第17話 アルバートの雑談配信 その1

 ダンジョン配信者はその名の通りダンジョンに潜る光景を主に配信する。


 何故なら神サイトの視聴者が求めているのは、ダンジョンという謎の場所で魔物と戦う姿だからだ。


 だから他の動画サイトなどで人気のある雑談などでも、神サイト上ではあまり人気がないことが多い。


 既に多くのファンを獲得している配信者なら違うこともあるが、それはあくまで少数のレアケース。つまりは例外なのだ。


 ただしその例外が今日は起こっていた。


 それも今までにない規模で。


年齢は?

「25です」


性別は?

「見ての通り男ですよ」


生まれは?

「内緒です。まあでも欧州のどこかとだけ言っておきます」


 次々と投げられる質問に淀みなく答えていく。


 架空の人物になり切るために設定は考えておいたので偽りだらけの回答でも動揺せずに回答できていた。


結婚してる? 恋人はいる?

「どちらもいません。悲しい独り身ですよ」


生まれが欧州なら日本に来たのはいつ?

「割と最近とだけ」


好きな食べ物は?

「気に入ったのはラーメンですかね」


 日本に居ることは昨日の時点で知れ渡っているのでそれは隠す必要なかった。


どうしてダンジョン配信者になったのか?

「色々と理由はありますが、面白そうだったからですかね」


ステータスはどのくらいなのか?

「50オーバーとだけ」


好きなラーメンの味は?

「味噌ですかね。塩も嫌いではないですが」


どうやってそこまで強くなったのか?

「秘密……と言いたいところですが、少しだけ明かすと出すと過去の動画にそのヒントがあります」


スキルを持っているのか?

「持っていますが、そんなに多くないです。片手で数えられる程度です」


どんなスキルなのか?

「それは秘密で」


好きなラーメンの具は?

「どれも好きですけど、あえて言うなら煮卵とメンマですかね……ってこの情報、いります?」


 今いる場所は昨日までと同じスライムダンジョンのタイムアタックをする場だ。


 ここなら他の配信者がくることもないので、周りを警戒する必要がないのでここを選んだ形だった。


(タイムリミットが来るまではのんびりできるからな)


 もの凄い勢いで流れていくコメント欄から適当に質問を選んで解答していく。


 中にはこちらを詐欺師扱いしたり、あえて挑発することで反応を引き出そうとしたりするものもあるが、それは今のところスルーして。


(興味本位だろうがアンチだろうがこっちからしたら大歓迎だからな)


 配信や動画を見てくれるだけで俺にとっては最高のお客様である。


 その分だけDPが稼げるのだから。


 現状ではその目論見は上手くいっている。なにせ同接数が云十万となっており、現在の神サイト上でトップの同接数を誇っているからだ。


 しかもその数はまだまだ増加しており、勢いが衰える兆しも見えない。


「ああ、そうそう。折角だから次回以降の配信の内容について希望を聞いてみますか。どこかのダンジョン攻略をするつもりなのですが、どこが良いとか希望はありますか?」


 その途端にありとあらゆる世界各地のダンジョンの名前が投げつけられてくる。


 その中にはこちらにDPを投げるスペシャルギフトも多数あり、瞬く間に俺のDPが貯まっていっていた。


(よしよし、この調子で稼がせてもらうぞ)


「あ、場所は日本のでお願いします。しばらくはこの国で活動する予定なので」


 実際には海外に行く時間も金もないだけだが。


 こちとらただの大学生であり、バイトする暇もない現状では旅行代を捻出するのも不可能なので。


 勿論そんなことは露程にも出さず、視聴者と次に挑むダンジョンを決めるのだった。

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