第17話 二日目の夜
仕事を終えた俺は、お金の入ったカバンを大事に抱えて、ルリアの家へと戻る。
近場を選んで正解だったと、痛む太腿を、拳でトントンと叩き、ほぐしながら感じた。
敷地に入ると、ペリが首をこちら向けて出迎えてくれる。
ただいまと声をかけると、フンッと鼻息を鳴らしてくれる。少しは仲良くなれているのだろうか……。
そんな事を思いつつ、扉を数回ノックすると、ルリアが扉の鍵を開けてくれる。
「おかえりぃー。オシゴトどうだったー?」
「楽しかったけど、流石に疲れたかな……、ヘトヘトだ」
「ご飯どうする?一応作っておいたけど」
「あー……、じゃあ少し頂こうかな。残ったら明日の朝食べるよ」
「オッケー。それじゃあ温め直しておくから、休んでていいよー。それか、水浴びでもしてくる?」
「いや、休んどこうかな」
そう言ってソファへそのまま体を預ける。ボフッという音をたてて、ソファからの心地よい反発を感じる。
自分が思っているよりも疲れが蓄積していたようで、すぐにまぶたが重たくなってくる。
流石にこのまま寝ると、食事を準備してくれたルリアに悪いと思い、顔を洗いに行くことにした。
水浴び場にある水を手で掬い、パシャリと顔にかける。
冷たい水が、意識を少しはっきりとさせる。
何度かそれを繰り返したところで、タオルで顔を拭いて、リビングへと戻る。
戻ってソファに再び腰をかけると、すぐにルリアが食事を持ってきてくれた。
「おまたせぇ。今日は、肉と野菜の炒め物と、ライスボールだよー」
胡麻のようなものがふられた丸いおむすびのようなものが出てくる。
この世界にもおむすびのようなものの概念はあるようで、少しほっとした。
「すぐ寝たいかな~って思ったから、少し少なめによそってるよぉ。足りなかったら言ってねー」
「今日はコレで充分だよ。ありがとうな」
「にひひ、それじゃあ召し上がれ」
「いただきます」
最初は変なやつと思ってばかりいたが、なんたかんだで面倒見のいいやつだなと思う。
本人は借りを作っているというが、実際どこまで本気なのかはわからない。
……本気だった時は恐ろしいが。
向こうがフランクにきてくれるおかげもあって、だいぶ気を許してしまっているようだ。自分の危機意識の無さにやや飽きれながら、おむすびと共に炒め物を口に流し混むようにして食した。
昨日の食事もそうだったが、ルリアの作る料理は美味しい。エリスさんの料理はもちろん美味しいがまさに店で出す料理といった感じで、ルリアの料理は優しい家庭料理という感じだ。
色んな意味でこの男は、女子力が高いようだ。あっという間に平らげた俺は、御馳走とルリアに伝え、食器を台所へと運んだ。
そしてそのまま、敷いてあるお布団へとダイブした。なんだか昨日よりもフカフカして太陽の香りがする。もしかすると、ルリアが干してくれたのかもしれない。
そんなことを考えていたが、襲い来る睡魔には勝てない。
「おやすみぃ、レイちゃん……。お疲れ様ぁ」
うっすらと何か聞こえた気がしたが、言葉としては頭に入っていかず、そのまま気分良く眠りについた。
そして、翌朝目覚めたとき、とある違和感に気づくことになる。
目を覚ますと、妙にスッキリとしている。
昨日あれほど疲れていたので、次の日まで疲れが残っていると思っていたが、そんなことはなく、痛くなっていた足や太ももも快調だった。
転生して、体が変わったからだろうか。理由は分からないが、何にせよ筋肉痛を想定していたため、この予想外の快調っぷりにはとりあえず喜んでおく事にする。
ルリアはまだ気持ちよさそうに、白くて細長い謎生物のマスコットを抱いて寝ている。ルリアが寝坊をしているという訳ではなく、まだ幾分と早い時間に俺が起きてしまったようだ。時計を見ると、まだ六時前。日も昇り始めたぐらいである。
色々な事を不思議に思いながらも、先日水浴びをしていない事を思い出し、ルリアが起きる前にと水浴び場へと向かう。昨日と寝ている間にかいた汗が流れ、冷たさが心地よかった。
そういえば、この世界には暖かい風呂はあるのだろうか。そんなことを考えながら、風呂場の椅子に腰掛けてぼーっとしていると、何やら入口の方からゴソゴソという音が聞こえてくる。
そして、風呂場の扉は開かれた。
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