第7話 稽古
陰の英雄は魔王国を再建します 7
稽古
グレンが魔族残党狩りに出立してから3日が過ぎた。
2日間続いた祝祭は終わったが、それでも尚ラザレオには沢山の人が訪れていた。
ラザレオ城にある広大な外庭で、エタニティ部隊はいつものように剣術の稽古をしていた。
「うぉぉぉおおおおおお!」
デルバが叫びながら剣を構える。
「マーラ行くよ!」
「…うん」
ルーラとマーラは剣を抜き、デルバに襲いかかる。
しかしデルバとは体格差もあり、一振りですぐ返り討ちにあう。
「くっそぉぉお!」
「…また負けた」
ルーラとマーラは地面に倒れ込み、鉛色の空を見る。
「まだまだだな!ハッハッハ!」
デルバは剣を納め、高らかに笑う。
「ていうか、剣の稽古なんて意味あるんですか!?」
「…魔法が強ければいい」
「いいかお前ら!全ての敵が魔法で倒せる相手だと思うな!中には魔法が通用しない魔族だっているんだ!ま、俺は剣技が効かない相手でも、力で叩き潰すけどな!ハッハッハ!!!」
「言ってる事滅茶苦茶だよ…」
ルーラは苦笑いをする。
「ちゃんと意味はあるわよぉ」
マリアは、倒れ込んだルーラとマーラの横に座る。
一方、傍ではウォレンとミーリアが激しく剣を交えていた。
「魔法が通用する殆どの魔族は、無知能型と呼ばれる魔族なのよ。学習機能がないから、話す事も出来ないし、魔法による耐性も殆ど持ち合わせていないの」
マリアは、二人の剣戟を見ながら語る。
「でもこの前の戦争の時は、みんな知能高そうな魔獣達ばっかりだったのに、魔法が効いてたような…?」
ルーラが顎に手を当てて考える。
「…
マーラは静かに答える。
「正解マーラちゃん!あの時戦っていた無知能魔族は、魔王のカリスマスキルとも呼べる
マリアはマーラの頭を撫でる。
「え!
「違うわよぉ。"マニピュレータ"は相手を強制支配して操作する魔法だけど、
「へぇ〜!すごいなぁ!僕もそんな特技欲しい!」
「…ルーラには無理」
「何よぉー!?僕だって出来るさ!」
「子犬みたいなオーラしか出てないルーラじゃ、
デルバが揶揄いながら笑う。
「もぉ、デルバさんまでー!」
「まぁまぁ落ち着け!話はまだ途中だ!」
「そうだった!あれ?何の話だっけ?」
「お前なぁ…」
デルバは呆れるように、頭をポリポリと掻く。
「剣術の稽古に意味があるのかどうかの話よぉ」
「あっー!そうだった!——ん?でも、世界に蔓延ってる魔獣とかって無知能型じゃないですか?
「——世界は広いわ」
先程とは違い、真剣な表情になるマリア。
「え?」
「知能型魔族は、魔王以外にも必ずいる。人間に理解を寄せてる魔族も居れば、そうじゃ無い魔族もいるのよ。対話を経ても尚、理解できない魔族と戦闘になった時、魔法は通用しないと思った方がいいわ」
「それってどういう意味ですか?」
ルーラも真剣な表情になる。
「タフなのは勿論、相手も魔法を使ってくるし、パワーもスピードも桁外れなの。近接戦闘になった時は、必ず人間が後手に回るから、剣術の稽古は大事って話よ」
「なんか、まるでグレン先ぱ——」
——キィーン
ルーラの言葉は甲高い金属音に阻まれる。
ウォレンはミーリアの剣を弾き、それが宙を舞ってルーラの足元の刺さる。
「ヒョエエエエェェェェ!」
情けない声を出すルーラ。
「どうしたミーリア?稽古に身が入ってないぞ」
「も、申し訳ありません…!」
「ここん所、何をするにもそんな調子だ。何かあるなら言え。俺にできる事があるなら——」
「い、いえ、大丈夫です…!」
ミーリアはそそくさと剣を取りに戻ろうとすると、鉛空からポタポタと雨が降り始めた。
「…雨」
マーラは空を見上げ、ボソッと言う。
「今日の稽古はここまでだ!各自、部屋に戻り休息を取るぞ」
ウォレンは剣を鞘に納め、外庭を後にする。
続いてデルバとルーラが談笑しながら城内へ行く。
雨足は次第に強くなり、雷雨と変わる。
ミーリアは地面に刺さった剣を、ボッーっと眺めていた。
——ムニュ
「キャッ!」
マリアは突然、ミーリアの胸を揉み出した。
「何してるんですかマリアさん!?」
「早く戻らないと、ずぶ濡れになっちゃうわよぉ?」
「わ、分かってます!早くその手を退けて…」
マリアは激しく胸を揉み出した。
「んっ…!」
激しく揉まれ声が漏れる。
「…マリアさん、やり過ぎ」
マーラはマリアの手を退ける。
「もぉー!これからだったのにぃ!」
「…早く行こう。濡れたくない」
マーラの言葉を最後に女子三人は外庭を後にした。
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