第26話 新人研修


「なんかすごいですね……」


「はい……」


 探索を続けていると、不意に新人の2人がそう話始めた。


「何が?」


 そう聞いてみると彼らは答える。


「だって、俺等何にもしてないのにレベルが上がって行ってますよ」


「何にもしてないなんて事ないって、スキルを使ってるじゃないか」


「いや秀君、普通はモンスターと戦ってレベルを上げる物ですよ」


 まぁ、確かにそうだよな。

 俺が動画投稿だけでレベルアップできてるから感覚が麻痺してきてたかも。

 今は、炎魔剣をゼニクルスかリオンさんが振るう事で秋渡君のレベルを、傷を態と作ってそれをヒールする事で耶散ちゃんのレベルアップを図っている。

 2人とも俺のパーティーのメンバーだから、一応隊長である俺は二人を名前で呼ぶ事にした。リオンさんも名前呼びだったしね。


 まぁ、俺も探索者にとって技術は必要だと思う。

 けれど、レベルはそれ以上に必要だ。それで驕るのは如何な物かと思うが、それでも安全性やこれから先の探索を考えれば、彼ら二人は早急にレベルアップさせた方がいい。


「何れはモンスターとも戦って貰うさ。けど、命の危険はできるだけ排除した方が良いに決まってるし、効率だってできる限り上げた方がいいと思うんだよ」


「まぁ、それはそうですけど……」


「いや、俺も別に不満はないっす。速く強くなってギルドの役に立ちたいっす!」


「わ、私もです!」


「リオンさんの心配事って多分レベルアップによる身体能力障害でしょ? 大丈夫だよ、そこら辺のペースは考えてるから」


「まぁ、だったらいいですけど」


 俺たち探索者はレベルアップする事で身体能力が向上する。

 しかし、余りにも急激に身体能力が上がると制御能力に障害が発生する場合がある。

 だから、余りパワーレベリングというのは行われない。


 まぁ、俺の場合は強化率がゴミ過ぎてそんな障害の心配は無かったけど。


 けれど、治癒士はともかく剣士系に属する【炎剣士】は身体強化率が結構高い。

 だから、緩やかに何日かかけてレベルアップをする必要がある。


「レベルが12まで上がったら教えて、そしたら攻略は切り上げるから」


「了解っす」


 近接系クラスは1日でレベルを10以上上げない事を推奨されている。

 それがボーダーライン。まぁ、5レベル程度であれば上げても問題ないだろう。

 明日からも行けるところまでは1日5レベルのペースでレベリングしていく予定。




 探索を終えて、家に帰って来た。

 久しぶりにそこそこ多い人数で攻略した。

 いつもは、ゼニクルスと2人か、そこにリオンさんが加わって3人だ。

 今日は5人での探索だった。


「っていうかゼニクルス召喚した時めっちゃビビってたな」


「ちゃんと説明してから召喚してくだせぇよ。ワイ剣まで向けられたんでっせ?」


 まぁ、見た目プレデターだし仕方ない。


 今日早めに家に戻ったのは、レベリングが終わったからという理由もあるが、日本最大手ギルドである『千剣の盃』がスカイフォートレスへの攻略作戦を行う日だからだ。

 成功したにしても失敗したにしても、世間に何かしらの公表をするだろう。


 それも気になるし、俺のレベルがどれだけ上がるかも気になる。


 スカイフォートレスは日本に存在するダンジョンの中でも随一の難易度を誇る。

 当然そのダンジョン内に居るモンスターの経験値も多い。

 それが大量に投入され始めれば、俺のレベルも一気に上がる筈だ。


 今から楽しみで仕方ない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る