第13話 スキル進化と配信開始
あれからまた一ヶ月。
モーフィアスと出会ってからは合計二ヶ月が経過した。
未だに成長スピードは微々たるもので、それでも問題ないとまともな説明をしようともしないモーフィアスに対して、いい加減に我慢の限界が訪れそうになっていた俺。
だが幸いなことに、その前に事態に変化が訪れる。
しかも劇的なまでな。
何度繰り返したか分からない呪殺による死。
だが今回のそれはいつもと違っていた。
具体的には、死んでダンジョン入り口に戻った時に変化が起こったのだ、
「特級スキル『呪殺ボーナス』のスキル経験値がマックスになりました。対象スキルが進化可能なスキルのため、これよりスキル進化を自動的に実行します」
モーフィアスの声ではない。
機械音声のような声が頭の中に響いて、一瞬だけ心臓が直接握られたかのような苦痛を感覚が体に襲い掛かる。
だがすぐにそれもなくなって、その後は特に何も起こらなかった。
「今のはいったい……?」
「もしかしてその様子だと、スキル進化が起きたのかい?」
「スキル進化?」
モーフィアスがそう尋ねてくる。その様子はいつもよりもどこか興奮しているように思えた。
(そういやあの機械音声もそんなこと言ってたっけ。進化可能だかとか)
それを確かめる手段など一つしかない。
俺はいつものようにステータスを確認するべく念じて、
「これは……?」
その変化に戸惑った。
氏名 伊佐木 天架
性別 男性
年齢 18歳
レベル 1
HP 29
MP 26
STR 28
VIT 27
INT 31
AGI 27
DEX 25
LUC 31
保有スキル
特級スキル 『呪怨超ボーナス』『ボーナス超強化』『千変万化』
中級スキル 『
下級スキル 『
保有DP 0DP
二ヶ月かけてようやく30前後まで到達してステータスについては、地道に死に続けた結果なので驚くことはない。
だがよく見れば、特殊スキルの『呪殺ボーナス』が『呪怨超ボーナス』に変わっているではないか。
「スキル進化とか言ってたし、この『呪怨超ボーナス』が前のよりも強力になったってことでいいんだよな?」
「その通りだよ。試しにもう一度、呪怨ダンジョンに潜ってみれば、その効果のほどが分かるよ」
そんな一度で分かるほどに劇的な変化なのか。
その言葉に期待を抱きながら俺はまた呪怨ダンジョンの先に進んで、数十秒後に呪い殺される。
そして戻ってきてところでステータスを確認したところ、驚愕に目を見開いた。
氏名 伊佐木 天架
性別 男性
年齢 18歳
レベル 1
HP 30
MP 27
STR 29
VIT 28
INT 32
AGI 28
DEX 26
LUC 32
保有スキル
特級スキル 『呪怨超ボーナス』『ボーナス超強化』『千変万化』
中級スキル 『
下級スキル 『
保有DP 0DP
「これ、一回だけで全ステータスが1も上昇してるじゃないか!」
「スキル進化は対象のスキルの効果を大幅に強化する。しかも今回進化したのは特級スキルだからね。元々効果の大きなスキルが、こうして強化されればどうなるか。それは見ての通りだよ」
レベルと違ってスキルは魔物を倒すことでは経験値は溜まるとは限らない。
中には特定の行動をこなすことなどで、その経験値を貯めることができるものもあるとのこと。
そして俺の持っていた『呪殺ボーナス』は呪属性の攻撃をする、または受けることがその条件だったのだ。
だからこれまで何度も呪いを受けることで、ステータスが上昇する以外でも密かにスキル経験値は溜まり続け、こうして花を咲かせた形である。
(これならステータスを上げるのも十分間に合うぞ!)
この二ヶ月は本当に大丈夫なのかと不安とも戦う日々だったが、このスキルがあればいける。そう確信した俺はすぐに呪怨ダンジョンへとその足を進ませる。
そしてその数日後、遂に全ての準備が整うのだった。
◆
母の癌は、病院で発見した時には既に手遅れだと言われる状態まで進行していた。抗ガン剤でも手術でも完治は不可能。
その他の現代医学の処置でも延命するだけで精一杯だとも言われた。
そんな母を助けるために必要なのは、エリクサーなどの特級以上のアイテムやスキルだけだとモーフィアスは契約を交わした日に告げてきた。
「癌まで癒すことが可能な特級の回復スキルは億を超えるDPが必要な上に、それらを現実世界で使えるようになるのにも同じようなコストが必要となる。それよりはエリクサーなどの特級アイテムの方が現実的だと思うよ」
エリクサーは飲んだ対象のありとあらゆる傷や病を癒し、消耗していた体力までも回復される霊薬。
ただしこちらはスキルと違って使い切りなので、その分だけ特級スキルよりは必要DPは抑えられるとのこと。
「それでも決して安くはない。それにたとえステータスが十分に揃ったとしても、それだけではまだまだ難しいと言わざるを得ないような厳しい困難が待っている。それでも君は進み続ける覚悟はあるんだね?」
かつて問われた覚悟。
その答えを今更、明示する必要はないだろう。
(家族を助けるためなら、どんな困難だろうが乗り越えてやる)
そうだ、だからこうして見世物になることだって鼻で笑って受け入れてやろうではないか。
「どうも、アルバートチャンネルのアルバートです。突然ですが今日はここ、かつて極東の島国と称されていたという日本のスライムダンジョンのタイムアタックに挑戦したいと思います」
このアルバートチャンネルが話題になったのは神サイト上では昔のこと扱い。
今ではバカにする奴すらもいなくなった、誰も注目していないチャンネルだ。
現にチャンネル登録者は一人もいないし、配信を開始しても同接は見事に零で誰も見ていない。
だがそれも今だけのことだと、半ば強引に自分で自分を鼓舞する。
「これまでの私の動画を見ていた人がいたら、死んでばかりだった癖に何を言ってるんだ、と思うことでしょう。そんな状態では、言葉でいくら説明しても信じてもらえないと思います。なので今日は説明よりもさっさと本編に移って、実際の行動で示めしましょう。私が今の世界の誰よりも、先を進んでいるダンジョン配信者だということを」
一見すると大言壮語も甚だしい、自惚れた発言だ。
だがこの言葉に偽りはない。
それを今から証明してみせようではないか。
「それでは配信開始です」
こうして俺はダンジョン配信者として、本格的な活動を開始したのだった。
―――――――――――――
これにて第1章は終了です。いかがだったでしょうか?
第2章では準備を終えた主人公の活躍が遂に始まります。
規格外なダンジョン配信者の登場が周りや世界にどういう影響を与えるのかなどお楽しみに!
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無限魔力の異世界帰還者
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