第5話 魂を捧げる理由
神父に言われた通り
「これから君は化け物たちや九人の王たちと戦うんだけど、彼らも当然君と同じ不死の存在だ。だから、魂魄収穫が必要になってくる。彼らを倒した後、魂魄収穫を使うことで魂を回収すると、復活を阻止することができるんだ」
神父によると、この世界にいる者たちは彼と同じように死んだとしても蘇るらしく、普通の手段では殺し切ることは不可能であるそうだ。
だが、相手を殺した後、魂を奪い取ることで復活を阻止することが可能のようだ。
そのため、神父は彼に魂魄収穫を彼に思い出させたのだった。
この世界に巣食う者たちのトドメの刺し方を彼に説明した後、
「そして、君は魂を回収すればするほど本来の力に近づいていくよ。いわゆる強化というやつだね。まあ、今の君ではいくら魂を収集しても本来の力には遠く及ばないけど。それでも集めた方がいいよ。この地を統べる王たちは強いから」
神父は彼は魂を回収すればするほど強化されていくことを話した。
どうやら、彼はどう言う原理かは不明であるが、相手から魂を奪えば奪うほど自分が強化されていくそうだ。
しかし、魂を収集して自分を強化するとしても上限があるらしく、いくら魂を収集したとしても本来の力には遠く及ばないとのことである。
それでも魂を集めて自分を強化することを神父は勧めた。
何故なら、これから彼が戦っていく相手である九人の王たちや化け物はとても強いのに加え、今の彼はとても弱いからだ。
そうして、神父は彼に魂を集める利点を説明した後、再び何かの本を取り出し、どこかのページを開くと、再びそのページが光り始めた。
そして、神父の持っている本から何かが浮かび上がった。
それは何かの木のようであった。
「この木は生命の樹と言ったね、君が魂魄収穫で集めた魂を魂魄解放でこの樹に捧げてほしいんだ」
そして、神父はこの生命の樹に集めた魂を捧げてほしいと言った後、生命の樹について話し始めた。
この生命の樹はその名の通り生命を育む樹であるそうだ。
本来であれば、この樹は輪廻の輪に戻った死した者の魂を集め、終焉の後に始まる新たな世界を育み始める。
しかし、世界の秩序が崩壊したことで死した者の魂は輪廻の輪に戻らず、死した者は再び現世で蘇る。
そのため、生命の樹は新たな世界を育むことが叶わず、このまま終焉を迎えたとしても新たな世界は始まらず、虚無の世界へと成り果てる。
そのことを阻止するためにも神父は回収した魂を各地に芽吹いている生命の樹の苗木に捧げてほしいようだ。
そして、神父は続けるように、
「君は魂を生命の樹に捧げたらその分強化された力が弱体化してしまうのではないかと考えているね?まあ、君の考え通り弱体化してしまうね。普通ならば」
彼が考えていたことを言い当て、その考えは正しいと肯定した。
彼は生命の樹に魂を捧げることにそこまで乗り気ではなかった。
何故なら、彼が魂を集めることで自分の力を強化することが出来るならば、その逆も然り、魂を失うと力が弱体化してしまうのではないかと考えていたからだ。
そして、この考えは神父によって肯定された。
そのため、生命の樹に魂を捧げてしまった場合、彼はその分のバフが消えてしまい、素の身体能力に戻ってしまうことが確定した。
だが、神父は最後に含みのあることを言った。
彼がその言葉に違和感を感じていると、
「さっきも言ったけど、君は世界の救世主だ。だから、君は生命の樹からの祝福を受けることができるんだよ」
神父がその違和感の解答として、彼が生命の樹から祝福を受けられると話した。
神父の説明によると、彼は世界の救世主であることから、本来新たに生まれる生命以外に祝福を授けない生命の樹から特別に祝福を受けることができるそうだ。
この生命の樹からの祝福を受けると、魂を集めた時と同じように全ての能力を引き上がる。
それも永続的にだ。
そして、生命の樹からの祝福は魂を捧げれば捧げるほど強くなっていくのに加え、魂を集めた場合と比較してもその強化倍率はさほど変わらない。
この情報だけでも生命の樹に魂を捧げるだけのメリットがあることが分かるのだが、神父は追い打ちをかけるように新たな情報を彼に伝える。
「それに、魂を集めたとしても一回死んだら集めた魂はこの世界に解き放たれてしまうしね。そうなったら全ての努力が無駄になってしまうけど、生命の樹の祝福は何回死んだとしてもその効力は消えないよ。だから、普通に生命の樹に魂を捧げた方がお得だね」
神父は彼に魂をいくら集めたとしても途中で死んでしまった場合、その魂は世界に解き放たれてしまい、再び魂を最初から集め直さなければならないことを話した。
どうやら、一度死んでしまった場合、集めた魂は魂魄解放を使わなくても勝手に解き放たれてしまうようだ。
そして、魂が解き放たれてしまうと、神父の言う通りせっかく魂を集めて自分のことを強化しても水の泡となってしまう。
そのため、彼は魂を集めたらしっかり生命の樹に捧げることにしたのだった。
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