第25話 試戦
俺一人じゃ色んなダンジョンには行けない。
レベルが上がり、ゼニクルスを従えた事でCランク程度の魔物であれば、難なく倒す事ができるが、ゼニクルスの最高状態は金が掛かり過ぎるから、現実的に考えて仲間を増やす事は必須だった。
これから、彼らを大幅にレベルアップさせて一緒にダンジョンを攻略するパーティーになって貰う。
それが、今回新しく探索者を雇った理由だ。
ただ、2人のレベルはまだ5と7と低い。これをレベルアップさせるには相応の戦闘が必要だ。
それに試したい事もある。
炎剣士と治癒士の二人が今持つスキルは【炎魔剣】と【ヒール】だけだ。
ただ、例えば俺が鑑定で動画配信をしてレベルを上げている様に、2人も俺の補助、というかゼニクルスのだけど、をする事でレベリングができるかもしれない。
ダンジョンに入って現れたのはスライムだった。
懐かしいモンスターだ。俺が最初の動画をアップしたモンスターでもある。
「倉持君、ちょっと剣貸してくれる?」
「え、はい大丈夫っすけど」
倉持君の剣を借りて、俺がそれを使ってスライムを倒してみる。
「経験値入った?」
「え、いや入ってないっす」
なるほど。検証1、俺が剣を貸してもらって感謝しているだけでは経験値は分配されない。
「じゃあ、次だ」
俺は自分の腕をちょっとだけ傷つける。
「浜村さん、ヒールを」
「はい!」
ヒールをかけて貰って傷を治し、その状態で次のスライムを倒す。
「経験値分配された?」
「されました」
なるほど。これは世間に知られている通りだ。ダメージを回復職に治してもらう事で、治してもらった人が倒しても経験値が分配される。
「倉持君、炎魔剣って持続時間10秒だよね? その間は他の人に渡しても火は消えない」
「はいっす。あってるっすけど、なんで知ってるんすか?」
まぁ、鑑定でちょちょっと。
炎魔剣は、武器に炎を宿すスキルだ。
攻撃力が上がって火傷を負わせる事ができる。
「まぁまぁ。じゃあちょっとそれを使った状態で、その剣を俺に貸してくれない?」
「分かりました」
「あの、秀君は何をしてるんです?」
「ん、ちょっとした検証だよ」
俺が「動画配信でレベルアップしている」事は俺以外の誰も知らない。
誰にも言っていないからだ。鑑定が有用に思われるのはいいし、収納が有能と判断されてもいい。だが、この秘密だけは誰にも言えないと思っている。
少なくとも、はっきりした法則が分かるまでは。
炎魔剣のスキルが宿った剣で、炎が消える前にスライムを倒してみる。
「経験値は?」
「入ったっす……」
なるほどね。
スキルを使って支援している事がトリガーな訳か。
つまり、普通に鑑定紙とかを使って得た情報を公開しても多分経験値は分配されない。
だってそれが許されるなら、俺がレベルアップする前から情報が広まっているハズだ。
しかし、それが全く広まっていないという事は、それでは駄目な理由があるという事。
やっと分かった。
経験値が分配される条件。
それは『止めを指した人間に対して、何らかのスキルを用いて支援している』事だ。
まだ、確定ではないが9割以上の確率でそれが真実だと思う。
それ以外では、今の実験結果を証明できない。
剣を借りるだけでは経験値は分配されない。
けれど、スキルの宿った剣を借りた場合は経験値が分配された。
この結果が物語っている。
ただ、一応別の可能性、例えば支援を数値化した場合の決まった数値以上の支援をしなくてはいけないとか。
まぁ、支援量を数値化なんてできるものでも無いし、俺はスキルが使われた場合だと思う。
また違ったら考え直せばいいだけだしな。
「よし、だったらこの方法でガンガンレベルを上げて行こう」
魔力量が切れるまで、パワーレベリングしたらいい。
勿論、俺の戦闘能力は雑魚と呼ぶしかない性能なので、実際にやるのはゼニクルスとリオンさんだけど。
新宿ダンジョンのそうだな、今日は30階層くらいまで行ければ御の字かな。
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