第4話 ニート生活

「ふわぁあ」

 大きく伸びをして、ベッドから起き上がる。と、丁度、侍女が私を起こしにやってきた。

「おはようございます、王妃様」

「ええ、おはよう」


 侍女はてきぱきとした仕草で、私の姿を整えてくれる。


「ありがとう」

「仕事ですので」

 あっさりという言葉はその通り、なのだけれど。どこかトゲがあった。


 うーん。なにもしてないのに、嫌われちゃってるなぁ。それも、当然か。


 私の祖国とユーリシアは戦争をしていたのだから。そして、戦勝国から王妃にと寄越されたのが、第二王子のお下がりなんて。馬鹿にするにもほどがある。


 まあ、いっか。私の目標はニートになること。彼らに愛されることではない。

 だから、別に大丈夫。誰にも愛されなくても、私だけが、私を好きであればいい。


 その後は、朝食をとった。

 朝食は王妃にだすものとしては、質素だったけれど、ただ飯喰らいに与えるものとしては分不相応なくらいだ。そのことに感謝しながら、朝食を味わって食べた。


 さて。


 朝食のあとは、一応侍女に今日の予定を聞く。返ってきた返事はなにもないので、自由にして構わない、だった。


 侍女を下がらせ、ベッドに転がる。

「イェェェーイ」

 私はニートなので、朝っぱらから、ベッドに転がることだってできちゃうのだ。


 枕に埋もれながら、ばたばたと足を動かす。

 ……はぁ、幸せ!



 思う存分二度寝した後、気づいた。

 ニートといえど、娯楽がなければやっていけない。

 何か時間をつぶすものが必要だ。まあ、別に食べたらねての繰り返しでもいいけれど。それだと太っちゃうし。太って生活習慣病にかかったら、長生きできないし。


 何か娯楽はないかなー?


 とりあえず、城内を散歩してみよう。そう思って、寝室を出て、廊下に出たときだった。

「ミャア」

 ミャア? 窓の外を覗くと、なんと! 犬に似た白い毛並みのなぞの生物が、頭を撫でてほしそうにこちらをみている!


 私は前世で犬を飼っていたのだ!

 ……元気かな?


 少し、切ない気持ちになったけれど。


 とにかく、そのテクニックを今こそ発揮するとき。

 私はドレスの裾をまくりあげ、窓から木をつたって外にわたった。


 「よーし、よしよし、いいこだねー」

しゃがみこんで、頭を撫でると、犬(?)は、私の頬をなめた。すると。


 シャリーン


 え、なに? この音。鈴をならしたような音がしてきょろきょろと辺りを見回すも、なにも変化はない。すると。


『貴女を主として認めよう』


「……はい?」


 なぜか、この可愛らしい見た目にそぐわない、低い声が犬(?)から聞こえた。


 気のせいかな?


 もう一度、頭を撫でると、犬(?)はミャアミャアとないた。ほんとになんだろう、この生物。犬なら、わんってなくよね。


 そのことに疑問を感じて首をかしげると。

『一度ならず、二度まで私を撫でるとは。神獣バメオロス、貴女の命尽きるまで、忠誠を誓おう』

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