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土曜日の朝というかお昼・・・
職場のお姉様方から“結婚”と言われ、全く意識しないなんてことは出来ず・・・。
「勝也~・・・」
ダイニングテーブルの椅子に座っている勝也に後ろから抱き付き、首に手を回す。
そしたら、黒くなったパンケーキを手で食べている勝也が、少しむせた・・・。
「ごめん、大丈夫?
・・・メープルシロップあるよ?
今日はいつもより真っ黒だし・・・かけた方がごまかせると思うけど。」
土曜日の朝・・・というかお昼?は毎週パンケーキにしていて、手抜きさせてもらっている。
「このくらいの黒さにも、俺は負けね~!!」
「そう思って、勝也の方により黒いパンケーキを選んでおいたよ。」
「それは・・・ありがとうございます。
俺、ホットケーキ好きだから、何でも嬉しい。」
真っ黒いパンケーキ・・・勝也は毎回“ホットケーキ”と言う、真っ黒いホットケーキを手に持ち、本当に嬉しそうに食べていて・・・。
「来週は黒くならないように、ちゃんと見ながら作ります・・・。」
わたしのこういうところが・・・
一緒に住んでみたら勝也にとって“違う”と思ったのかも・・・と、自覚もしている・・・。
「今日、お店何時から出るの?」
「18時から!」
「お店・・・行ってもいい?」
少し慎重に聞いてみると、勝也は少し驚いた顔をしていて・・・。
「いいけど・・・俺は料理してるから話せないぞ?」
「話せなくても、勝也が料理してる所少しでも見られれば達成感あるから!」
「それなら・・・安心だけど。」
勝也はそう言って、楽しそうに笑っていた。
勝也を見送った後、私は徹底的に着飾っていく。
少し淡いローズピンクのワンピース、
そこにバッチリと・・・でも濃すぎないように見えるナチュラルメイク、
長い黒髪は軽めに巻いて、全てをアップにして少し後れ毛を出した、
パールのイヤリングとネックレスをつけ・・・
「よし・・・っ!」
気合いを入れて、家を出発した。
そして、歩いて数分の所にあるレストラン・・・
富裕層の多い地域でもないのに、このレストランだけは少しランクが上で。
でも、高すぎない・・・少し奮発したい時に、少し頑張りたい時に、少しご褒美の時に、少し特別な時に来るような・・・そんなこじんまりとしたレストラン。
レストランの周りにある木や花が綺麗に咲いていて、入る前から少し特別な日にしてくれる。
ソッと扉の取っ手を握り・・・
ゆっくりと、開けた・・・。
「いらっしゃいませ。」
すぐに若くて可愛い・・・大学生くらいの女の子が来てくれる。
「ご予約はされていますか?」
「予約・・・予約か・・・。
ごめんなさい、予約はしていなくて。」
「そうですか・・・。」
女の子は困った顔をして・・・
「申し訳ございません。
すぐにご案内が出来ませんでして・・・。
今からご予約いただければ、1時間後にはお席がご準備出来ますが、いかがでしょうか?」
丁寧に説明してくれる女の子に笑い掛ける。
「土曜日のこの時間に突然来店した私が悪いから。
また今度・・・次はちゃんと予約をしてから来店しますね。」
そう言って、良い笑顔でお辞儀をしてくれる女の子に私も小さくお辞儀をし、お店を後にした。
お店を出てから、扉の前で立ち尽くす・・・。
「そっか・・・予約か・・・。」
徹底的に着飾った自分の姿を見下ろし、急に恥ずかしくなってきた。
「帰ろう・・・。」
お店の扉の前から・・・
少し、歩き出した・・・
その時・・・
「ストップ・・・!」
と・・・。
腕を引かれ、振り向くと・・・
「勝也・・・」
「どうして帰るんだよ?」
勝也が困ったように笑っていて・・・
「予約するの忘れてた、ごめんね?」
「予約?」
「お店に電話して予約するの、すっかり忘れてた。」
勝也が大笑いをして、わたしの腕をまた引き・・・お店に向かって歩き出した。
「俺に言ってるんだから、席準備してるよ。
あんまり良い席じゃないけどな!」
「それは・・・ありがとうございます、シェフ。」
「どういたしまして、莉央さん。」
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