突然、雨が降り出した。

 今日は朝からずっと曇っていたから、雨が降るかもしれないと思っていたけど、雨は突然真っ暗な夜の空からぽつぽつと降り出した。

 降り出した雨はすぐに強い雨に変わった。

 橋を照らす街灯の光の中にはたくさんの空か降り続ける雨粒が見えた。

 橋の上は雨に濡れて、小川の水面にも雨はたくさん降り注いだ。

 蛍の光は、強い雨の中で、あんまりよく見えなくなった。

 唯は傘を持ってきていなかった。

 司はちゃんと家から傘を持ってきていた。

 司は唯と一緒に雨の中を走って移動をして、自分の橋の入り口のとこに止めておいた自転車のところまで行くと、そこで透明なビニールの傘をさして、唯と二人で、雨をしのいだ。

「雨。降ってきたね」司は言った。

「うん。降ってきた。……ごめんね」と唯は言った。

「どうして謝るの?」

「……まあ、いろいろと」と司を見て二人だけの傘の下で、唯は言った。

 司と唯は雨が降ってきてから、その雨が強い雨に変わるまで、しばらくの間、雨の中に佇んでいた。

 雨が強くなってからは急いで移動を始めたのだけど、それでも二人は結構雨に濡れてしまった。

 司の服も、唯の服も、それなりにびしょ濡れだった。

「……あのさ、帰ろうか。もちろん、家まで送ってくれるんでしょ?」

 にっこりと笑って唯は言った。

「話はもういいの?」

 司は言う。

「うん。もういい」幸せそうな顔で唯は言った。

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