第15話 得た物と失った物


 泊りがけでダンジョンに潜った遠征は結局攻略まで行かなかった。

 しかし、成果という意味では最低ラインの目標であるダンジョンの入り口への施設建設から、内部5階層への中間セーフゾーンの設立。

 今も、鮮血の偶像のギルドメンバーが物資の運搬や増設の工事を行っている最中だろう。


 何よりも大きいのは、迷宮主を見て帰って来たという事だ。

 俺の鑑定によって得られたステータス情報を始めとしたモンスターの特性や、スキル効果も迷宮主の物も含めて得る事ができた。


 ただ、そんな様々な成果と共に失った物も当然ある。

 3名の鮮血の偶像のギルドメンバーだ。持ち帰った成果を考えればプラスと言えるだろうが、当の本人たちと一緒に探索した身としては思う所がない訳もない。


 そしてこれらは、鮮血の偶像ひいては人類にとって得られた成果である。


 あとは俺個人の成果というか報酬に関してだ。


 A級ダンジョンである『スカイフォートレス』に拠点が完成しだい一般の探索者もそのダンジョンに侵入する事が可能となる。

 空中に存在する以上、ギルド単位での探索がメインとなるだろうし、海外に移動した場合は日本の探索者では簡単に挑めなくなる。


 当然バイト代もでた。

 黒峰静香からは本来日給15万だったハズのバイト代を、日給50万。つまり合計100万の給料をもらってしまった。

 なんなら俺とリオンさんはギルドに入らないかと誘われたが、人が3人死んだという事実から俺もリオンさんも直ぐには答えは出せなかった。


 一応連絡先を交換した。黒峰静香とリオンさんとも。


 で、それは最もではない成果の方だ。

 実は探索の途中から、俺はチョーカー型のカメラの電源を入れて録画を取っていた。

 これは黒峰静香に許可を取っての事だ。


 動画公開は一度編集を済ませた後、彼女のチェックを行った後であれば投稿しても良いと言う事だった。


 スカイフォートレスで出会ったモンスターは『ダークエルフ』を含めて57種。

 つまり、57本の動画を作成する事ができる。


 本来であればバイト代で、そこそこのパソコンを買って編集してから上げようと思っていたが、バイト代が思ったよりも高かったからプロを雇う事にした。

 SNSを使ってダンジョン系の動画編集を請け負っている人を探し、良いと思った編集のサンプルを公開している人にお願いしてみた。


 多少お金はかかっても良いから信用が高い人を雇用する事にする。

 契約書も書いてもらえるという事だったから、それを承諾して元動画を送信する。


 100万全て使って20本。

 一本5万で編集して貰った。戦闘映像だけの動画で、周りの人間はモザイクで声もできるだけ入らない様に。

 別紙の鑑定結果を編集で画面上に表示する。


 これを守って、できるだけ解説動画として分かり易さを心掛けてって感じで注文した。


 3日程で一本目が送られてきた、それから一日一本のペースで完成動画が送られてきた。

 それを黒峰静香に一度見せ、オッケーが出たら投稿サイトにアップロードしていく。


 『【新A級ダンジョン】ワイバーン解説!【スカイフォートレス】』


 みたいな感じで一日一本でアップロードしていく。

 再生は僅か1時間で万を超え、1日目には10万に到達した。


 経験値は即座に入ってきたりはしなかったが、これなら収益化も近いだろう。

 登録者数も一気に爆増している。


 スカイフォートレスは、行く事自体が難しいダンジョンだからまだワイバーンを始めとしたモンスターの討伐経験値は入らないだろうが、それでももし大手ギルドが俺の動画を参考にしてくれたりしたら経験値の方も大量に手に入るだろう。


 いまの人類最高レベルは100前後だったハズ。

 そこまで到達してやる。そしてあのダークエルフは、絶対倒す。

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