第1章 出会い、歩み編

第1話 能力者

 ある日人類は異能に目覚めた。その時は唐突に訪れたのだ。

 世界各地で同時刻にオーロラらしき光が出現した。それを認識した人間達は異能…即ち超能力或いは魔法…と呼ばれる力を得た。

 各国がその対応に手間取っている間には起こった。

 異界からの侵略、或いは地球外生命体…怪物、様々な言い方はあるが、日本では妖怪、鬼…等と呼ばれていた。

 そんな化物が人類を襲って来たのだ。奴等は何処から来たのかもどうやって生まれるかも不明だ。…幾つかわかった事もある。それは

1つ、奴等は人類の敵である。

1つ、奴等に意志疎通は不可能である。

1つ、奴等に科学兵器は効かない。

1つ、奴等に対抗するには能力が必要である。

 これぐらいしかわかっていない。


 各国はその異形の化物達に対抗する為の組織を作り、育成する機関を作った。

 そして我が国は、都市丸々1つを能力者育成の為に作ったのだ。


 とはいえ…俺の能力は大した事の無い力だ。使役型…そう呼ばれる能力で、精霊や動物、式神等を操る力だ。

 俺は精々意志の無い式神を使役する程度だ。力の強い奴だと動物を使役したり、意志のある精霊と契約したりするが…精霊と契約出来る奴は稀だ。現に今、精霊と契約している人間は世界に4人だけらしい。



「刀夜、まだそんな所に居たの?早くしないと入学式に遅れるよ?」

「…ああ、今行くよ」

 藤嶺刀夜ふじみねとうやそれが俺の名前だ。そして今、俺を呼んだのが篠原夏希しのはらなつき。俺の幼馴染だ。

 

 両親は俺が小さい頃に死んだ。化物に殺されたのだ。

 別に化物に殺されるなんて珍しい事でもない。ましてや化物と戦っているならな。俺の両親もそうだった。

 そして俺は両親の友人だった篠原家に引き取られたのだ。

 夏希は幼馴染であり、妹の様な存在だ(夏希は自分が姉だと思っている)


「はぁ…俺は、一般科に入りたいんだがな」

 一般科…とは、非能力者や力の弱い能力者が行く学校だ。所謂普通の学校だ。そもそも能力者の割合だって全体の3割程だ。残りの7割の人間は非能力者だ。更にそこから俺の様な低い能力者を省けば…全体の2割程度に落ち込む。その程度の数だ。

 能力者だから特別…なんて事はない。能力で犯罪を犯せば通常よりも重い罪になる。等、様々な制限が課せられる。

 それは昔に能力者共が暴れ回ったツケだ。


「まだそんな事言ってるの?刀夜は藤嶺家の当主でしょ?そんなんでどうするの?」

「当主って言っても、他に居ないだけだろ?それに俺の力の強さは知ってるだろ?」

 藤嶺家…代々能力者の家系だったらしい。日本にも古くからある陰陽師とか、寺とかなんかそういう感じの家系だったらしいが、詳しくは知らない。何せ藤嶺家にはもう俺しか居ないのだから。


 世界には…魔女、魔術師やシャーマン…陰陽師や巫女、超能力者。そういう者は昔から存在していた。その力を今、多くの人が得たのだ。


「刀夜は…悔しくないの?」

「別に、事実だからな」 

 俺は中学で能力者達に馬鹿にされていた。理由は力が弱いから


「俺には力も才能も無い。この母さんの形見すら抜けないんだから」

 俺の母が使っていた2振りの刀。俺はそれを抜く事すら出来ないでいた。

 この刀は所謂霊刀…まぁ力が宿っている刀だ。使うには使い手にも一定以上の実力が必要不可欠だ。


「刀夜…」

「人は相応の生き方をするべきだ。不相応な事をすれば…直ぐに死ぬだけだ。」

「…」

 化物と戦う?馬鹿げている。俺の様な自分の身すら守れない奴が?ただの奴等の餌になるだけだ。

 ならば…平穏に、その他大勢と同じ様に生きるしか無いだろ。

 


 

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