第4話
お父様は旧館の
その日の夕食後、図書室で先生に
先生は
「今度は何の本を持っているんだい?」
僕は手に持っていたビアズレーの画集を差し出した。先生はあまり興味なさそうにパラパラと
「ここの蔵書は見事だね。人文から社会、自然科学まで多岐に渡って集められている。しかもきちんと十進分類法に
「先生も本がお好きなんですね」
「最近は忙しくてなかなか読めないけど、昔は片っ端から
「ここにあるのはうちの
「へえ、それは見てみたいなあ」
僕は、
「それ、おじい様の自伝ですね」
「あ、ごめん。読んじゃまずかったかな」
「大丈夫ですよ。ここはお客様にお使いいただくための図書室ですから、どの本でもご自由にご覧ください」
僕は、先生の隣に座った。
「何か、興味を引かれるようなことはありましたか?」
「そうだね。まだ初めの方しか読んでないけど、これぞ
「どの辺りがですか?」
僕が首を
「たとえば、これさ。先代の
「おじい様には子どもが1人しか出来なかったんです」
「そうなんだ? でもまあ、たった1人の息子があれだけの
先生は本を閉じて、僕を見た。
「その点、
「……実は、僕にも兄がいたんです。双子ですけど」
「えっ、本当?」
「はい……5歳の時に、亡くなったんです」
「ああ――ごめん。無神経なこと言ってしまったな」
「いいんです。昔のことですから」
沈黙が流れた。先生はその場の空気を変えるように、両手で
「いやあそれにしてもさ、俺は一体ここに何しに来たんだと思う? もう3日になるのに、相変わらず何の指示も
「もしかしたらお父様は、避暑を兼ねて先生に
「いやあ、
「まさか!」
僕が
「あーあ、あまりに暇だと探検でもしたくなるなあ! こんなに広い屋敷なら、地下室やら秘密の抜け穴やら、たくさんありそうだ。
「あはは。残念ながら地図は持っていませんけど、旧館には開かずの間があるらしいですよ」
「本当?」
「ええ。僕は入れないエリアなので、直接見たことはありませんけど」
「へえ、
「ええ。旧館は
「ふうん。そう聞くと、ますます気になってくるな。俺、昔から秘密基地や隠し部屋に弱いんだよねえ」
その夜、僕と先生は、回転する壁だの
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