて。
僕自身は白楽に嫉妬したことなんて一度も無い。だって、僕は白楽には敵わないって、最初から白旗を上げていたから。
美也子の事は好きだけど、白楽の事も好きで、僕はただ、白楽に恋をしている可愛い美也子を側で見ていられるだけでいい。
それだけでいいと、思っていた。
「もし白楽がいたら、今頃何してたんだろうな」
毎年僕が口にしている言葉。
敢えて、「生きていたら」という言葉は使わない。
白楽は死んだんじゃない。いなくなってしまっただけだ。
なんとなく、そんな風に捉える事が、僕を含めた5人にはしっくりくるような気がして。
「バイクが好きだったから、レーサーとかになってたんじゃないかな」
美也子も毎年同じ答えを口にする。
対して、千景は何か言いたそうな顔をするだけで、口を噤んでしまう。
永嗣は「どうだろうな」などと、いつも曖昧な答えを口にするだけ。
もしかしたらこの二人は、白楽の死に何か関係しているんじゃないだろうかと僕は思っている。
何故ならあの日。
この二人の態度は、明らかにおかしかったから。
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