お祭りデート
「隣に居るのは……」
二人が近付くと、顔がチラリと見える。
「あっ、ミヌ」
ラミッタがそこまで言いかけた瞬間に沈黙の魔法で声が出せなくなる。
「どうしたラミッタ!?」
「おやおや、奇遇ですね」
こちらへ向かってくるヴィシソワ。ラミッタは無言のまま何かを叫んでいる。
「そちらは……」
「えぇ、こちらはミーサ。私の恋人です」
鈍いマルクエンも、お姫様のミヌエットがお忍びで外に出ていることを察した。
「あ、あぁ、そうでしたね」
「お二人もデートですか?」
ヴィシソワが言うと、今度は顔を真っ赤にして怒るラミッタ。
「それでは、私達はこれで。お二人も楽しんで下さい」
ミヌエットがそう言って一礼し、人混みに消えると、ラミッタの声が戻った。
「ったく、何すんのよアイツ……」
「ははは、お二人も楽しみたいんだろう」
マルクエンは苦笑し、賑やかな街並みを見る。
「……。まぁいいわ。私達も何か食べましょう」
「そうだな」
屋台や菓子類の歩き売りがそこら中を埋め尽くしていた。
「なんかこう、脂っこいものが食べたい気分だな」
「あら、奇遇ね。私もだわ」
そうと決まればと二人は何か店を探す。
ふと、スパイスのいい匂いが漂ってきて、二人はそちらを見る。
「お、からあげか」
「良いんじゃないからあげ」
二人は釣られるがままにからあげを買い、歩きながら食べ始めた。
熱々のそれを噛みしめると、肉汁が溢れ、旨味が口いっぱいに広がる。
「どうしてこう、屋台のからあげは、より美味しく感じるんだろうな」
「それは同意ね」
マルクエンはこちらの世界に来て、からあげというものを知ったが、酒場でもよく頼むほど好物になっていた。
「あ、ビール売ってるわね」
喉が渇いたラミッタは、常温で売られている物よりも、キンキンに冷えたビールを選び、マルクエンはオレンジジュースを買う。
「はい、乾杯よ宿敵」
「あぁ!」
ラミッタはビールを一気に流し込んだ。苦みと炭酸のキレが染み渡る。
「はー!! やっぱ良いわねー」
からあげをつまみにしながら飲んでいたが、そろそろ無くなりそうだ。二人は別の目ぼしいものを探すことにした。
ぷらぷら歩いていると、香ばしい匂いがし、何だとマルクエンは見てみる。
「何だアレは?」
見つめる先では網の上で何か丸いものを炙っていた。
「あぁ、焼きおにぎりね」
「ヤキオニギリ?」
不思議そうにそれを見つめるマルクエン。
「オニギリってアレだろ? ライスボールの」
「えぇ、そうよ」
「焼くのか? 米を炊いて丸めて、その上で?」
「そう言われると手が込んだ料理ね」
ラミッタは適当に返しているが、マルクエンは興味津々だ。
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