第14話 冒険者
2人は大通りの道を歩く事40分。
ついに冒険者組合の建物に到着する。
「ここまで…長かったわ…!」
坂道を登り切ったフウラが、息をゼーゼー吐く。
「お前なぁ。こんな短い坂道で息を切らしてんじゃねーよ」
「何で…アンタは平気なのよ…?」
フウラは自分が登ってきた坂道を見て言う。
「この坂、勾配きつすぎでしょ!?」
フウラの言う通り、2人が登ってきた坂道はかなり角度がついていた。
それを見て、フウラはブツブツと文句を言う。
「崖!最早、崖よこれ!何でこんな道の上に——」
「何いってんだお前。もう行くぞ」
アランはフウラを無視して先に行く。
「ちょっと!待ちなさいよ!」
2人は大きな建物の中に入り、受付をする。
ここでも、2人のマスク姿は注目を浴びた。
「2人、冒険者志願だ。手続きをお願いしたい」
アランは組合の受付嬢に話しをする。
「かしこまりました。では身分証をお願いします」
受付嬢は2人の姿を不思議そうに見ながら仕事をする。
アランとフウラは身分証を提示した。
「申し訳ありません。本人確認したいのでマスクを取って頂いてもよろしいでしょうか?」
「分かった」
アランが返事をして、2人はマスクを外す。
「ひっ…!」
その姿を見た受付嬢が、恐怖し小さく悲鳴を上げる。
そして、直ぐにその詫びをする。
「も、申し訳ありません。直ぐに手配します!」
そう言うと、受付嬢は急いで事務仕事を始めた。
「やっぱりこの顔、やりすぎなんじゃないの?」
フウラが小声でアランに話しかける。
「いや、まだ足りないくらいだ。帰ったら髪の毛の色も変える」
「えー!この髪の毛の色、気に入ってたのに…」
フウラは自分の髪の毛を触りながら言った。
「それもファントムアイの魔法でなんとかするから大丈夫だ」
「ま、それならいっか」
2人が会話を終えたタイミングで、受付嬢が話しかける。
「手続きが終わりましたので、第4講義室の方へ行かれてください」
「分かった」
アランは承諾すると、2人で講義室に向かった。
入り組んだ木造建築の中をグルグルと歩き回って数十分、漸く辿り着く。
中に入ると、そこにはびっしりと並べられた長机と長椅子があり、冒険者になる為に講義を受ける人たちが大勢座っていた。
アラン達は一番後ろの角席に空きを見つけ、そこへ向かう。
道中、周りからの視線を集め、笑い声や話し声が聞こえた。
「ぷぷぷ。アンタ笑われてるよ」
フウラがアランを冷やかす。
「お前もな」
「はっ!誰よ!そんな奴、私がぶっ飛ばし——」
フウラは言葉の途中で、周りの人達の睨みつける様な視線に気づく。
「——たいけど、今日はやめとこうかな…」
フウラは大人しく、席に着いた。
アランも席に着くと、直ぐに講義室の扉が再び開く。
丸いメガネチェーンを付けた、男の老人が教壇に立ち、話を始める。
「まず自己紹介をしよう。今日、君たちの試験官を務める事になった、ジオール・バッハだ。宜しく」
ジオールは教壇の上の机に、手を置き再び口を開く。
「まずは君たちには、私の講義を聞いてもらう。冒険者になるに当たって、重要な話であり、当たり前の話だ。これに関してペーパーテストなど無いが、実技試験はある。簡単な魔力測定し、合格ラインを超えたものだけ、アンデッドナイトと戦ってもらい、勝った者だけ、冒険者の資格を与えよう」
ジオールが言葉を言い放った後、講義室が騒つく。
アンデッドナイトは中級魔族であり、冒険者になる為の登竜門としては、そこそこ難易度が高い。
ジオールは思いっきり机を叩き、騒がしくなった講義室を静寂に返す。
「"冒険者"とは、遊びでやっていけるような、生温いものじゃない。過去、私はプラチナ級の友人が魔族に蹂躙され、死んでいく様を見た。階級だけが物語る世界じゃないって事を痛感した。この世界に必要なのは、力だ!戦う力。生き残る力。そして判断する力」
「いい事言うじゃん」
フウラが小声でアランに言う。
「だな」
アランはそれに同意した。
「私の話を聞いても尚、それでも"冒険者になりたい"と言う者だけ、講義室に残りなさい。私は覚悟の無い者は冒険者にしない。さぁ、君たちの判断する力を、私に見せてくれ」
ジオールは後ろで手を組み、講義室から出ていく人を待つ。
ジオールの話を聞いた志願者の半数以上は、この講義室から姿を消した。
「去った者も、残った者も賢明な判断だ。しかし、もう一度言う。冒険者とは遊びじゃない」
ジオールはアレンとフウラを見て言った。
「何アイツ。感じ悪っ!」
フウラが顔を顰める。
「十中八九、このマスクの所為だな」
アランは窓の外を見て言った。
そして、ジオールの講義が始まる。
冒険者組合の話やギルドの話、そして冒険者の話をする。
ジオールが語る、重要な話と当たり前の話は、フウラにとって、退屈なものだった。
「そこ!寝るんじゃない!」
ジオールはフウラに指を差し注意するが、イビキをかいて寝てるフウラは起きる気配がない。
「気にするな。突発性居眠り症候群だ。ちゃんと診断書もある」
アランはアルケイトで作った偽装診断書を見せ、フウラを庇う。
「誰だ!そんな頭の悪い診断書を書いたやつは!」
これをキッカケに、2人はジオールの目の敵になってしまう。
そして講義は終わり、実技試験が2人を待っていた。
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