第19話 顧問弁護士
斉藤さんに言われた通り、弁護士を探してみる事にした。
弁護士を雇用するのに必要なのは平均月給が5万程度って事が分かったけど、こう言うのには金をかけた方が良いと思ったから金に糸目を付けずに優秀さを重視して雇う事にした。
それに俺の場合は動画配信も業務に入るのでそっちにも詳しい人が良い。
東京で1、2を争うほどの大手事務所が有ったのでそこに電話してみる。
事情を説明すると、一度事務所の方に来て欲しいとのことだったのでやって来た。
受付で名前を名乗ると、奥へ通される。
そこには2人の弁護士バッジを付けた男女が居た。
「こんにちは天空秀です」
扉を開け、部屋に入った俺が挨拶すると、二人もそれに返す。
「
「同じく弁護士の
そう言って2人の名刺を渡された。
なんかすごいな、そして名刺なくてごめんなさい。
「どうぞこちらへ」
そう言って、二人掛けのソファを指示してもらったのでそこに腰かけた。
「さて、本日は顧問弁護士の雇用という事でしたが、どういった内容の業務なのかご説明頂いてもよろしいでしょうか?」
俺は自分の能力、つまり鑑定の事とチャンネルの事を説明していく。
先月の動画の広告費は一千万を超えたから、そろそろ起業した方がいいと知り合いに勧められているので起業したって事。
それに伴って顧問弁護士を雇いたいって話。
ただ、これは電話でもしてた話だ。
けれど今は実際のチャンネルを見せたり、収益状況の確認を兼ねた実際の数字の話も交えている。
少し話すと北壁さんは嬉しそうに頷いて、隣の清水さんを指す。
「それでしたらこちらの清水が適任でしょう。勿論、詳細な話を聞いてから決めて貰って構いません。頼むよ清水君」
「はい社長」
そう言って北壁さんは退室していった。
「では、暫定ではありますが天空様の担当弁護士としてご助言を幾つかさせて頂きます。もしもその話を聞いて、私が顧問弁護士に相応しいと思って頂けたのであれば契約書にサインして頂けると嬉しいです」
なるほど、先に相談を聞いてから決めていいのか。
良心的な感じがする。
「ただ、秘密保持契約をしなければならないので外部に漏らせない情報は今は私にお話になられないのが賢明ですわ」
「わ、わかりました」
そんな情報ほぼないっていうか、何が話したらダメな情報なのかも良く分からない。
そんな状態で始まった相談だった、彼女は俺に親身になって話を聞いてくれた。
俺のやりたい事を理解した上で、それを行う具体的な方策を提案してくれている。
アタリって感じだ。
その日はとりあえず契約はせず相談だけに留めた。
清水さんが言うにも、色んな事務所に相談してみて最も自分の見ているビジョンに近い支援をしてくれる人を雇った方が良いという事だったので従った形だ。
俺はこの人に決めてもいいかとも思ったけど、だからこそこの人の話をちゃんと聞く事にした。
色々回ってみよう。
そう思って一週間程探したが、やはり彼女以上に俺に適したアドバイスをしてくれた弁護士は居なかった。
何よりも、他の弁護士たちは金の話ばっかりしてて嫌になった。勿論金は大事かもしれないが、俺がしたいのは今ある物を守る事じゃなくて、レベルアップして強さを磨き、桁の違う額を稼いで、楓の病を治す事だ。
だから、それを一番に考えてくれた清水さんがいいと思った。
それで二回目の大可事務所での会議。
「私でいいのですか?」
「はい、清水さんがいいと思いました」
「……分かりました」
少し影が差したような表情をした清水さんだったが、それでも俺の言葉に頷いてくれた。
「それで、起業するという事は株を所得するという事です。株は全て社長が保有するという事でよろしいですね。共同経営という訳でも無さそうですし」
「あぁ、それって
俺に起業を勧めてくれたあの人に、全く株を渡さないのは流石に不義理なような気がしたから俺はそう言った。
「な、なるほど。ではその方に5%……いえ30%程お渡しになられたらどうでしょうか。その方もお喜びになると思いますよ」
「そういうものですか?」
「はい。過半数は社長が持っている必要がありますが、30%程度なら他人が持っていても問題は無いでしょう」
「なるほど……」
そんな感じで会議は進行していった。
■
「どうだい清水君、あの彼は」
「はい社長。法律や起業の構造関係に疎く、それでいて感情を優先するような性格をしています」
「そうか良い話だ。それで、株の過半数をこちらに渡させる事は可能か?」
「こちらの息の掛かった人間を紹介しようと思います。天空様には彼に数十%の株を売ってもらい、他の株主と合わせて過半数を獲得します」
「ふむ、指示通りだね。今回は上手くいきそうだ。君は本当に使えない部下だったが、この件が上手くいけば今までのミスを全て帳消しにしてあげよう」
「はい……」
清水咲楽の名前は、母親に「咲くように笑える子に育って欲しい」という思いを籠めて付けられた物だった。
けれど今の彼女の心は、ずっと泣いている。
ずっと、社長に守るべき対象を傷付けるような指示を出されて来た。
けれど、彼女は入社以来その全てをミスしている。
だから、この件が失敗すればきっと事務所をクビになる。
「あの、残り70%の内30%程をとある人物に売るのはどうでしょうか?」
「え、でも過半数は俺が持ってるべきって」
「そうですが、ギルドを経営する上では他の方と分けていた方が円滑に回る事が殆どです。私がいい経営経験者を紹介しましょう」
「いや、いいです」
彼の言葉を聞いて、清水咲楽はほっとした。
これで、彼を不幸にしなくていいと。
「30%は貴方に渡したいです。それが一番安全そうなので」
天空秀は咲くような笑みで、清水咲楽へそう言った。
「何故、二度三度しか会った事の無い私をそこまで信用されるのですか?」
「俺、自分の目には自信があるので」
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