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椅子から、立ち上がる・・・。





泣きながら、眞砂先生と向き合う・・・。






「そんな酷いこと、何で言えるんですか!?」






眞砂先生は少し驚いた後、私を見て鼻で笑った・・・。






「あなた達の為に言ってるの!!!

こんな子がクラスに1人でもいたらみんなの為にならない!!!

こういう子はクラスにいる“資格”がないの!!!」






怒鳴り続ける眞砂先生を見ながら、勝也の言葉を思い出す・・・。







“眞砂先生が可哀想”

そう言って眞砂先生を心配していた勝也・・・。

眞砂先生の為に、校長室に行った勝也・・・。

眞砂先生の悪口なんて、一言も言わなかった勝也・・・。

最後まで、眞砂先生の心配をしていた勝也・・・。







「何も知らないのに!!!

眞砂先生は何も分からないのに!!!

そんなこと・・・そんな酷いこと言わないでくださいよ!!!」







もっと、色々と言いたいのに・・・







頭が回らない・・・







ちゃんと、説明したいのに・・・








勝也が、どんなに優しくて・・・








どんなに、良い子なのか・・・








ちゃんと説明したいのに・・・










出来ない。










モヤモヤモヤモヤモヤモヤ






モヤモヤモヤモヤモヤモヤ








止まらない・・・・







止められない・・・・









いつも出て来てしまう、この言葉が・・・








止められない・・・・










「眞砂先生・・・・私、キライ!!!!」








眞砂先生が私を見て、驚いている・・・






「眞砂先生のこと、私キライです!!!」






止まらない・・・






止められない・・・







モヤモヤモヤモヤモヤモヤ






モヤモヤモヤモヤモヤモヤモヤモヤ








「眞砂先生こそ・・・」







モヤモヤモヤモヤモヤモヤ







モヤモヤモヤモヤモヤモヤモヤモヤ








「眞砂先生こそ・・・」








止まらない・・・







止められない・・・








止められない・・・










「眞砂先生こそ・・・死っっ」









「ストップ!!!!」









私の口を、勝也が前から塞いだ・・・










“眞砂先生こそ、死んだらいいのに”








そう、言ってしまうところだった・・・。








勝也が、止めてくれた・・・。








私が、最低なことを言ってしまう直前に・・・。










「落ち着け・・・落ち着け、莉央。」










勝也が、いつもの笑顔で笑う。










「1度口から出た言葉は、二度と戻せないから。

それで・・・一生後悔するかもしれないから。」





勝也が笑いながら、私に言う・・・





勝也の笑顔を見ながら、私は深呼吸を繰り返した・・・。





少し落ち着いた時・・・






「お前ら、良い奴だな。」






と・・・。

1人の男の子が、近くまで来ていた。






そして・・・






「先生。」






と言ってから、先生を見て・・・






ジッと、見て・・・。







また、席に戻って行った・・・。







何でかは分からないけど、先生はすぐに教室を出ていって・・・







それから、戻らなかった。








ずっと、戻ることはなくて・・・。








次の週には、新しい担任の先生に変わった。























「あの時の莉央、かっこよかったよね~!」




クラスの女の子達に囲まれ、数日経ったのにまだその話をされる。




でも・・・




「本当は良くないよね・・・。

結局私も、その人のことは傷付けてるわけだし・・・。」




「あんな酷い人にはいいんじゃない?」




「言わないと分からない人もいるし。」




みんなの言葉を聞きながら、思い出す・・・




勝也の言葉を・・・。




“毎日あそこまで怒らなきゃいけない何かがある、眞砂先生が可哀想”




眞砂先生にも、何かがあるのかもしれない。

私が知らないだけで、分からないだけで。

だからと言って、あんなことをして良いわけではないけど・・・。





クラスの男子と、楽しそうに喋る勝也を見る・・・。

その男子は、“お前ら良い奴だな”と言ってくれた男子・・・。





楽しそうに笑う勝也を見て、安心した。






そして、勝也を見ながら、考える・・・。

勝也の為に、私は何が出来るのか・・・。






“お節介”で、徹底的にやらないと気が済まないような性格の私に・・・




“別の角度から人を見る”




そんな、大切なことを教えてくれた・・・。




休み時間が終わり、席に戻る。




勝也も戻ってきて、いつも通り私の隣の席に座った。





「勝也・・・。」





「どうした?」





勝也が笑いながら、私を見る・・・





「勝也の家・・・行っても、いい?」





慎重に聞いたわたしに、勝也は少し驚き・・・





嬉しそうに笑った。






「俺の家に来ても、俺と話せないぞ?」






そんな、不思議なことを言われた・・・。





















「その女・・・誰?」




6時間目まであった授業・・・。

16時半に下校となり、しばらく2人で喋りながら歩き着いた所は、保育園だった。




そして・・・




「お兄ちゃんの女なの?」




と・・・




子役でもおかしくないような可愛い女の子が、冷たい目で・・・冷たい口調で・・・勝也の腕に絡まりながら私を睨んでいる・・・。





「俺のクラスの友達!

毎回隣の席で、俺のこといつも助けてくれてるんだよ、莉央っていうんだ!」




「変な名前。樹里(じゅり)の方が可愛い。

顔も全然可愛くない。樹里の方が可愛い。」




「そうだよね、凄い可愛いね。」





勝也の身体から少し顔を出し、樹里ちゃんをもう1度確認しながら言う。

そんな私に樹里ちゃんは少し驚き・・・

勝也の腕に顔を隠した・・・。





「変な女・・・。全然可愛くない。」

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