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ジンジャエールを飲みながら勝也の姿を眺めていたら・・・
女の子がスープを持ってきてくれた。
テーブルに静かに置いてくれたスープを見て、驚いた・・・。
「“本日のオススメ”とは違うのですが、勝也さんがコレを・・・。」
「そっか・・・ありがとう。」
目の前にあるコーンポタージュを見下ろしながら、わたしは笑った。
わたしが大好きなコーンポタージュを、勝也が出してくれた・・・。
キッチンにいる勝也を見ると、勝也もわたしを見て・・・笑っていた。
それに笑い返してから、コーンポタージュを飲む。
“本日のシェフのオススメ”
真っ白なお皿の上に乗った料理はどれも美味しくて、脳が喜ぶ・・・。
私は目を閉じながら、その快感を噛み締めた・・・。
料理を堪能して、勝也の姿も見られ、今日の達成感は凄かった。
“結婚”というお姉様方のありがたいお話も分かるけど、まだ23歳・・・今年で24歳だし、そこまで急がなくてもいいのかなと思ってみたり・・・。
あとはデザートだけかなと思いながら、お客様で全てのテーブルが埋まっている店内を見渡していたら・・・。
1番良い席・・・
お店の中でも1番大きな窓があり、低めの木によって少しだけ区切られているテーブル席・・・
そこに座っているカップルの、女の人の方が泣いていた・・・。
他のお客様は気付いていないようだけど、女の子は気付いていて・・・少しオロオロとしている。
勝也をチラッと見てみると、気にしている感じではあった・・・。
私は迷わず、立ち上がった・・・。
そして、泣いている女の人の席へ・・・。
「どうされましたか?」
しゃがみながら、女の人・・・30歳くらいの女の人にハンカチを渡す・・・。
女の人は両手で顔を隠し泣きながら、私の問い掛けには答えない。
「どうぞ、ハンカチです。
ティッシュもありますので、使ってください。」
ポケットティッシュを渡すと、女の人が小さくお辞儀をして、それだけ受け取った。
俯きながらティッシュを出す女の人を見ながら、チラッと男の人を見ると・・・
オロオロとしていて・・・
男の人が、オロオロとしていて・・・
男の、人が・・・。
わたしは、少しだけ角度を変え、目や鼻をティッシュで押さえる女の人を見る・・・。
少し、少し、頭を回し・・・
女の人の背中に手を当てた。
「何か・・・お店に手違いがあるのかもしれませんね。
確認してきます、安心してください。」
わたしは急いでオープンキッチンに向かう・・・。
「あの・・・?」
女の子が戸惑いながら私に話し掛けるけど、それに少しだけ笑い返して勝也の前に立つ。
勝也が少しだけ、私を見て・・・
「今日は1件もないな・・・。」
と・・・。
わたしはチラッとキッチンの中が大戦争になっている様子を見て、苦笑いする。
「サポートいたします、シェフ。」
「お願いします、秘書さん。」
私は大急ぎでキッチンに入り、両手をしっかり洗う。
キッチンの人達の視線に気付きながらも、気付かないフリをした。
そして、キッチンの端にある一角・・・
そこを借りて、
作り出す・・・。
料理の苦手な私が1つだけ作れる物・・・。
これだけなら、作れる・・・。
これだけしか、作れないくらい。
それくらい、これなら、作れるから・・・。
*
「すごいな!俺もここまでは出来ない!!」
「凄いでしょ?
これなら・・・大丈夫だと思いたい。」
私は、それを勝也にソーッと渡す。
「あとは、勝也が・・・。
シェフから渡すのが、1番良いから。」
勝也が嬉しそうに笑った後、頷き・・・それを受け取った。
そして、最後に・・・
私がお皿に書く・・・。
大きくて豪華に出来た、苺のパフェ・・・
それが乗ったお皿に・・・
“happybirthday”と、チョコレートで・・・。
私はレストランを出て・・・
大きな窓から見える席・・・
その席で笑いながらパフェを食べている女の人をチラッと見た。
「今日は・・・良い試合だったな。」
達成感を感じながら、ご機嫌で家に帰った。
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