暖簾をくぐれば

「いらっしゃいませ~。」

暖簾ノレンをくぐると、景気の良い女性の声が聞こえる。


カウンター四席の右端に陣取り、右肘をカウンターに置き、斜めに構える。

「オススメをお願いできますか?」

「はぁ~~い。」


突き出しは『板わさ』、お供をするのは蕎麦焼酎。

コップの口を軽く啜り、板わさを一切れ口に放り込む。


「旨い!!」


口当たりの良い蕎麦焼酎と、鼻に抜ける山葵ワサビの刺激がピリッと締まる。

小腹も空いている上に、喉もカラカラだったので、思いの外、サラリと完食してしまう。


「あら、お客さんいい食べっぷりね。

おかわりする?」

「ええ、お願いします。」


突き出し二つ目は『ヒラメのエンガワ』、お供をするのは白ワイン。

白ワインの爽やかな匂いにつられて一口含み、ヒラメのエンガワを一切れ口に放り込む。


「これも…いいですねぇ。」


ピリッと辛い白ワインに対し、粗塩のかかったヒラメのエンガワから溢れる甘み。

これもスルスル喉を通っていく。

これまたアッサリと完食してしまった。


「本当に、いい食べっぷり。

作る側も嬉しくなっちゃうわ。」


そして出される突き出し三つ目は『おでん』、お供は日本酒の熱燗


「そろそろ冷えてきたからね。」

突き出しにしては五品も載ったお椀はなかなかにボリューミー。


大根を一口大に切り出し、口に放り込んで、熱燗を一口。

ゴボウ巻きを一口大に切り出し、口に放り込んで、熱燗を一口。

卵を半分に割って、口に放り込んで、熱燗を一口…


少し甘めの出汁に浸ったおでん達を、日本酒の辛さがググッと引き締める。


「何だか『オススメ』コースまっしぐら!みたいですね。」

オレの言葉に笑う女性。


「ふらふらするのも ご愛嬌よ。」


夜はゆっくりと更けていく。




----------------------------

 というわけで、蜂蜜ひみつさんの企画に乗っかりました(笑

おでんの残り二品は皆さんのご想像にお任せします。


【『参考文献

  蜂蜜ひみつ

  てんとれないうらない

第96話 ふらふらするのも ご愛嬌 5点

  作者了承済み』】

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