第8話 10月括り「ハロウィンの日」


 こうして10月という今日を歩いて、私は陽を傾かせた。

 

 一度、こんな具合に趣の浮き木をぽんぽんと行き着くまで行ってみたかったのだ。そこにどれがどうなどと、無粋な意や線は無い。

 

 いやはや、人間はそこに生きる事が多くて疲れてしまわないかと心配になる。その香りを纏えない私は疾うに心の矛先を変えて、一本の棒となって悠々であったりする。

 

 こんなにも素晴らしい世界。音楽も色も溢れる部屋の鍵を持っているのなら、魂とそこでくるくると回れば良いのに。への字の口ばかりがまとわりつくなら、逆への字で追い返しちゃえばいい。

 

 私の世界は、私の中にも近くにも無くて、どこにも無い。常に無いから、もう何にも囚われないで、好きな所に点を置いて、そこで謳ってを繰り返す。そうして作った私の世界だったものを置き去りにして、また何も持たずにまた「私の世界が無い」今に生きる。

 心を私の世界に執着させない、それほど大事なステップは存在しないとさえ思える。間違えたって良いんだから、貴方も気楽に好きにすれば良い、と唱えたら風が強く吹き抜けた。

 

 「誰かの好み」は体に毒だからやめた方がいい。

 「意味が無い」は何もかもをまっさらにする魔法。

 「私の世界が無い」は風にも陽にもなれるという事。

 そんな感じに空気の軽い所で私は生きている。

 

 

 今年のハロウィンはお菓子や仮装なんてありきたりに浸らせないで、聖人前夜をコーラで祝おうと、藍の果てにある闇を見て思った。

 

 出来たばかりの片雲が、藍に取り込まれていく。

 この世界のどこかに、目を染める人が居るかもと思えて、SNSで片雲をフォローした。

 

 

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