愚痴る男

「…そうだったのかい。」


 思いもよらぬ恋バナに、ついつい話し込んでしまった三人。

 んで、オレがバツイチという話をしたところで、急に湿っぽくなってしまった。


 おじさんは小腹が足りなかったのか、焼きおにぎりを肴に熱燗の芋焼酎を手にしている。

 オレも、焼きおにぎりを肴に熱燗の芋焼酎を手にしている。


 ちなみに、おにぎりの具はねぎ味噌肉!

 甘辛い味噌にネギの風味と牛肉のコクがご飯を捕まえて離さない。

 そして、喉越しと鼻を抜ける独特の風味を放つ芋焼酎。

 下手な煮込み料理じゃ敵わない、深く酷のあるシメ料理…である。


「で?分かれた理由は性格の不一致かい?」

 おじさんの質問にオレは首を横に振る。


「浮気かしら?」

 女将さんが茶目っ気混じりで質問するが、オレは首を横に振る。


 しばしの間が空き、オレは焦らされて答える。

「行き違いだったんです。」


「「行き違い?」」

 おじさんと女将さんが同時に首を捻る。


「高校時代からの付き合いで…。

 大学に入ってから正式に交際を始めて…。」

 オレの話を聞きながら、おじさんは目をつむり、女将さんは洗い物に手を伸ばしている。


「二人とも就職を機に何となく結婚して…。

 でも、お互いが仕事にかまけてしまって、気がついたらお互いを遠くに感じてしまうようになって…。」

 女将さんの洗い物の手が止まった。


「だったら、別れよう…って。」

 オレは熱燗を一口飲む。


「で、今はどうなんだい?」

 おじさんが目を瞑ったままオレに聞いてくる。

 女将さんもこちらに視線を向けてくる。


「正直、よく分かりません。

 でも、彼女の事は気になってます…。

 ははは…、未練がましいでしょ?」


 おじさんは大きくため息をつき熱燗の残りを一気に煽ると


「その後悔は、キミを生かす一つの部品。

 しかし、取り返しが付きそうな後悔かもしれない。」


 オレを諭すおじさんの目は優しかった。



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 というわけで、蜂蜜ひみつさんの企画に乗っかりました(笑


【『参考文献

  蜂蜜ひみつ

  てんとれないうらない

 第97話 その後悔は キミを 生かす 一つの部品 9点

  作者了承済み』】

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