第22話 アナライズアーツ
事務所を借りる事にした。
そこまで大所帯という訳でも無いが、編集部屋も欲しいという事だったのでマンションのワンフロアを貸しきる形。
金が湯水のごとく消えて行ってる。まぁ、増える量も湯水の如くなのだが。
ダークエルフの動画はたった3分程度の動画時間なのに既に300万再生を突破。
それ以外も、やはりBランクモンスターの情報はかなり多く再生されている。
社名は『アナライズアーツ』となった。結構似合っていると思う。
探索者の方はまだだが、編集者の方は五人程集まった。そのチームは斉藤さんが取り仕切っているらしいが、自分より歴の長い人もいるから緊張すると言っていた。
とりあえず、斉藤さんと清水さんの給料が35万。
編集者の人の給料が25万にしておいた。
これは清水さんと斉藤さんが殆ど決めてくれた。本当に俺はサインしただけ。
けど2人のやることに間違いはないだろうし、俺が加わっても間違える物は間違えるのだから変な事はしないのが正解な気がする。
清水さんは個人の弁護士になったが、直ぐにうちの会社に雇い入れた。
完全な専任になって貰った方が色々都合が良いし。実際普通の顧問弁護士じゃやらないような仕事も結構やって貰ってるから。給料はそういう訳で多めに設定した。
まぁ、弁護士の月給を考えたらまだ低いんだろうけど一年目だし、弁護士職ってより事務職として雇い入れだから、金額はこれでいいと清水さん自身が決めた事だ。
口出しはしまい。
ただ、こんなに状況が変わったと言っても俺の仕事はそれほど変わっていない。
ダンジョンに入って動画を回す。それを編集者の人に渡してアップしてもらう。
動画投稿サイトの管理も丸投げしたから、俺がするのは本当にそれだけだ。
斉藤さんからも社長はそっちに専念して下さいと言われた。
「ってことで、来いゼニクルス」
「ちょっと久しぶりですね旦那!」
「そうだな。なぁ、最高出力って時給幾らなんだ?」
「全開にするなら100万ってとこですかね」
「流石Aランクってとこか?」
今俺たちが居るのは新宿ダンジョン60階層。
この迷宮の30、60、90階層の拠点には転移魔法陣が存在し入り口から転移する事ができる。
まえは動画撮影しなきゃだったから普通に降りたけど、60階層までのモンスターはほぼコンプリートしたので今回は転移してきた。
「でも、なんでそんな事を?」
「一度、全力を見ておきたいと思ってな」
ダークエルフを討伐する時こいつの戦力は必要だ。
そして、その時は確実に最大戦力を発揮させる。
先んじてそれを知っておくことは必要だ。鑑定で一応見てはいるが、それでも実際に目にするのとではやはり違う。
値段は高いが、その程度なら今の俺の日給にも価しない。
動画利益は会社10%の俺90%にするとか言ってたから。会社に金を貯蓄していると税金対策にならないから、俺が貰っておいた方が良いとの事だった。
残りの10%でも経費や人件費は余裕で賄えるとの事だった。
「まぁ、ワイにとっては嬉しい話でっしゃ」
なんでちょっと関西被れなんだろうこいつ。
まぁいいか。
「それじゃあ、一時間百万だ」
そう言った瞬間、ゼニクルスの身体が闇に包まれ姿が変化していった。
イケメンになりやがった。高身長で北欧系の顔つきのイケメン。銀髪で尖った八重歯と耳。
「お前、もしかしてヴァンパイアとか?」
「私は精霊だよ主。ただ元の姿に戻っただけだ」
「なんで、喋り方まで変わるんだよ……」
「この世界にもあるだろう? 神に疎まれ醜い獣の姿に変えられた呪いの生き物という奴だ。そして、私の種族はヴァンパイアではなく、天使、いや堕天使という事になるだろうか?」
そう言った瞬間、ゼニクルスの背後に黒い羽毛の翼がバサっと開かれた。
「まぁ設定はどうでもいいや。強さを見せてくれ」
ダークエルフに生半可な戦力は意味が無い。
だから、精鋭チームで挑む必要がある。その中にこいつは入れるのか、それを見極める。
「主……?」
「なんだ?」
「一時的にとはいえ、この姿に戻らせてくれた事感謝する。そして、その感謝は言葉ではなく我が全霊で証明しよう」
ゼニクルスの手に闇の魔法球が出現した。
「闇の権能、それは世界を司る英知の力。我が世界を直接その手で操る力。
魔法名なのだろうか、それを唱えた瞬間ゼニクルスの姿が掻き消えた。
「え?」
おま、俺を置いていくとか何考えてんだ。
『レベルが1上昇しました』
『レベルが1上昇しました』
『レベルが1上昇しました』
と、連続でレベルアップ音が響く。
は? 85以上に上がった今の俺はそう簡単に上がらない。それこそBランクを10体程度ソロ討伐する位じゃないと……
このタイミングでの三連続レベルアップって事は、十中八九ゼニクルスが何かしてる。
数分、本当にそれほどの時間でゼニクルスは戻って来た。
「主、この階層の全モンスター及びここから五階層下までの全てのモンスターの始末は完了致しました」
「えぇ…… 一応聞くけどどうやって?」
「『魔力探知』で敵の位置を把握、『次元斬』でその位置を攻撃しました。ただ、未熟者故に次元斬は同一階層の敵にしか射程が届きませんでしたので『転移』を使い階層を移動して下の階層の敵も始末して参りました。勿論、主と同一の種族の魔力反応には一切攻撃しておりません」
いや、言ってる事は理解できる。
理解できるが受け入れに時間が掛かる。
バグだろこいつ。いや、A級ってこういう物なのか? 確かにダークエルフもゼニクルスとは違う意味ではあるが圧倒的ではあった。
いや、しかしこの戦力は間違いなくダークエルフ討伐の役に立つ。
「けどだな」
「主?」
「お前、多分だけど他人が戦ってる最中の敵も倒しただろ?」
「え、ダメでしたか?」
捨てられた子犬みたいな目をするんじゃない。
「はぁ、次からは気を付けてくれ」
「畏まりました!」
それは探索者として立派にルール違反だ。
他人の獲物を奪ったのだからな。
後、素材が全く回収できない。俺の利益は動画収益と素材の売却金だ。だからそれが無いと困る。
―――
ゼニクルス
ランクA
魔力ランクA
身体ランクA
スキル【鑑定】【闇魔法】【空間魔法】【金貨の呪縛】
―――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます