5
その二人だけの雨の夜の帰り道で、司と唯はたくさんの話をした。
それはほとんどがあまり内容のない、たわいもない話ばかりだった。
……でも、すごく楽しかった。
自転車を押しながら、二人で傘の柄を持って、歩き慣れた雨降りの道を歩きながら、司と唯は、透明なビニールの傘の下でずっと、笑顔だった。
それから二人は唯の家の前でさよならをした。
「ばいばい。司。今日はありがとう」ビニールの傘の下で唯は言った。
「うん。どういたしまして。じゃあ、またね。ばいばい」司は言う。
司は笑顔で唯にそう言って、ビニールの傘をさしながら自転車を押して、さっき司が唯と二人で歩いてきた道を今度は一人で歩いて、自分の家まで帰ろうとした。
すると、その途中で、「司!」と少しだけ大きな声で、唯が司の名前を呼んだ。
司は後ろを振り返ると、「……? なに?」と唯に言った。
「あのさ、言い忘れたことがあって……、司、……あの、『また明日ね』」と唯は司に手を振って、雨に濡れながら、そう言った。
「うん。『また明日』」司は唯に手を振りながらそう言った。
すると唯は本当に嬉しそうな顔で笑った。
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