第3話 学校
咲子さんに自分が通っていた学校の前まで送り届けてもらった。
「行ってきます」
咲子さんに見届けてもらい学校に入っていく。
「ここが僕の高校...」
可もなく不可もなく普通の学校という感じだった。
「2-3はどっちだろう...」
道に迷っていると聞き覚えのある声に名前を呼ばれた。
「春翔君!」
後ろから走ってきたのは花だった。
「もう学校に来ても大丈夫なの?」
万全でないこと、条件付きで退院したことを事細かに伝えた。
「そうなんだ。無理はしないでね。」
そう言って彼女は記憶のない僕を気遣って学校を案内してくれた。
「じゃあ私隣のクラスだから!」
と言ってクラスの前で花とは別れ、僕も教室に入ることにした。
教室に入ると、みんなの注目を浴びた。
そりゃそうだ。
事故で死んでてもおかしくなかった人間がこうして目の前に現れたのだから。
黒板に出席表のようなものが張られていたのでそれを見て自分の席に座った。
「よっ!久しぶり!」
そうやって目の前に現れたのは元気が肩書のような男だった。
「ごめん。記憶喪失で覚えてないんだ。」
「あぁごめん!俺 鏑木誠一! 記憶を忘れる前親友だった男だぜ!」
この人が僕の親友...そんなことまで忘れてるだなんて。
「忘れてるもんはしゃあねえよ!ゆっくり思い出していこうぜ!」
僕の周りはどうしてこうも優しい人に恵まれているんだろうか。
「ありがとう。迷惑かけるけどよろしくね。」
そうだ。この人に記憶をなくす前の自分を聞いてみればいいんじゃないか。
「誠一君、記憶をなくす前の僕ってどんな人間だったの?」
「誠一でいいって! 記憶をなくす前の春翔かあ...
良くも悪くも普通だったな!特に目立つような性格じゃなかったし、
今とそんな変わんねえかもな!」
「そっかあ。」
なんか拍子抜けした気分だ。普通だったのか。
もっとこう。なんか目立つ部分があるものかと。
「でもどことなく何考えてるかわかんねえんだよな春翔って
裏がありそうっていうと言い方が悪いかもしれないけど、
話してる時も心ここにあらずみたいな感じだったな」
そんな感じだったのか。
よくわからない奴だったんだな僕って。
そんな話をしていると周りの子たちも寄ってきて、
体調の心配や記憶がないことを確かめてきたり
誠一と話してたおかげで変に気まずさを感じていたクラスの空気も
ほどけてきた気がする。
そんなとき、ふと視線を感じた。
教室の入り口辺りで花がこちらを見ていた。
微笑んで教室から離れていった。
クラスに打ち解けている僕を見て安心してくれたのだろうか。
また後で花にも話を聞かないとな。
「あ、花ちゃんじゃん。そういえば花ちゃんが自分の彼女ってことは
知ってんのか?」
「うん。お見舞いに来た時に花から教えてもらったよ。」
「いいねえ。愛されてるじゃねえかあ。俺もあんなかわいい彼女
欲しいもんだわ。」
やはり誰の目から見ても花はかわいいんだな。
花と付き合えている現状を誇りに思わないとな。
僕にとっての君 醬油かけたまご @syoyu_kaketamago
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