第7話 10月30日「香りの記念日」


 お腹を満たしてばかりの私は、慎重な一時に悩みを真ん中へ置いて歩いた。

 思考の両端を、グラデーションの縁が濃い方に伸ばし進む。そうすると酷く黒い思慮の部屋に入り込める。

 片方の部屋には「私の夢」と書かれた台座、もう片方には、穴抜けがひけらかされた「社会」という名の絵画が展示されている。絵画が既に燃え焦げた様に黒くざらついているのは、今になって始まった事では無かった。

 光に後れを取った私は、そのどちらもを拝めずにただ所在だけを前にして、部屋を去るしかなかった。

 

 私の後ろから、崩れかけの石壁がじりじりと迫って来るのがわかる。

 そうして私は、崩れの良し悪しに関わらず、熱くなる頭を用いて、ただ何をすべきかをいつも考え、行動する。

 

 学事に干渉、その次は仕事に将来と、どうにも急かされる世の中に、飽きないのは人間の性と決めつけた。ぺちゃんこテディベアを渦中の頼み綱として握りしめて。

 

 オレンジ色の閃光を弱める様に、緑の香りが充満しているのを見て、土手に挑んでみる。

 

 今日に何も無い事が罪深いと、オレンジが睨んでいる気がして仕方が無かった。

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