満喫
「物は試しよ、買ってきなさい宿敵」
「あぁ、わかった!」
焼きおにぎりを買うためにマルクエンは列に並ぶ。段々と香ばしい匂いと共にパチパチと焼ける音が聞こえてきた。
「買ってきたぞラミッタ!」
キラキラした子どものような目でマルクエンは言う。
さっそく二人は仮設のテントで食べることにした。
「なぁ、ラミッタ。何でヤキオニギリは茶色なんだ?」
「東洋のソース。ショーユってのを塗って焼いているからよ」
「なるほどな。それじゃイタダキマス!」
マルクエンは焼きおにぎりを一口食べる。
香ばしい醤油の香りが鼻を抜け、しっかりとした塩味を感じた。
「むっ、美味いな」
「えぇ、そうね」
二つばかり焼きおにぎりを平らげ、次の獲物を探す。
「おっ、じゃがいものバター乗せ? じゃがバターなんてあるのか!」
じゃがいもと聞いて、ラミッタは少し嫌そうな顔をする。
「あまり好きじゃないのよね、じゃがいも」
「あれ? そうだったか?」
マルクエンは、今までじゃがいもを普通に食べていたラミッタを知っているので疑問に思う。
「えぇ、孤児院に居た頃はふかし芋ばっかり食べさせられていたから、ちょっと嫌なのよね」
「そうか……」
マルクエンはラミッタの過去を思い、なんと答えていいか言葉に迷った。
「でも……。そうね、食べてみるのも悪くないかもしれないわね」
「そうか? それじゃ買ってみるか」
購入したじゃがバターからは湯気に混じりバターの香りがする。
ラミッタはその溶けたバターが掛かったじゃがいもを一口食べた。
「……。まぁ、バターがあればじゃがいもも悪いものじゃないわね」
「そうか。それは良かった」
マルクエンはふっと笑って心からそう思う。
腹も満たされてきて、そろそろ甘いものが欲しくなってくる。
「あ、かき氷あるわよ」
「いいな、かき氷!」
マルクエン達の世界にも氷魔法を応用したアイスクリームやかき氷は存在していたので、懐かしい気持ちになった。
「いらっしゃい!」
威勢の良い店主が二人を出迎える。色鮮やかなシロップが並べられ、どれにするか迷う。
マルクエンはよしっと決めて指をさして言った。
「私はレモン味だ」
「それじゃ私はいちごで」
「あいよっ!」
魔法で作った氷をガリガリと削り、シロップが掛けられ、あっという間にかき氷が完成する。
二人は座ってシャクシャクとかき氷を食べた。
「うーん、美味いな」
「急いで食べると頭痛くなるわよ?」
ラミッタに言われた通り、マルクエンはキーンと頭痛に襲われる。
「うっ……」
「ほら、言わんこっちゃない」
そう言ってラミッタは笑いだした。
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