第10話

ふた眠りめの目が覚めた。凡人には無理だった。100くらいまでしかおぼえていない。ガソリンの匂いも気のせいだったらしい。今の所、漏れてるわけじゃなさそうだ。今は匂いはしない。携帯の電源ボタンを押す。ここに埋もれて、何時間も経っているのだろうか。眠っちまったので逆にわからなくなった。時間だけでも確認したい。カリスマが開発したこの板は、電源を入れて立ち上がるまではながい。コーヒーの一杯でも飲める長さだ。うん?電源が入んない。どういうことだ。スイッチが壊れたか?まさか電池切れ。さっき電源を落とし忘れたのか?そういえば、電源を落とした記憶がない。真っ暗というやつは時間が流れているのか、止まっているのかわからない。こないだ読んだ本。トンネル工事の最中に事故で、トンネル内に閉じ込められた話だった。暗闇の中、ランプを灯して、何日も過ごした話だった。実際同じ境遇にハマると、酸素が減るのがわかってても、ランプを灯したくなる気持ちはよくわかる。寝てばかりもおれないものだ。空間があれば、ラジオ体操でもしたい気分になってきた。そういえば、就業前にラジオ体操をする通達が出てたっけ。小学生じゃあるまいし、馬鹿馬鹿しくってやらなかった。それを今は猛烈にやりたくなっている。『やりたい時にやりたいことはできない。』人生の格言ぽいな。

※吉村昭「闇を裂く道」 トンネル工事って大変。本当は閉じ込められる事故の描写は全体の一部。

※カリスマが開発した板 iPhoneのこと。そのまま書けばいいのに回りくどい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る