第20話 11月20日「世界こどもの日」
私は商店街、吉祥寺サンロードの奥を見据えながらとろとろと進んだ。
この商店街は平日であっても老若男女多くが行き交う。大学生や子供連れ、淑女やご高齢夫婦まで。店も古風なものからティーン向けのものまで、本当に幅が広い。また年代だけで無く、流行りのデザートから謎解きゲームまで、ジャンルも多彩な所も素晴らしい。
この商店街に限らずの事ではあるけれど、路地裏に挑めば何かしらの嬉しい出会いがある。この前も、クレープ屋さんにホイップ多めのサービスをして貰える出会いがあった。その前には可愛い靴がセールになってたり、おばあちゃんから柿を貰ったり、なのである。
そんなにぽんぽんと良い事なんて……と思う方には、是非とも挑む事をお勧めしたい。きっとそのうち、病みつきになるだろうから。
そう言った点では子供達の方が果断ではある。目の前の子供連れの奥様方から逃げ出した低学年位の子供達が、綺麗なコーナリングを見せつけながら路地へと消えていく。その路地裏には何があるのか、私は知らない。
子供を見つめる奥様方の目線が横顔から覗く。その奥様方の中にある「女」という煌めきに、私は跡形も無く消されてしまいそうになった。
何事も、己には無いという事を突きつけられる時が一番辛いものだと、私は思う。性別でそれを手に入れていても、中身が充満しないのだ、私の中の「女」というものが。
子供達が帰ってきてお母さん達の手を引く。「女」は、相対される者によって音を変える、凄まじい生命力を持っている。
まあ、いつかは私も「女」になるんじゃない?と、呑気に空気を飲んで口笛を吹いてみた。
口笛を吹く女は、良い女だと、どこかで聞いた事があるから。
まだ月曜日だというのに、何だか慌ただしいものが上から迫ってくる様な風。アーケードも、私につられているのだろうと、そう思いたくなった。
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