第24話 新人探索者


『ギルドマスター、今日は新人探索者が来るので事務所に顔を出してください』


 清水さんからそんなメールが届き、時間も同様に送られて来た。

 まだ、ギルドマスターとか社長って呼ばれるのは慣れないな。


 言われた通り、朝9時に事務所にやってくると清水さんとリオンさんが居た。


「おはようございます社長」


「おはようございます秀君」


 2人の美人が俺に挨拶をしてくれた。斉藤さんは……編集中か。

 しかし、黒髪の年上美人と金髪の年下美人に挨拶されるのってなんかいいな。これだけでここに入りたいって探索者は多そうだ。

 まぁ、それを社風にする気は全く無いし、2人が仕事でやってるって事は分かってるけど。

 ただでさえ清水さんは、弁護士事務所の社長からセクハラまがいの事を受けていたらしいから浮ついた事はあんまり考えない方が良いよな。


 というか、今日は日曜か。

 リオンさんはバイトなので、学校が終わってからか休日しか活動できない。

 うちの会社は曜日とかの概念が曖昧で、毎週二日好きな曜日に休む事ができる。それを来週に持ち越して来週四日休むとかも予め言っておけば可能らしい。


 まぁ、俺は毎日ダンジョンに行ってるが。

 俺のやってる事と俺以外がやってる業務がかけ離れ過ぎてて、一緒にやるって事は殆ど無い。

 ただ、新たに探索者が入って来るなら、俺とたまにリオンさんの2人でやってきた探索も少しは楽しくなるかもしれない。


「それじゃあ、新入社員が待ってますので案内しますね」


「あの、採用面接とかってしないんですか?」


「え、私とリオンさんでしましたけど社長やりたかったですか?」


「いや、大丈夫です……」


 やりたかったかと聞かれたらやってみたかった。

 特に聞きたい質問とかは無いけど、なんか偉そうにするだけしてみたい、みたいな。

 いや、パワハラ紛いの事とかをする気は無いけどね。社長っぽさをね。


「ふふ……あ、失礼しました」


「落ち込んでるのバレバレですよ秀君? 次は一緒にやりましょうね」


 年下に気を遣われてしまった。まぁ、一、二歳の差だけど。


 そんな事を話していると、探索者の2人が待っているという第二会議室に通された。

 今日はそれほど人数も居ないし、広い第一ではなく第二会議室なのだろう。10名ほどまでしか入れない小さめの会議室だ。


「あの、今日からここで働かせて貰うっす倉持くらもち秋渡あきとっす。よろしくお願いします」


「私も今日から働かせてもらいます浜村はまむら耶散やちるです。よろしくお願いします」


 俺より若い男女2人組。

 男の子の方、倉持秋渡君は活発そうな印象を受ける子で剣を持っている。

 クラスは【炎剣士】、何ができるのかは分からないけどぽいっちゃぽい感じのクラスだ。


 女の子の方の浜村耶散さんは逆に大人しそうな女の子だ。

 武器は紫の宝石のついた杖を持っている。

 クラスは【治癒士】。人気職じゃないか、良くうちに来てくれたな。


 両方歳は18歳。

 多分だけど気を遣って社長の俺より年上は雇わないでくれたんだろう。

 まぁ、一緒に探索する相手だしその方が有難いけど。


「あの、俺社長の動画見て入るの決めたんです。めっちゃ良くて実際相当助かりました!」


「私も、鑑定の動画が無かったら探索者なんて成れなかったと思います」


 おぉ、こんな所にリスナーが二人も。というかこんな新設のギルドに応募してくるのはそりゃ動画見た人ばっかりだよな。

 いや、俺も有名になった物だ。そろそろスカイフォートレスの本格的な攻略も開始されるってニュースでやってたし、我がチャンネルの人気はうなぎ登りだ。


「ありがとう。あの動画がちょっとでも役に立ってるなら嬉しいよ」


 ちょっとどころじゃないです、と2人とも褒めてくれたが実際最後は実力とか努力が物を言うのだと俺は思う。

 だって、俺の動画なんて見なくてもA級やB級の探索者になってる人は沢山いるのだから。


「社長、既に2人には業務内容は伝えています」


「分かりました。じゃあ、早速ダンジョンに行ってみようか」


「うす!」


「よろしくお願いします!」

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