第20話 満たすべき条件
ダンジョン及び神サイトの運営は思っていた以上にこちらの要望を聞いてくれる。
例えば、ダンジョン発生当初は各ダンジョンにロッカールームなんてものは存在しなかった。
だがそれを不便に思ったダンジョン配信者達が要望を出したことでいつの間にかロビーに完備されていたらしい。
(そこから更に個室化までしてくれるんだから、ダンジョン配信を盛り上げることに繋がる面では本当に協力的だよな)
ただしだからこそダンジョン配信以外の目的でダンジョンを利用しようとする対象には厳しく対応するようだが。
そんな経緯があって俺はモーフィアスから自分がダンジョン配信をする際に改善してほしいことなどがあったら逐一報告してほしいと言われているのだ。
その情報を元にモーフィアス達もより良い配信環境を提供するために。
これもモーフィアスと契約した協力するという内容の一部だった。
俺としても自身が活動しやすいようになるのは助かるのでやって損はない。
「ふう、今日も大盛況だったな」
本日のダンジョン配信も終えたのでロッカールームで自分の配信を見返している。
内容は下級のゴブリンダンジョンでのタイムアタックだ。
ゴブリンやスライムなどの弱い魔物が発生する下級ダンジョンは大抵の国にあり、初心者はそこからダンジョン配信者として活動を始めることが多いらしい。
実際、この力を手に入れる前の俺もスライムダンジョンで初めての魔物との戦いなどを経験したものだし。
だからこそそこで活動したことのある多くのダンジョン配信者は理解するしかないだろう。
このアルバートという男の異常なまでの強さを。
何故なら今回もベストレコードを半分以下に縮めるという圧倒的速度でタイムアタックをクリアしたのだから。
しかも今回に至っては魔物との戦いに慣れてきたこともあって、剣を一度も抜くことなく体当たりや殴りだけで全ての魔物を蹂躙する形で。
神サイト上でもランキングでそれは表示されており、またしても注目を集めている。
いやーすげー
凄いというレベルを超えて引くわ、これは
やっぱり何度見ても意味分らん!
走って体当たりするだけでゴブリンがぶっ飛ばされてるやんWWW
いや、それで肉体が消えていってるみたいだからたぶん死んでるな、あれは
本人が速過ぎてカメラの端でしか消えるゴブリンが捉えられてないやんけ
てか、ぶつかっただけで即死させるってダンプカーか何かですか?(笑)
腰に差した剣を抜くまでもないってかー
これで本人の話を信じるならスキルを使ってるって訳でもないんだよな?
だとすると素のステータスでこれって50どころじゃ済まないんじゃ……?
50以上って話だし、もっと上の可能性もあり得る。てか絶対そうだろ
不正だ! 絶対何か不正しているに決まってる!
でも不正を見逃す運営じゃないだろ?
おいアルバート! 不正じゃないって言うのなら俺と勝負しろ!
いや、そんなに勝負したいならお前もタイムアタックに挑戦すればいいじゃん
確かにWWW
所々にこちらを煽ってくるコメントやそれを冷やかすコメントが現れ始めているが今のところはそれに触れないでスルーしておいた。
(アンチが増えてきたってことはそれだけ知名度が増してきたことの証明でもあるからな)
成り上る中で万人に好かれるなんてことは無理なのは最初から分かっていたことだ。
だからいずれはこういうアンチに粘着されたり理不尽な誹謗中傷にさらされたりする可能性も分かっていた。
それを重々承知の上でこの場に立っているのだから今更この程度で傷つく訳もない。
(それにこういう奴らもやり方次第で利用できるからな)
その時のためにも今は触れないで放置しておこう。
然るべき時にこちらにとって良いように利用させてもらうためにも。
何故なら俺は期日までに億を超えるDPを稼がなければならないのだから。
癌である母を治療できる薬を手に入れるためにクリアしなければならない条件は大量のDPだけではない。
まずダンジョン内でのみ効果を発揮するスキルを現実世界に持ち帰る資格を得るためには上級ダンジョンを攻略しなければならない。
だが上級ダンジョンのボス部屋へ入る条件として中級ダンジョンの攻略が、中級ダンジョンのボス部屋に入るためには下級ダンジョンの攻略が必要となるので、実際にはそれら全てを攻略しなければならないのだった。
なお、この攻略にはタイムアタックなどの特殊な場合でのボス討伐は換算されないので、俺はまだその条件を全く満たせていないのが現状である。
そして資格を得たとしても、肝心の治療薬を買うために必要とされるのが約二億DP。
つまり俺は期日である約四か月先までに俺は上級ダンジョンまで攻略をした上で、二億というとんでもない数のDPを稼がなければいけない訳だ。
(ギフトで手に入るDPではどう考えても足りないし、月頭に入るDPがどのくらいになるかだな)
なお、それなのにどうしてタイムアタックばかりやっているかと聞かれれば、強くなり過ぎたステータスの制御がまだ覚束ないからだ。
特定のダンジョン以外で他の配信者に危害を与える行為は禁止されている。
勿論ワザとでなければ許されるケースもあるらしいが、それでも被害の度合いによっては数日や一週間とかの一定期間のBANが実施されることもあるのだとか。
文字通り魔物も轢き殺せる今の俺が他の配信者と衝突しようものなら、どうなるかなんて考えるまでもない。
だから最低限の力のコントロールができるようになるまでは、他に被害を及ぼさないタイムアタックなどで練習するのが最適だと判断した形である。
(下級ダンジョンなら戦闘スキルも必要ないみたいだし、なるべく早く力をコントロールできるようになって攻略してしまいたいな)
そんなことを考えながら俺は次の配信計画を練るのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます